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    Tears_reality

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    #冬類
    wintryPlants

    フィギュア選手☕️くんと振付師🎈君の話「あの子、いい滑り方するのに勿体ないね」

    「あぁ、青柳冬弥ですか。あいつめちゃくちゃすごいんですけど、なんて言うかほんとそうなんですよね」

    「楽しくないのかな、スケート」

    「子供の頃は楽しそうだったんですけどね、あいつ、こっちの世界じゃアイスドールって言われてんですよ」

    「へぇ…」

    振付師に転身してから数年。神代類は馴染みのスケートリンクを訪れていた。現役時代は通いつめたある意味思い出の場所。振付師の類は転身してから色んな選手の振り付けを担当してきたものの、その振り付けは個性的なものが多く類の要望が通ることは十回に一回くらいが良いくらいで。そんな類でもある選手の専属振付を担当していたことがあった。体を壊してなおその選手は類の振付を、演出を望んだが類はそんな彼を見られなくて逃げた。彼からも振り付けという世界からも。なのに時折ここに来てしまう。その理由が類本人には分からない。

    そんなさなかの事だった。彼を見つけたのは。青柳冬弥。フィギュアスケート界の新星と呼ばれていて幼少時からスケートをやっていたらしいが、その彼は楽しそうに見えない。さすがは氷の人形と言うべきか。

    「神代さん、そんな気になります」

    「うん。司くんとはまた違った感じだよね」

    「…青柳、天馬と幼なじみなんすよ。」

    「…司くんと幼なじみ…そしたら近寄らない方がいいかな。」

    「話すくらいならいいんじゃないですか。天馬のこと、まだ引き摺ってんすか」

    「…」

    黙った類にスタッフはため息をつく。天馬司、類にとって彼はかけがえのない存在だった。彼はどんな振り付けでも可能な限りやってくれた。それが類は嬉しくて、そして彼をダメにしてしまった。司はお前のせいじゃないと言ってくれたが、一人の人間の選手生命を奪ったことには変わりなく。あれから類は司と会っていない。

    「そういう問題じゃないよ。僕が司くんを壊した、それは事実だ。」

    そう言って類は苦しそうに笑う。ここに司がいたら「バカか、お前は。」と言って笑って類を抱きしめるだろう。それほどまでに彼の温もりは心地よかった。その温もりさえも自分は壊してしまったけれど。

    それから類は終わりまで彼、青柳冬弥のスケートを見ていた。過去に彼が出場した大会を見れば表彰台の常連だということがわかった。観客は気づいてない。冬弥の欠点に。技術を争う種目だが、エンターテインメントも伴うのだ。今思えば天馬司は天性のスケーターだった。周りも自分も楽しむ彼は類にとって眩しい存在だった。彼が教えてくれたのだ。楽しさが倍になるということを。

    そろそろ閉店時間だ。帰る用意をしていたら「待ってください」と呼び止める声がした。振り向けばそこには先程までリンクを滑っていた冬弥がそこにいた。

    「あぁ、なんかごめんね、いい滑り方をするからつい、ね」

    「振付師の神代類さんですよね」

    「…何か用かな」

    「俺に振り付けをつけてくれませんか」

    「他を当たった方がいいよ。僕は振り付けで選手を壊したから」

    そうだ、自分は壊したのだ。自分のせいで未来ある若者の選手生命を奪うわけにはいかない。そそくさと話を終わらせようとする類に冬弥は言う。

    「司先輩が言ってました。あなたの振付は良いものだと。過去にあなたが着いた選手の振り付けを見ました。あなたの振り付けを見た人はみんな楽しそうだった。気になってたんです。司先輩がいつだってあなたの事を褒めていた。最高の振付師だと。」

    「最低の間違いじゃないかな」

    壊した相手を褒めるなんて、司が分からない。憎んでくれた方がどれだけ楽だったか。笑顔を張りつけ誤魔化すように言えば冬弥は追い打ちをかけるように言う。

    「俺、耳がいいんです。勿体ないって言ってましたよね、教えてください。何が勿体無いんですか?」
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