夢と現とまた夢と 沈嶠は自分の腕の中で眠る赤子を愛おしそうに見つめていた。赤子は乳を吸っている夢でも見ているのか、小さな唇がちゅっちゅっと動いている。ふくふくとした頬はつきたての餅、ふわふわとした髪は繊細な綿毛、桃色の唇は瑞々しい果実のようでいくら見つめていても飽きることがない。
ああ、なんて可愛らしいんだろう!
沈嶠は思わず赤子の細く柔らかな髪に鼻を潜らせ、その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。陽だまりに甘さが混じった幸福の香りだ。沈嶠は胸に込み上げた愛情が溢れたかのようにため息を吐く。
香りを堪能しただけでは足りず、柔らかそうな頬の感触を味わいたくて沈嶠はそっと唇を寄せる。そこでようやく、ひく、と睫毛を震わせてゆっくりと赤子が目を開けた。沈嶠はにっこりと微笑むと慣れた手つきで赤子の背中を優しくトントンと叩いて揺らしてやる。
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