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    kari

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    kari

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    大喜利許可を発令してくださった作品が元ネタのフィヘミ

     目だ。じっと俺を見る奴の目が、これから起こるであろう出来事がロクでもないことに違いないという確信を抱かせた。頭の中では黙っていろ、と冷静な誰かが忠告してくる。なのに俺は間抜けにも口を開くのだ。概念で出来上がった人格とはなんて融通の利かない厄介なものなのだろう。不安定に形成された魂は俺に、目の前の災難から逃れるために口をつぐむことさえ許してくれなかった。
    「モトモトノセーカクダロ」
     右耳に直接ぶち込まれるカン高い声。即座にそちらを睨み付ければ、鮮やかな青と黄で染め上げられた生き物が俺の肩の上、悠々と嘴で羽根を梳いていた。その場にいる男と鳥、双方に向けて答えを求めぬ質問をする。
    「何か言いたいことでもあるのか」
     と。
     
     スコットからのふざけた招待状が届き、奴のことはどうでもいいが周りに自国文化を軽んじていると思われたくはなかったのでハロウィーンパーティのために衣装を用意する。余興で芝居もするらしく、いつの間にやら俺も演者の1人になっていた。参加するからには一切手を抜かないのが俺のやり方だ。海賊亡霊の服を身にまとい、海の強者に相応しい年季を感じさせる工夫と立派な戦利品の小道具まで整えたところで、ふと船旅の供が欲しくなった。駄目元で司書に頼んでみれば、たちどころに理想的と言える大きなオウムが俺の肩へと乗せられる。
    「わぁ!いい、いいですね!お似合いですよ~。大丈夫、大人しい子の概念から錬金したので暴れたりしませんからね。パーティ楽しんでください。あ、喧嘩は無しですよ!」
     何故か何枚も写真を撮られたあと、興奮気味の司書に送り出された。
     性質は大人しいかもしれないが口喧しいのはどうにかならないのか?そもそも概念とは一体なんだ?体の良い便利ワードか何かか?そんな疑問が浮かんだが、まぁいい。考えてみればこうして俺が図書館で過ごしていること自体、奇跡のようなものではないか。ましてやあのスコットと共闘し、馬鹿げたイベントにも参加しているというのだから。
    「何か言いたいことでもあるのか」
     当然の如く目の前にいる主催者も凝った仮装をしていた。気障な面の男に似合いのヴァンパイア姿。神秘性にはやや欠けるが、賑やかな華やかさが小憎らしいほど様になっいる。尖った耳と歯に、古めかしい印象を与えるためかコイツのマントもあちこちが破れていた。互いにこういった些細な拘りと詳細な書き込みを重視するところが似ていて、……そう、腹立たしいのだ。
     スコットはスコットで上から下までじろじろと人のことを眺めて、何か閃いたような顔をした。嫌な予感が強まる。奴は目蓋をふせて、ひとりで何度も頷く。そうしてから納得した様子で勢いよく両手をひろげ、
    「So cute  」
     などとほざいた。瞬時に握り締めていた銃が手の中でミシリ、と軋む音をたてる。まだだ、まだ短気をおこすには早い。激情に身を任せたせいで経験してきた数々の後悔を思い返して俺はなんとか踏みとどまろうと努力する。
    「……鳥が、だな?」
     引きつる唇が己の表情をひどく歪めている自覚はあれど、俺にとっては今できる最大限の笑みのつもりであった。虚しい努力だ。何故ならその直後、スコットが放った台詞によって俺の視界は怒りで赤く塗り潰されてしまったのだから。
    「いいや、天使の羽が見える方だな。おお、我が麗しの愛しい海賊よ!」
     その馬鹿げた芝居口調を黙らせるために、銀の十字架ではなく拳の鉄槌を下してやろう。一刻も早く!!
    「ヤレヤレ、イツモノコトダナ」
     よって1度だけカラフルな翼を羽ばたかせた生意気な相棒には、一旦肩から降りてもらうことにしたのだった。






    (最後にたくさんの優しい言葉を贈ってくださった方へ)


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