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    お箸で摘む程度

    @opw084

    キャプション頭に登場人物/CPを表記しています。
    恋愛解釈は一切していません。

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    お箸で摘む程度

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    元同室 生徒会選挙の別Ver.

    .昼休みのカフェテリア、注文口まで続く長い列はのろのろとしてちっとも進まない。ヘッドフォンから流れる音楽が、ああこの曲は今朝も聴いた、プレイリストを一周してしまったらしい。アルバムを切り替えることすら面倒くさくて、今朝遅刻寸前でノートをリュックサックに詰めながら聴いていたブリティッシュロックをまた聴いた。朝の嫌な心地まで蘇ってくる。それは耳に流れるベタベタした英語のせいでもあり、目の前で爽やかに微笑む同室の男の顔のせいでもあった。
    普段はクラブの勧誘チラシなんかが乱雑に張り付けられているカフェテリアの壁には、今、生徒会選挙のポスターがところ狭しと並べられている。公約とキャッチフレーズ、でかでかと引き伸ばされた写真に名前。ちょうど今俺の右側の壁には、相部屋で俺の右側の机に座る、ウィルのポスターがこちらを向いている。青空と花の中で微笑んだ、今朝はこんな顔じゃなかった。すっかり支度を整えて、俺のブランケットを乱暴に剥ぎ取りながら、困ったような呆れたような、それでいてどこか安心したような顔をしていた。すぐ起きてくれて良かった、とか何とか言ってくるから、俺は腹が立つのと惨めなのとですぐにヘッドフォンをして、その時流れたのがこの曲だった。慌ただしい身支度の間にウィルは俺の教科書を勝手に引っ張り出して、それを鞄に詰め込んだら、俺たちは二人で寮を飛び出した。結果的には予鈴が鳴るくらいのタイミングで教室に着くことができて、俺は居たたまれない心地ですぐに端っこの席に逃げたんだけれど。
    そんなウィルだから、生徒会長にでもなれば誰にでも手を差し伸べて、何かいい感じになるんじゃないの、と俺は思う。俺が世話を焼いてもらっているからというより、俺みたいなやつにもそんなふうにしてくれる人だから、俺以外のもっとまともな生徒の意見とかに目を向ければ、ウィルの力ももっと活きるだろう。俺なんかにかまけているよりも、ずっと。

    そんなことを考えるうちに、やっとビュッフェのエリアまで列が進んで、俺は大きなスプーンでドリアを適当に掬いながら、不意の大きなあくびをこらえきれなかった。遅刻したってかまわないから、もう少し寝かせておいてくれればよかったのに。ウィルが生徒会長になったら、そんなおせっかいなところも出るかもしれない。
    あまり目立たない席でSNSを見ていると、生徒会選挙のトピックスが表示される。何気なくタップしてから、これでもしやあの悪友にいくらか金銭が入るのか、と思い至ったけれどもう遅い。立候補している生徒の顔と名前と表明と、分かりやすく纏まっていて、きっとあれの仕事だろう。知ってるような知らないような人々を流し見して送っていく。結局、俺が認識している人物なんて、ビリーみたいな物好きか、そうでなければウィルのように、偶然の成り行きで近くなった人くらいのものだ。
    ファーストネームのアルファベット順に並んだ立候補者の、最後の一人がウィルだった。改めて見ると、公約も表明もさほど知らない。意外と大胆なことが書いてある。困っている人に手を差し伸べるとか、そんな甘っちょろいことじゃない。わりと無茶なんじゃないか、とも思う。
    けれど、ウィルならそれも、やり通してしまいそうな気がした。何となく、やってほしいと思った。それはきっと、ウィルの掲げる姿勢がかつての俺の掲げたかったものに近いからだと、俺は分かっているけれど、それを認めることはできずにただ選挙日を待つばかりだった。(ココマデ)
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    kosuke_hlos

    DONE初オスブラ。
    どこがと言われそうですが、書いた自分がそのつもりなのでそう言い張ります。
    一日の任務を終え、トレーニングの汗を流し、アレキサンダーの世話を焼いて眠る。
    いつものルーティンだったが、今夜は違うことがある。
    部屋着でくつろいだ姿のブラッドが、椅子ではなく、ベッドに腰掛けていた。
    視線を感じて顔を上げると、ぱちりと目が合う。
    世のどの宝石よりも美しい瞳に浮かぶのがどんな感情なのか、正しく知ることは一生出来ないと思う。
    思うが、知りたいと思うことをやめてはならない。
    だから、オスカーは視線を逸らすことなく、浮かんだ言葉を投げかける。

    「餌やり、しますか」
    「もう十分な量をやったろう」
    「では、撫でてみますか」
    「…俺が撫でても、アレキサンダーの機嫌を損ねるだけだと思うが」
    「え、と……あ、では珈琲を」
    「まだ残っているから大丈夫だ」
    「……すみません」
    「何故謝る」
    「ブラッド様は、何か俺に言いたいことがあるのではないですか」
    「……」
    「それが、わかりません。ブラッド様のお側にいながら…だから、す、」

    詫びる言葉は、唇に押し当てられたブラッドの指先ひとつで、あっさりと抑え込まれてしまった。
    どこかしっとりとした感触は、自分の口唇が乾燥しているから余計にそう感じ 711