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    さとすら

    @satoshirasura

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    さとすら

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    トマタルワンドロワンライ企画参加!
    お題[お誕生日]お借りしました🎂
    仕事に追われる🐳と労り担当🍅
    策士🍅好きです!!!!イチャイチャしてくれトマタル!!

    #トマタル
    tomataru

    お誕生日港湾都市の賑わいあふれる中心部の上層に、静かに佇む北国銀行璃月支店。
    異国の服を纏う番人の守る扉をくぐると、そこは巨大な柱と豪奢な壁に囲まれたロビーになっており、吹き抜けの天井には密やかに交わされる商談の声とモラの金属音が響く。置かれた椅子や調度品は見るからに上等で、大陸を股にかける銀行の資金力の高さをうかがわせた。

    表通りの喧騒とは隔絶された行内の廊下を、部屋の主に来訪が伝わるようにわざとカツカツと靴音を鳴らして歩くのは本日の受付担当の女性だ。奥にある執務室の前で止まり、分厚い扉をゆっくりとノックした。

    「公子様、お客様がお見えです」


    あぁ、最近本当に面倒な仕事が多い。
    普段から書類仕事はあまり好きではないが、締切を破らないようには回していた。いま手元で決済を待つ案件も、予定では数日の猶予があるはずだった。しかし、予定は未定とはよく言ったもので、やれ大口顧客の呼出だ、やれ部下の失敗の補助だ、やれファデュイの方の報告書の追加だとイレギュラーに発生した仕事が次々と重なり、気がつけば自分の執務机は書類で溢れていた。
    左右に積まれた山には部下によって急ぎを示す付箋がいくつもつけられ、自分の確認と押印を待っている。書き終えた書類は背面の卓にインクの乾燥待ちでずらりと並べられているが、左右にそびえる山と比べるとその量はだいぶ少ない。

    以前に部下と賭事をして負けた際、取り立てに代わりにいかされたことがあったが、今外に行けるなら喜んで取り立てでも何でも請け負おう。静かな部屋で大量の書類仕事に縛られているより、武器を振り回している方が余程いい。
    何日か前に相棒が秘境探索へ誘いに来たが、多忙を理由に受付で追い返されてしまった。なんて勿体ないことをするんだと、こっそり窓から抜け出してついて行こうとしたが、部下に先回りされて普通に説教された。怒ったエカテリーナはなかなかに迫力がある。

    しかし、こうも体を動かせない日が続くと、体力は有り余っているのに頭だけ疲れ、寝付きが変に悪くなってしまった。寝なければと思って目を瞑ってもなかなか睡魔が訪れず、外が白むまで起きていることもあった。別に何日か眠らなくても支障は無いので寝るのを諦めて仕事を続けていたが、残念ながら効率は上がらなかった。
    サラサラと用紙にサインを書き込み、間違いが無いか確認してペンを置く。廊下を歩いてくる部下の気配を感じて、また何か書類を増やされるのかとため息をつき、固まった体を伸ばしながら扉が鳴らされるのを待った。


    「はーい、いるよ。通してもらって」
    机に座り直しながら入り口を見ると、淡い金髪がひょこりと顔を出した。先日受付で追い返された旅人だ。今日は関門を通してもらえたらしい。もしや、外出の許可が出るのかと嬉しくなって、手元の書類を元の山に戻した。

    「相棒!この前は誘ってくれたのに行けなくてごめんね。見ての通り仕事に追われててさ」
    「久しぶりタルタリヤ。うわ、何この書類の山」
    「ち、違う!ちゃんとやっても中々減らないんだって!」

    サボってたのかとジト目でこちらを見てくる旅人に、説教モードの部下の幻影が浮かび、慌てて弁明した。せっかくの脱走のチャンスにまた置いていかれては敵わないと焦っていると、小柄な旅人の後ろからもう一人璃月では見知った顔が出てきた。

    「息災か公子殿」
    「先生まで!」

    往生堂の客卿まで来たとなれば、これは本当に久しぶりに外出が叶うかもしれない。明るくなってきた未来に軽快にステップでも踏みたい気分だ。

    「今日はどうしたんだい?ちょうど体も訛りそうだったし、探索ならどこでも付き合うよ。その前に腹ごなしでもしていこうか。瑠璃亭、、は今から予約取れなさそうだから、万民堂なんてどうかな。先生とはこの前食事の約束破っちゃったし、俺が払うからさ食べに行こうよ」

    高揚した気持ちのまま早口で提案すると、二人は顔を見合わせていた。普段からあっさりしている旅人はまだしも、大抵の誘いに付き合ってくれる先生まで今日は何だかのりが悪い。予想外の反応に、立ち上がりかけた姿勢のまま首を傾げた。

    「いや、今日の俺たちは案内人でな。公子殿に用があるのは彼だ」

    入るといいと廊下にいるらしい誰かを招き入れる許可を部屋の主でもないのに堂々と出しながら鍾離が後ろを振り返るので、その目線を追うと今度は鮮やかな金髪が見えた。

    「タルタリヤ。忙しいところごめんね」
    「はっ?」

    そこには璃月にいるはずのないトーマがいた。
    眩しい黄金色の髪に若葉色の瞳、柔らかに口元に笑みを浮かべ嬉しそうに俺の名前を呼んでくるのは、どう見ても最近会えてなかった俺の恋人のトーマだ。
    稲妻で神里家家司として日々忙しくしているはずの彼が、待ち合わせによく使わせてもらう旅人の塵歌壺でもなく、璃月の北国銀行の執務室に何故いるのだろうか。予想外の人物の登場に、寝不足の頭では上手く現状を理解できない。

    迷走する思考回路にぱちぱちとただ瞬きを繰り返していると、旅人と先生はまた後でと言い残し二人で廊下へと出て行ってしまった。

    バタンと締まる扉の音にハッと我に返る。
    まだ信じられない気持ちのままひとまず彼のもとへ行こうとすると、書類仕事のせいで固まった体がよろけ机に勢いよく脛をぶつけた。
    「ーーーっ!」
    「わっ!大丈夫かい。すごい痛そうな音したけど」

    鍛えようの無い箇所への痛みに思わずうずくまると、トーマが慌てて駆け寄ってきた。視界に揺らめく布に違和感を覚え、よくよく見ると普段の赤を基調とした衣服ではなく、璃月式の衣服に身を包んでいる。たしかこれは往生堂のスタッフが身につけているやつではなかったか。
    璃月人ではなかなか無い髪色なのに、持ち前の鍛えられた体格と整った顔立ちで異国式の服も難なく着こなしている。いつもは見える首元も今日は襟に隠されていて、露出は抑えられているのにかえって色っぽかった。

    ぼーっとしばらく見つめていると、トーマの頬がじわりと色づいた。
    「見過ぎじゃない?」
    「あ、ごめん。似合ってるから思わず。、、、うん、いいね」
    「ふふ、ありがと。街中を歩くのに稲妻の服じゃ目立つからって、鍾離さんが貸してくれたんだよ」

    ほらそろそろ立ってと目の前に手を差し伸べられた。反射的に握り返すと力強く引っ張って引き寄せられ、近くなった顔と久しぶりに感じる高めの体温に俺の頬も赤くなった。
    手を握ったままもう片方でするりと頬を撫でながら、トーマが顔を覗き込んでくる。

    「ちゃんと寝てる?少し隈が出てる」
    「ね、寝てるよ。少し寝付きが悪くて仮眠くらいだけど。別に慣れてるから何日かくらい熟睡出来なくても大丈夫さ!そ、それより璃月まで来るなんてどうしたの?」

    自分の執務室なのに色のついてきた雰囲気に耐えられず、繋いだ手をぶんぶんと振りながら無理矢理明るい声を出した。我ながら子供っぽい動きだとは思うが、照れくさかったのだ。
    神の目で操る火元素のせいか、トーマの手は俺と比べてとても暖かい。熱が一度離され、ゆっくりと指同士を組み合わせて手の平を重ねていわゆる恋人つなぎに直される。逃さないと言わんばかりの動きに心拍数が増え、自分の体温も上がってきたのを感じた。
    頬同士が触れ合うほどに顔を近づけられ、赤くなっているだろう耳元に直接声を吹き込まれた。

    「ねえ、今夜オレに時間くれないかな?」

    吐息混じりのそれに思わず背中が震え、バッと体を離す。
    耳元を抑え出てこなくなった言葉に口をはくはくさせている俺の姿を見て、トーマはイタズラが成功した子供のように顔をくしゃりとさせて笑っていた。しかし、その細められた目の奥には確か燃え上がる熱が込められている。

    「今日は休暇を貰っていてね。君に会いたくなって旅人に我儘を言って連れてきてもらったんだ。最近君が忙しいと聞いて、直接お願いに来た方が早いと思ってさ」

    トーマからのお願いとは、とても珍しいことだ。世話焼きの気質が強い彼は、誰かから頼み事をされることは多くとも、自身の欲のために我を通すことは少ない。
    俺はこのたまにしかないおねだりを叶えるのがとても好きだった。だって本当に嬉しそうにするから、何でも応えてやりたくなるのだ。

    一歩離れてしまった体をまた彼のもとに戻し、握られた指にきゅっと力を込める。長いまつげに光を放つように輝く瞳、すっとした鼻筋、血色のいい頬と唇、久しぶりに見たけれどやはりトーマは顔がいい。
    要求が通りそうだと察したのか愛しくて仕方がないという表情をこの顔でされるのだから、正面からそれを見ることになるこちらはたまったものではない。

    しかし、今夜か。行けるだろうか。今日中の急ぎの書類はあれとこれととタイムスケジュールの調整が必要だ。

    「夕飯時には間に合わないかもだけど、夜ならいいよ」

    背後の机に山積みになっている書類をちらりと見ながら答えると、頬にむにっと暖かい何かが押し付けられる感触がした。何事かと正面に向き直ると、自分の顔のすぐ近くにまたトーマの顔がある。柔らかいものの正体は、楽しそうに弧を描くこの唇らしい。
    キャパシティを超えてまたもや思考停止する俺に、今度は唇の端ギリギリにチュッとわざと音を立てながら熱が与えられた。

    「やった。約束ね」

    弾む声を認識すると同時に、もう一段階俺の顔は赤くなった。喉をぐうと鳴らして叫び出したい気持ちを抑えるが、そんな俺の姿にトーマはとてもご機嫌だ。
    繋いだままだった手を引いて俺を執務机に座らせ、ペンを持たせるとつむじにキスを落とした。どうした?今日はやたらと触れ合いが多くないか?

    「頑張ったらイイことあるよ」
    そう言って固まったままの俺の頭を数度撫でると、また後で塵歌壺で会おうと言い残し、トーマもあっさりと部屋を出ていった。
    閉まった扉の向こうで何人かの声がするから、相棒や先生が廊下で待機していたのだろう。その声も次第に遠ざかり、執務室に残ったのは遠くに聞こえる街の喧騒と、山積みの書類と呆然とした俺だけだった。

    「夢じゃないよな?」
    握ったペンに力がこもりギシリと軋んた音がするが、部屋に残された往生堂らしい線香の香りは先程の到来が嘘ではないと告げていた。

    「、、、絶対間に合わせてやる。やり返すからな」
    恥ずかしさは一周回って負けず嫌いに火を付け、一気にやる気が出てきた。両頬をパンと力強く叩いて気合を入れ、先程山に戻した書類をもう一度手に取った。



    「ね、そろそろ起きてよタルタリヤ」
    呼ばれる声に目を開けると、璃月の自分の部屋ではない天井が見えた。ああ、昨日は旅人の塵歌壺に泊まったのだったか。久しぶりに深く寝られた感じがして、頭がスッキリしている。
    ぐっと伸びをしながら起き上がると、寝具から出てきた上半身には何も身に着けていなかった。肌に触れる熱源を感じ、視線を落とすと俺の手を握るトーマと目があった。

    「おはよ、、」
    「うん、おはよう。壺の朝はいつも晴れていて気持ちがいいね」
    俺を見つめる若葉色は、朝露をまとったようにキラキラとしている。

    あれ?昨日トーマとしたんだっけ?
    それにしては事後特有の気だるさは全く無いし、いつも鳴きすぎてガサガサになってしまう喉も痛みはない。むしろ凝り固まっていた肩や腰の筋肉はほぐれ、肌も何だかしっとりとしていい匂いがする。上掛けをめくって覗くと下着は履いていたし、隣に転がっているトーマも上下に服を身につけていた。

    どうやら色事は何もせず、並んで寝ていたらしい。
    据え膳食べそこねた?いや、俺が据え膳か??せっかくのお誘いだったのにヤリそこねた?いや、それにしては胸元のキスマーク数凄いな、うわ太腿まで結構ついてる。これ服で隠れるとこ全部ついてるんじゃないか?その割にトーマはそんなについてないな。俺いつもつけ返すし寝てる間にこれだけやられたってこと?え、それ俺がだいぶ早い段階で寝落ちた?というか昨日何してた?
    久しぶりに熟睡できて回転率の上がった頭に次々と自問自答して状況把握に努めていると、じわりと昨日の記憶が蘇ってきた。


    昨晩は遅くになってしまったが仕事に目処がつけられ、急いで塵歌壺を訪ねると温かい軽食を用意したトーマに迎えられた。どうせ夕飯も食べずにやってたんだろうと図星をつかれ、出汁のきいた優しい味のうどんをおとなしく食べた。
    体が暖まり程よく腹が膨れことで眠気を感じたが、久しぶりに得た触れ合いの機会を逃してはいけないと、睡魔を振り切って二人で風呂に入った。昼間のお返しだと言ってありとあらゆるところに口づけてやると、のぼせるから待ってくれとトーマは息を荒くして慌てていた。真っ赤になった顔は大変に可愛かった。倍くらいにして更に返されたけど。

    いざ部屋に場所を移すと、普段はあまり使わない香がたかれていた。少し甘いそれはリラックス効果があるらしく、久しぶりだからオレも緊張しちゃってと照れ笑いするトーマに胸が苦しくなった。
    しかし、その後に今日はこれを使おうかと思ってと出された香油の瓶が普段の十倍くらい大きくて、場の雰囲気を壊して爆笑してしまった。
    こんなに使おうなんてトーマのエッチと涙を流しながら大笑いする俺に、尻用はこっちの小瓶!そっちは最近覚えた指圧に使う用!とまたもや慌てる羽目になったトーマの姿に、ますます笑いが止まらなくなった。

    なんとか笑いを収めたものの、まだ震えそうになる腹筋を気合で止めながら、オイルマッサージって言うんだってと支度をするトーマの指示に従い、下着一枚になって寝具にうつ伏せになった。
    枕に顔を埋めると以前にこの部屋で肚の奥深くまで愛されたことを思い出し、じわりと熱が集まりそうになったが、温められた香油をまとったトーマの手が筋肉に沿って圧をかけ始めると気にならなくなった。

    睦み合うときの泣きたくなるような快楽と違い、滑りよく固まった箇所を暖かい手で解す気持ちよさはあっという間に睡魔を呼び戻した。トーマの鼻歌が完全に子守唄にしか聞こえない。寝てはだめだと、うーとかあーとか声を出して戦うが、戦況はよくない。
    「後で起こしてあげるから、寝てもいいよ」

    許可が出てからも少し抵抗していたが、長くは持たなかったと思う。
    そして起こされて起きたのが今。
    完全に朝だ。

    「ご、ごめん!寝すぎた!」
    「謝らなくていいよ。オレは寝てもいいって言ったし、後で起こすって言っただろう?ぐっすり眠れたようで良かった。体はどうだい?」
    「とても調子がいいです、、」

    隈も消えたねと俺の頬を撫でるトーマは、本人より嬉しそうだ。
    「頑張ったからイイことあっただろう?」
    またもや、いたずらが成功した子供のように顔をくしゃっとして笑っている。

    「え!あ、いいことってこれ??」
    「ふふ、嘘は言ってないよ。君に逢いたかったのも本当だしね」
    「俺はてっきりそっちのことかと」
    「ん?そっちのことって何かな?タルタリヤのえっち♡」

    昨日の仕返しかわざと胸元を隠してきゃーというトーマに勢いよくラリアットをして、二人で寝具に逆戻りした。

    明るい部屋で普段は縛られた金色が真っ白なシーツに広がり輝きを放つ。ケラケラと笑うトーマはいつもより眩しく見えて、昨日訪ねてきた時からずっと手の平で転がされていたという事実はどうでも良くなった。
    嘘もつかず誰も傷つけず、使える駒を最大限に活用して上手く事を運ぶ手腕は、流石あの若様の腹心だ。
    どうせ部屋に焚かれていた香も、先生が絡んだえげつない程の効き目の物だったのだろう。ファデュイ幹部として様々な薬物に耐性をつけてある俺に、いくら指圧が気持ちよかったとはいえあの眠気は普通では無かった。
    結果体調と精神状態は完全に復活したようだし、これだけ色々と企て仕込まれると、トーマにとても大切にされていると実感させられた。

    「すっかり良くなったよ。ありがとう」
    「どういたしまして」

    胸元にすり寄り礼を言うと、両腕を背中に回して抱きしめられた。そのぬくもりにまだ寝られそうだと思うが、まだ半分以上残る書類の山が執務室で主の帰還を待っている。
    一度力をこめて抱き返し、するりと腕を抜けて寝具を降りた。

    枕元に丁寧に畳まれた服に二人して着替えると、いつもどおりファデュイのタルタリヤと家司のトーマの完成だ。互いの神の目が朝日に光りを反射する。

    「それじゃ、俺は残りの仕事を片付けにいくよ」
    「あ、待って。あと二つお願いがあるんだけど」
    「何だい?今日のお詫び、いや、お礼に何でも聞くよ」
    「四日後の夜にまた会えるかな?」
    「四日後ね、わかった。大丈夫にする」

    叶えてくれるだろう?と首を傾けておねだりする姿は、大変に可愛らしい。第一、また会いたいという可愛いお願いに、是以外の選択肢など最初から無かった。

    「それで、あと一個は?」
    「もう一回抱きしめさせて」
    「うん、喜んで」

    両腕を広げてさあ来いと招くと、力強く抱きしめられた。
    とんとんとトーマの背中を叩きながら、俺の服の金具痛くないのかなと暢気に考えていると、四日後の何の日かわかっているかと問いかけられた。

    「え?四日後、えっと二十日か、、あ!」
    「そう、君の誕生日だ。祝わせてくれるよね」
    「そっか、もうそんな時期か。いつも家族からの手紙が来てから思い出すから、すっかり忘れていたよ」
    「はは、君らしいや!それでね、


    今度は朝まで眠れないって覚悟しておいて」

    昨日のように耳元で吐息とともに吹き込まれる甘い声に、スッキリしたはずの頭はまたもや思考停止した。
    ギギギと音を立てそうな軋んだ動きでトーマの顔を見ると、叶えてくれるだろう?と首を傾げて可愛くこちらを見ている。あっ、本気だこれ。

    「ぜ、善処します」
    「よろしくお願いします」

    いやー、お礼楽しみだなと輝く笑顔が眩しい。
    ハニートラップに見事に引っかかっり、何でも願いを聞くと答えてしまった俺には、断る手段は無かった。約束は破れないし、意地でもあの書類の山を片付けなければならない。

    せめてもの抵抗で、トーマも寝れないんだからね!と言うが、満面の笑みと共に返された。
    「うん、喜んで」
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