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    すばる

    ヒッジとなぎこさんが好きです。

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    すばる

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    土近🚺を書こうと思ったらその前のなぎかおのパートとが膨大になってしまったので一旦区切ります。ひたすらなぎこさんをageてエミヤさんを添えるだけの話です、現状。

    #Fate
    #FGO
    #なぎかお
    longFace

    ぐだぐだ文学草子~法師陰陽師と台所のアーチャーを添えて~(未完)(ンンンン――紫式部殿、藤原香子(ふじわらのかおるこ)殿――ンンンンンン――)
     嗤いとも嘆きとも叫びともつかない、蓬髪の法師陰陽師の奇声が耳に蘇る。
     蘆屋道満は、かつて平安京にて、マスター・藤丸立香率いるカルデアに挑戦して敗れた。その後カルデアの術式で召喚されても、多くのサーヴァントがその動向を警戒し続けている。
     香子も決して心を許しているわけではないのだが、なぜかこの巨躯の陰陽師は結構な頻度で香子に話しかけてくる。
     それは香子が師と仰ぐ安倍晴明が関係しているのだと理解してはいるものの、正直かの最優陰陽師が絡んだ時の道満は実に面倒くさい。
     晴明から己のことを何か聞いていないかと問われても、聞いていないものは聞いていない。正直にそう答えれば、露骨に強がってンンンと嗤う。
     どう対応すればいいのか。
     しかしその日の道満は、はっきりと香子へ伝えたいことがあるようだった。
    (ンンン――藤原香子殿、老婆心にて申し上げまする。ボイラー室の隣の茶室には、決して近づいてはなりませぬぞ)
    (はぁ、法師様。ですがなにゆえ……)
    (あな恐ろしや! その上中座しようとしても隣のお方が離してくれませぬ。あのようなぐだぐだぶり……拙僧には耐えられませなんだ)
     ボイラー室の隣と聞けば、図書館に閉じこもりがちの香子でも何騎かのサーヴァントを思い浮かべることができる。
     香子は彼らの人となりは知らない。だから道満に感想を伝えるのははばかられる。
     香子の言葉にも、道満はぶるりと胴震いを起こす。
    (とにかく! 伝えましたぞ。後ほど拙僧へ苦情を申し立てても聞きませぬぞ……ンンンンンンンンンンン)
     去っていく道満の巨躯の、肩が心なしか丸まっているようにも見える。
     いったいボイラー室の隣にはどんな脅威があるのか――。
    「かおるっち!」
     突然、低いところからタックルを受けた。第一再臨の裾の長いドレスだったからよかったものの、第三再臨の十二単だったら、袴の裾を踏んでちょっとした惨事になっていただろう。
    「いかがなさいましたか、なぎこさん」
     清少納言――清原諾子(きよはらのなぎこ)は、香子を見上げて満面の笑みを浮かべた。
     生前の香子となぎこの間には、因縁かあるようでなかった。
     なぎこが仕えていた皇后藤原定子(ていし)と、香子の主人の中宮藤原彰子(しょうし)は従姉妹同士で、にもかかわらず同じく一条天皇の後宮に入っていた。
     とはいえ、二人は決して寵を競っていたわけではない。年齢も十歳近く違う。事情により定子が後宮を出た直後に、彰子が入内(じゅだい)した。
     だから、香子はなぎこと面識がなかった。同僚の和泉式部(いずみしきぶ)や赤染衛門(あかぞめえもん)らから、その人となりを断片的に聞くのがせいぜいだった。
     バレンタインを巡るちょっとした事件の折に、初めてなぎこと会話を交わした。漢文の才をひけらかす、さぞ高慢な女房かと思い込んでいたが、実際のなぎこは実にエネルギッシュで、かっ飛んでいて、エモかった。
     香子は己の先入観を恥じた。
     以来なぎこは香子の勤める地下図書館へ訪れたり、休憩時間に誘い合わせて食堂へ行ったりと、親しい関係を保っている。
     しかしなぎこは、引っ込み思案の香子よりもずっとコミュ強だった。
     気づけば、カルデアのほとんどのサーヴァントと会話をし、冗談を言い合い、けらけら笑っている。
     香子の特別は、決してなぎこの特別ではない。
     そう感じてしまう自分の陰気さがもどかしい。
     そんな香子の葛藤には頓着せず、なぎこは香子の手を握った。
    「かおるっち、午後はヒマ? ヒマだな、ヒマだよな?」
    「いえ、午後も図書館の仕事が……」
     と言いかけて、香子は思い直す。
     香子が図書館勤めであることを知らないなぎこではない。
     どうしても香子を連れていきたい場所があるから、こうして無理を承知で誘っていることは想像に難くない。
     ならば。
    「はい、午後の業務でしたら、シェイクスピア様に代わっていただくことも――」
    「おっけまる!」
     なぎこは香子の手を引っ張る。そんなことをしなくても、香子はついて行くのに。
    「して、どちらへお連れくださるのでしょう?」
    「ボイラー室の隣の茶室!」
    (決して、決して――ンンンン――行ってはなりませぬぞ……)
     脳裏の法師陰陽師が、警戒の声を上げた。


     香子がホラーじみた山での謎解きに取り組んでいた間、なぎこは織田信長や沖田総司、鈴鹿御前と湖畔の森で遭難しかけていたという。
     その縁で、なぎこはたびたびボイラー室隣の茶室を訪れているらしい。
    「こないだマンボちゃん連れてったらさ、ノッブに第六天魔王ムーブされて顕光殿の左大臣マウントしたり、ヨッシーに喧嘩売られてチェルノボグで返したりして、めっちゃくちゃ面白かったんだよね」
     食堂でキッチンサーヴァントに特製の甘葛フラペチーノ風ドリンクを作ってもらい、繋いでいない方の手で持ちながら、なぎこと香子はカルデアの奥深くへ向かう。
    「だからまた誘おうって思ってるのに、マンボちゃんあたしちゃんのこと避けてんの。かおるっち、酷いと思わない? 」
    「それは……法師様のご都合もお考えになった方がよろしいのでは?」
    「だってマンボちゃんヒマそうじゃん、カルデアにほとんど友達いないし」
    「それは……まぁ、あの方の自業自得ではありますが」
    「かおるっち、結構言うよね」
     それは親愛の表現が伝わっているのだろうか、それとも図々しいと捉えられているのか。
     つい考えすぎてしまう、と嘆いているうちに、ボイラー室に着いた。カルデア中に電力と魔力を供給しているボイラーが発する熱で、汗が浮く。
    「たのもー!」
    「あ、その、お邪魔いたします……」
     勢いよく茶室の襖を開けるなぎこの陰に隠れるように、香子は頭を下げた。
     視線の先には、知っているサーヴァントと知らないサーヴァントがいた。
     もっとも、よくここに入り浸る全員が香子たちよりも後世の英霊たちであるから、生前のことは何も知らない。カルデアでの暴れっぷりを、目撃や伝聞で知るだけだ。
    「よう来たななぎこ、って司書も連れてくるとはさすがじゃな。楽市楽座の出展権をくれてやろう」
    「あたしちゃん売るもんないし!」
     床の間の前に陣取るのは織田信長。武士が力を持った戦国と呼ばれる時代に、第六天魔王と名乗って帝をしのぐ権力を振るっていたという女だ。
     まず侍が帝と比肩すること自体が、香子には理解できない。聖杯からダウンロードされる知識で歴史の流れは追ったものの、任地に下って土着した受領(ずりょう)の子孫が偉ぶっている現象は、想像の裾野にさえ入ってこなかった。
    「司書さんって、図書館から出てこれたんですね!」
    「沖田ちゃん、さすがにそれは失礼ってもんよ。あっ、司書さんはじめまして。僕は斎藤一。はじめちゃんとは……呼ばなくていいです」
    「ちゃんハジ、かおるっちが可愛いからって照れなくてもいいんだぜ?」
    「ちゃんハジもやめて、なぎこさん」
     よく信長と戯れている沖田総司は、以前見かけた時とは違って、浅葱色の羽織に黒い袴を合わせている。桜色の装束も似合うが、この恰好だと男装の麗人めいていて可愛い。
     沖田の隣でコップを掲げるへらへらした男は、最近現界したのを見かけてはいた。平成風のスーツを着ているから、キッチンアーチャーのエミヤと同時代の者かと思っていたが、沖田と親しげな辺りどうにも違うらしい。それはそれとして、なぎこと爆速で絆を上げているのはどうかと思う。
     信長の隣でひたすら日本酒を手酌して塩を舐めているのは長尾景虎。信長と同時代の英霊で、軍神を自称する自信家だと聞いている。
     襖の手前で、茶室を守るかのように鎮座している老人は、確か李書文。
     食堂や談話室では他に何人かのサーヴァントを見かけていたが、今はいない。素材集めの周回に呼ばれたのか、はたまた誰かの部屋へ遊びに行っているのか。
    「信長様、弟御は……」
    「あぁ、あやつならマスターに絆石を搾り取られに行っとる。どうしても欲しいサーヴァントがおるらしくてな」
     なるほど、そういうこともありうるのか。
    「まぁよい。わしも勝蔵ほどではないが茶にはこだわりがある。第六天魔王の茶を堪能していけ」
    「自分で言うことじゃないと思いますけどね」
    「軍神には言われとうない。貴様なんぞ厠で乙れ」
    「仲がおよろしいのですね」
    「全然?」
     信長と景虎は、揃って首を振る。
    (続く)
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