Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    tomko_106

    @tomko_106

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    tomko_106

    ☆quiet follow

    204話後のさねぎゆに、性癖をぶち込んだ結果。情事を匂わせているけど、限りなく健全に近い健全。
    両想いなのにお互いが片想いだと思い込んでて、それならせめて体だけでも…という状態から気持ちを伝え合って心身ともに両想いになる推しカプは、幾つ書いても読んでも見ても物足りない。

    #さねぎゆ

    「これから先も、」 鬼殺隊解散後、それぞれの屋敷で暮らしていたある日のこと。不死川が冨岡を訪ねてきた。
     珍しい客だ、と冨岡は思いつつ、快く不死川を屋敷の中へと招いた。
     何かあったのだろうか視線を流せば、彼は冨岡の心情を察したのだろう。訪ねてきた理由を話し始める。どうやら片腕となってしまった冨岡の身を案じ、足を運んでくれたらしい。本当に、やさしい男だと思う。

    「不便もあるが、問題ない」
    「……そうかィ」

     冨岡の言葉を素直に受け取った不死川が、それ以上のことを追求することはなかった。ずいぶんと穏やかになったものだ。いいや、もしかしたら今の不死川が、本来彼のあるべき姿なのかもしれない。けれどもこれは冨岡の憶測だ。本当のところは不死川にしか分からない。
     それから二人で日中を過ごした。ゆったりとした空気はあまりにも居心地が好く、冨岡はついつい気が緩んでしまい、頭に描いた言葉をぽろりと溢してしまった。

    「このまま、泊って行くといい」
    「あー……そうだなァ、帰るのも面倒になったしなァ」

     冨岡の誘いに不死川は悪態をつくこともなく、首を縦に振った。明日は雨でも降るのか、なんて言ったら今度こそ怒られそうだ。その台詞はしっかりと飲み込み、溢すような真似はしなかった。



     夜の帳も下り、濃紺の空には星々が輝いている。虫の声もほとんど聞こえず、しん、と静かな刻だった。
     二人で夕飯を済ませ、風呂にも入り、あとは寝るだけとなる。予備の布団一式を押し入れから出して並べた。そのまま気持ち良く眠れるだろうと、冨岡が横になった時だ。不死川が横になった冨岡の短くなった髪を撫で、「今日、いいか」と告げた。

    「……、」

     何に対して「いいか」と言っているのか、冨岡は知っている。
     今までずっと、あやふやな関係を続けてきた。それが良い事なのか悪い事なのか答えなんて分からないまま、ずっと、ずっと。
     そうでもしなければ、傍に居れないと思っていた。彼にとっての過ちでしかないけれど、それでも冨岡は望んでいた。
     体を重ねているその時だけは、黒檀の瞳が自身を映してくれているように思えたからだ。――だけど今は、

    「……構わない、だが……」

     冨岡は少し間を開けた後に頷き「服を着たままで頼む」と、ひとつだけ条件を出した。

    「? わかった」

     不死川は少し疑問に思ったのだが、それくらい何の問題でもない。冨岡の条件通り、長襦袢は脱がせないまま事に及んだ。



     * * *



     長襦袢の帯を解かずに、男の体を乱していく。布の隙間から覗く肌がやけに色っぽく見えて、ほう、と熱っぽい息を吐いた。ーーただ、やはり物足りない。素肌を触れ合わせたい。

    「ん、っ……あ……ッ」

     しばらくして不死川は、冨岡がやたら右側を気にしている事に気付いてしまう。その所為なのか、情事に集中してないようだ。
     もしかしてどこか痛むのだろうか。不死川がそう声を掛ければ、冨岡は「いや、そうじゃない」と首を横に振る。だったら何故、と更に詰めた。

    「……醜い姿を見て、お前が萎えたらと思うと、……見せたくない」

     幻滅されるのが、こわい。
     冨岡は小さくか細い声で呟いた。

    「……」

     以前の不死川だったのならば、頭に血が上って声を荒げていたかもしれない。でも今は不思議と冷静だった。そして、覚悟を決めた。もう、有耶無耶にするのはやめよう。腹を括って、向き合おうと誓った。そうでなければ、これから先もずっと、ずっと、こうしてかなしい顔をさせてしまうのだと思うと、自身がとんでもない甲斐性無しに思える。いや、臆病者の甲斐性無しだ。だからこそ、挽回させてほしい。

    「なァ、冨岡ァ。今日俺がここに来た理由と、今までこんな事をしてきた理由を話す。だからテメェも、教えちゃくれないかィ」

     ずっと好きだった事を、不死川は告白した。
     それから一緒に住まないか、と提案する。その台詞に冨岡はただただ目を丸くし、声を失っていたようだ。そんな姿が少しだけおかしくて、とんでもなく可愛らしい。
     ひそかに緊張していた糸を緩め、同じように頬もゆるりと下がった。

    「本当は朝、ここに来た時から言う機会を伺ってた」
    「っ、は、……え……?」
    「返事は?」
    「……ッ、ぅ、」

     驚くほどに優しく、甘ったるい表情と声音で不死川が尋ねれば、冨岡は静かに涙を流した。零れる涙を見せまいと俯きながら、首をフルフルと横に振る。

    「こ、んな、面倒くさい俺、なんて、お前の邪魔にしか……」

     なんて、自分自身を卑下にするを冨岡を、不死川はやや強引な素振りで唇を塞いだ。

    「例えテメェだろうと、俺の惚れたヤツの悪口は勘弁な」
    「……っ、そ、んなこという、性格だったか、」
    「言わなきゃ伝わんねェって思い知らされたからなァ、いろいろと」
    「……」
    「んで、返事はァ? ちなみに『はい』か『よろしくお願いします』か『うん』から選べ」
    「……むちゃくちゃだ」

     不死川の台詞に冨岡はそう言いつつも、ふ、と口元を緩めた。そうしておそるおそる彼の手を握る。

    「俺も、……ほんとうは、ずっと、……ずっと、」

     想っていた。慕っていた。どうしても傍に、いたかった。
     冨岡は今まで言えなかった心の音を吐露していく。雨のように降り注ぐ優しい言葉たちに、不死川は満足そうに目尻を下げた。

    「言ったろォ、三択から選べって」
    「……うん」
    「じょーでき」

     こっくりと頷き、確かに三択の内のひとつを口にした冨岡の頬に手を滑らせ、不死川は先ほどとは違い、丁寧に唇を重ねたのだった。



     ようやく想いが通じ合い、今まさにしあわせの絶頂にいる。――だが、このままでは終われない。何故ならば。

    「……なァ、空気ぶち壊しちまうけど、続きやっていいかァ」
    「あ、っん……、」

     繋がったままの下半身を不死川は僅かに揺らし、色々と限界なのだと冨岡に伝えた。冨岡の方も艶かしい表情で頷き、「はやく、」とねだっている。欲しがりなのはお互いさまだ。

    「あぁ、あと、やっぱ脱がせてェ。テメェがどうしても見られるのがイヤっつーなら、無理強いはしねェけどよ、」
    「……、」

     きっとこの男ならば嫌悪したりしないだろう。言葉通り、無理強いもしないのだろう。それでもやはり、躊躇ってしまう。まだ、冨岡には決心がつかない。けれども、

    「……もう少し、だけ、……まって、ほしい……」

     いつか堂々と何も隠さずに見せられる日が来るまで、そんな遠い先の未来じゃないから。だから、それまでは。いや、ちがう。その先も、どうかどうか、傍にいてほしい。
    冨岡が柳眉を下げて不死川に告げれば、彼は「ん、」とだけ言い、しっとりと汗ばんでいる額に唇を落とした。
     あぁ、心底甘やかされていると気付いた冨岡はたまらなくなり、不死川に抱き着きたくなった。しかし、片腕では不安定で上手く抱き着けない。

    「しなずがわ、頼む、……だきしめてくれ」

     切羽詰まった声で、冨岡が懇願する。そこには羞恥心にも似た感情が見え隠れしており、それ以上に濃密な行為をしているというのに、と不死川は思う。やはり冨岡義勇という男は、分かりにくい存在である。

    「お安い御用だぜェ」

     必死に頼まなくても、そんな可愛いお願いならば幾らでもかなえてやると言うのに。
     しょうがない奴だと思いながらも不死川はとろりと蕩けた表情をし、冨岡を目一杯抱き締めた。

    「ッ、あっ……ま、まって、」

     抱き締められ、冨岡がうっそりと惚けたのもほんの僅かだった。不死川の膝に座ったまま、体を揺さ振られる。

    「んっ……ん、っあ、……ッ」

     視界だけでなく全身がぐらぐらと揺れ、落ちないように冨岡はぎゅうっと強く不死川にしがみ付いた。

    (あァ、すげェかわいい)

     懸命にしがみついている姿がまるで甘えているように思えた不死川は、この体位を甚く気に入ったようだ。
     ――以降、膝に座る回数が増えることになろうとは、この時の冨岡は襲い掛かる官能と不死川にしがみつくことに必死で、知る由もなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖😇🙏🙏💞💖💗☺☺☺☺❤❤❤👏👏👏👍💖😍😍😍😍👏👏👏👏💖💖💖💕🙏🙏🙏🙏💖💚💙💚💙💚💙💒☺💒💒💚💙💚💙💒💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works