長兄松のLINE2カリレジェ : いたか?
ギルトガイ : いや、見付からない
カリレジェ : ったく…どこ行ったんだ、アイツら
ギルトガイ : 兄さん、今どこ探してる?
カリレジェ : 駅前。お前は?
ギルトガイ : 商店街の裏。さっき商店街も見たけどいなかったぞ
カリレジェ : 一晩帰って来ないとか、馬鹿なの
ギルトガイ : 誰よりも兄さんには言われたくない台詞だな
カリレジェ : 何でだよ!ホント、オレに冷たいねお前は!
ギルトガイ : そんな事はないつもりだが。…あ、駅向こうは見たか?
カリレジェ : まだ、これから回る。…なあ、
ギルトガイ : 何だ?
カリレジェ : アイツら、多分オレに彼女がいるって思ってるよな?
ギルトガイ : 昨日聞いた感じではそうみたいだな
カリレジェ : …何でそんな勘違いしたんだろ
ギルトガイ : さあ…そもそも女神と天使の話はラインでしかしてないだろう?
カリレジェ : だよなあ…て事はライン見たのかな?
ギルトガイ : 見られるタイミングあったのか?俺は見られてないぞ
カリレジェ : んー…普段はロックしてるしなあ。見られるとすれば通知くらい?
ギルトガイ : 通知か…ここ何日か俺とやり取りしてる間、傍にどっちかいたか?
カリレジェ : 一昨日だったか、途中から天使が傍に来たな…そんでオレ、ちょっと飲み物取りに行って…戻って来たらお前からの通知が三つくらいあった
ギルトガイ : …それか
カリレジェ : くらいしか思い付かねえな…
ギルトガイ : しかも気持ちバレてないと思ってるからな
カリレジェ : あ…昨日女神がオレを好きっての、多分バレたと思ってる
ギルトガイ : pardon?
カリレジェ : うわムカつく。女神が財布落としてな、中から写真落ちたの。オレとのツーショット。そんな写真見たら好きだってバレるの当たり前だよな。でもその前にオレに彼女がいるって誤解してるじゃん?
ギルトガイ : そうなると、女神の気持ち的には絶望しかない訳か…
カリレジェ : …ダメだ、オレやらかしたかも
ギルトガイ : 何をしたんだ
カリレジェ : その写真拾った時さ、何でこんな可愛い事してんの!って顔崩れそうで思わずスンッ…て感じの無表情になっちまったんだよな…
ギルトガイ : ……馬鹿だ
カリレジェ : えっ、それでもしかして女神様誤解してんの!?
ギルトガイ : 彼女がいる片想いの相手、しかも実の兄に写真見られてそんな反応されたらなあ…ドン引きって取られても仕方なくないか?
カリレジェ : えええええ!!そんなつもりなかったのにいいいい!!
ギルトガイ : 兄さんにそんなつもりなくても女神がそう取ったらそうなんだろう
カリレジェ : …早く見付けて誤解解かなきゃ!
ギルトガイ : 俺もmy Angelに誤解されてたら嫌だから早く見付けよう
◎◎◎◎◎
ギルトガイ : 兄さん!
カリレジェ : どうした?いたか?
ギルトガイ : 映画館で見たって情報があった。今から入る訳にいかないから取り敢えず映画館に向かう
カリレジェ : オレも行く!駅前のデカいとこ?
ギルトガイ : そう、そこのスクリーン9だって。ロビーで待ち合わせよう
カリレジェ : 分かった、20分くらいで行ける
ギルトガイ : 映画が今半分くらい終わったらしいからあと一時間もしたら出て来ると思う
カリレジェ : ちなみに何の映画?
ギルトガイ : 動物映画。好きそうだな、あの二人
カリレジェ : …それ、多分女神が見たいって言ってたやつだ
ギルトガイ : そうなのか?
カリレジェ : ああ、だからオレ、こっそりチケット買って誘おうと思ってたんだよな…
ギルトガイ : こんな誤解されるくらいならもっと早くモノにしておけば良かった…
カリレジェ : オレもちゃんと話せば良かった…
ギルトガイ : 今からでも遅くないだろ、ちゃんと話しよう
カリレジェ : そうだな。今着いた、お前どこ?
ギルトガイ : ロビーのソファ。出入口見えるとこにいる
カリレジェ : 分かった、見付けた
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「兄さん」
「カラ松!…まだ?」
「ああ、そろそろ終わると思う」
「はあっ…てか、どこからの情報な訳?」
「トド松。何でも友達から映画館にいるの?ってラインが来たらしくてな、もしかしたらって教えてくれたんだ」
「そっか…」
息を切らしたおそ松がカラ松の隣にドサリと腰を下ろす。
昨日、二人で夕飯済ませるからと出掛けて行ったチョロ松と一松が帰って来なかった。チョロ松が泣いていたのを襖越しに聞いていたおそ松は一晩中眠れずに朝早くから二人を探しに出て、途中で一松を心配して探しに来たカラ松と合流し手分けして町内中を走り回った。
「…あ、終わったみたいだな」
ざわざわと出入口が賑やかになり、人が出て来る。その中に見付けた、探し回った二人の姿。
「…チョロ松!」
「一松…」
「えっ…」
「何で…」
笑いながら出て来た二人を、扉から少し離れた場所で捕まえた。チョロ松は明らかに怯えたような表情を浮かべていて、おそ松は何から言おうかとじっとその顔を見つめる。
「…兄貴」
「ん?」
「俺、一松連れて行くから。そっちは任せた」
「そうだな。ああ、分かった、また後で」
「行こう、一松」
「ちょっ…何だよ、離せって…チョロ!」
「…チョロ松は兄貴に任せろ」
「いち、…僕は大丈夫だから」
「…何かあったらすぐ連絡してよ」
「うん、ありがとう」
カラ松に連れられて映画館を出て行く一松を不安そうに見送るチョロ松の頭を、おそ松がそっと撫でる。その行為にハッとした顔を向けると視線の先には困ったように笑う兄の姿。
「…ごめん、兄さん」
「え?」
「気持ち悪かっただろ、あんなの…もう捨てるから、だから、」
軽蔑しないで。
泣きそうな微かな声でそう呟くチョロ松の顔を見て、思わずおそ松は天を仰いだ。
「しねえよ、そんなの。…な、兄ちゃん腹減った。何か食お」
「え、」
「大丈夫、オレが奢るから」
「…雨、降らせないでよ」
そう言って笑うチョロ松は、やっぱり泣きそうな顔をしていた。
駅前の繁華街から二本通りを外れた喫茶店。
立地のせいか平日の中途半端な時間のせいか、二人の他には離れた席で新聞を広げている常連客らしい男性しかいないから話を聞かれる心配もなさそうだ。
「…何でオレに彼女いるって思ったの」
カレーライスを食べ終えて煙草に火を点けたおそ松が煙を吐きながら訊くと、アイスティーのストローを咥えていたチョロ松の動きが止まる。
「…一松から聞いた」
「なるほどね」
カラ松に話した内容でビンゴ、と内心呟きながらガシガシと頭を掻く。まさかそれだけで泣くほどだとは思っていなかったけれど、誤解は解かないと。
「…どんな人」
「え?」
「女神様、だっけ。兄さんの好きな人」
「あー…どんなって。そうねえ、口が悪くてすーぐキレるし手も足も出るし常識人ぶってる割には全然ダメで。でもすげーオレの事好きでいてくれて、彼女いるって思い込みだけで泣いて帰って来なくなってオレにすげー心配させて一日中探し回させるよーなヤツ」
「…え?」
「ついでに言うなら、今オレの目の前にいるよ」
「………え?、え、なに、それ…え、」
「あーもう。お前だって言ってんの、オレの女神様」
「は…え、なに、言って…」
おろおろと視線をさ迷わせるチョロ松の目に、じわりと薄い膜が張る。
「…僕、なの」
「そう言ってるじゃん」
「なんで、」
「理由とかいる?」
「…いらない。どうしよう」
「取り敢えず帰りませんか。向こうは向こうで上手い事やってるだろうしなあ」
「向こう?…あ、一松!」
「カラ松に任せときゃ大丈夫だから」
そう笑うおそ松は今まで見た事もない顔をしていた。
相棒でも、兄でもない――恋人の顔。
「あれ〜、チョロちゃん、顔が赤いよ?どしたの?」
「っ、別に」
「あんまりオレが男前だから見惚れちゃった?」
「っ…うっさい!調子乗んな馬鹿!」
ガスッ!照れ隠しの蹴りを一発入れて、さっさと先に行ってしまうチョロ松に笑いながら、おそ松は後を追った。
「もー、ホンット照れ屋なんだからあ」
「うるさい!離せよ!」
追い付いて肩を組むと更に飛んでくる悪態。
それでもその口元が緩んでいるのを見て、内心にんまりと笑った。
(誰が離しますかっての。やっと女神様が堕ちて来たのに。――なあ?)