ジュース 晴天。花が冬眠から目覚めて凛と咲き始め、ほのかに甘い匂いが漂ってくる。一日を始めるには最高のキャンパスライフ日和である。
「このクソビッチ!」
そう言い放った見知らぬ女性は真に罵倒を浴びせながら、手に持っていたジュースをこちらに向かって投げつけた。
否、甘い香りの正体は人工的に造られた甘味だったようだ。
なんとまぁ、手厚いご挨拶である。
ぽたぽたと前髪から垂れてくるオレンジ色の液体を舐め取ってみるとほんのり甘い人工的な味。服も体もベトベトだ。
人気のない場所に呼び出されたのは真をベトベトにして人前に出れなくするためか、はたまた自分の悪行を他人に見せないためか。
目の前の女性の真意など、真にはどうでもよかった。昼は食堂で友人と食べる予定を入れている。このままの格好では人一倍世話焼きな友人の胃を痛めてしまうであろう。
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