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    維新都市編 VS勤王党 高杉重工社長室、そこでは普段社長である高杉とその恋人が仕事をしている。しかし、定時を過ぎれば彼の恋人は帰宅するため―高杉重工は大変ホワイト企業なので―社長だけがいる空間になる。
     そこに個性的な着物を着たツートンカラーの髪を三つ編みに結わえた女性が瞬きの間に登場した。まるで密会のようだが、それは違う。高杉と女性―出雲阿国―は契約を交わしているのでこうして情報共有のために集まっているのである。
     高杉の恋人は魔術とは無縁の一般人。血生臭いことには首を突っ込ませたくない彼は、一切合切聖杯戦争などの話をしていないし、今後するつもりもないと断言していた。つまり、この女性と恋人は出会うことはないのである。阿国も阿国でそれをきちんと察知して極力彼女の話題を出さないようにしていた。高杉の元で隠密のように行動している阿国が、こうもその恋人に出会わないのが良い証拠だ。高杉がそうなるよう誘導しているに決まっている。


    「社長、少々ご報告が」

    「なんだい、阿国君。改まって」

    「あなたに恋人様がいらっしゃるということは、周知の事実になってまいりましたでしょう?」

    「やけに遠回しだねぇ、あれかい?そろそろ自重しろって?」

    「いえ、そうではなく。攘夷志士たちがその方を襲おうと計画……ちょっ、高杉様!?」


     急にテーブルを叩きつける高杉に、気でも狂ったのかとひやひやする阿国。ちなみに阿国はサーヴァントのためもちろん霊体化ができるし、そのタイミングで高杉の恋人を目撃している。どこにでもいそうないたって普通の女の子だったので、拍子抜けしてしまったことは高杉には未だ黙っていた。割と高杉が面倒臭い男だということを彼女は知っていたので、変に地雷を踏みぬきたくないわけだ。今後どんな命令を下されるかわからないし、より一層こき使われるのは御免である。
     それにしても高杉は恋人のことを相当溺愛しているらしい。阿国が発したあの言葉だけで、普段はにこにこと胡散臭い笑みを浮かべている高杉の表情が崩れ去ってしまった。阿国は早々に彼へ伝えるという判断を下した自分に拍手を送る。
     もし襲われた後だったら報復がえげつなさそうですものね、この社長。
     ちなみになぜ恋人の存在が周知の事実になってきたかというと、勤王党に高杉重工のスパイを潜らせているのと同様に、向こう側からのスパイがいて当然なのだ。会社内でいちゃつく……というより、恋人を大変可愛がっている様子を隠してはいないので、筒抜けであると考えていい。
     高杉としては別に恋人をえさにするつもりは全くなく、今の自分であれば彼女のことを守れると自負しているし、何なら今までも対処していたから現状問題はない。
     まあ、こうして勤王党が実力行使に出てくるなら徹底的に叩くだけだ。と、小さく息をついて高杉は阿国をじっと見据えた。


    「ハハハ、なにそれ。面白くないにもほどがあるぞ」

    「どうなさるおつもりで?」

    「誰のものに手を出すつもりか、少し思い知らせてやろう。……まあ、少し予想はしてたしね。これで次の計画に進めるってものさ」


     無表情に冷たく言葉をのせていた高杉ではあったが、特段自身の予想が外れていなかったことに気を良くしたのか、それとも“次の計画”とやらの実行に移れるからか、いつものようににっこりと笑みを浮かべて阿国を見つめる。
     その変わりようにひやりとしたものが背筋を伝うが、阿国も負けず劣らず笑顔を浮かべて彼を見返した。その反応に満足したのかは定かではないが、高杉は一つ頷いてピシッと人差し指を突き出す。


    「手当は弾もう。……頼めるかい?策はすべてこの僕の頭の中にある」

    「仕方がありません。ここまで知っておいて社長の恋人に何かありましたら寝覚めが悪いですし、この阿国さんが手伝って差し上げましょう」


     ばさっといつの間にか手に持っていた扇子を広げ優雅に笑う阿国に高杉もニヤリと口角を上げる。勤王党の奴らが考えることなんて、今の高杉にとっては手に取るようにわかることだ。
     誰を敵に回したのか、身の程を知らせてあげないとね?
     何人たりともあの柔肌に手が触れることは許さないと、高杉はテーブルに広げられていた地図に手を滑らせる。近い将来、それと同様のものを手に取るのはカルデアの彼ら。現状この二人は知る由もないけれど。


    「女・子どもには手を出さない連中だと思ってたんだけど、僕が絡むとポリシーさえ捨てちゃうのかなぁ。本当につまらない奴らだ」

    「そもそも社長がいろんな方面から恨まれているのが悪いかと。どんだけ尻拭いしたと思ってんですか」

    「ハハハ。その分いろいろと融通を効かせてるんだからいいだろ、別に」


     悪びれもなくそう言い切る高杉にはあ、とため息をついた阿国は彼の手元を覗き込む。すでにそこには矢印やら文字やらが書き込まれており、本当にこの事態を想定していたのか、と感心さえした。
    いっつもこの社長には手のひらの上で転がされてる気がしてならないんですがねぇ……と、阿国は内心愚痴を溢しつつ、高杉の言葉を待った。
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