頼若(叶わない方のやつ)「好きです。頼重殿」
「この気持ちが正しい判断なんて思ってはいない」
「でもだからって諦めきれるわけないじゃないですか…」
俯いたまま小袖の裾をぎゅうと握る。
小刻みに震える肩と見えなくても目に涙を溜めているのが分かる。
「時行様、私は貴方様の御気持ちを受け取ることはできませぬ」
頼重はしゃがみ、目線を合わせると力いっぱい握りしめていた時行の拳を優しく解くと、両の手をそっと自分の手に重ねる。
「その御気持ちはとても嬉しゅうございます。しかし、貴方様は北条家の現当主であり、託された未来があるのです。」
覗き込むように見つめる頼重の瞳。
あまりに優しい眼差しで、言ってることは全部正しくて、我儘なんてわかってて
「……わか、ってる……でも、私はこんなにも貴方を欲しているのに…」
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