(水麿)官能小説家×ヌードモデル 4「この人、痴漢です!」
手を取られた時、状況が理解できなかったのを憶えている。
水心子の過去だ。高校生の頃、満員電車の中でそう女性に手を掴まれ掲げられた。驚いたなんてものではない。取られたその手はずっとショルダーバッグのベルトを握っていたのに、どうしてそんなことになるのか意味が分からなくて。
「僕は、なにも」
しかし周囲の目が視界に入った時、なにも言えなくなった。蔑むような、白々しいものを見る目。言葉を飲み、背筋には汗が噴き出した。
次の駅で女性と数人の男性客に引きずり降ろされても、どう無実を証明していいのか水心子には分からなかった。絶望した、このまま、自分はどうされるのだろうと。
しかしそれはすんでのところで追いかけてきた男性客に救われた。
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