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    フスキ

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    フスキ

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    水麿、天涯孤独の大学生すいくんの元に祝福の天使まろくんが舞い降りたお話です。一応R指定ではないのですがちょっとそういう描写通ります。約束されたハピエン。

    #水麿
    mizumaro

    (水麿天使パロ)君という奇跡 人を羨むのは好きじゃない。『いいなあ』なんて口が裂けても言いたくない。嫉むなんてもってのほかだ。だってそれは、その言葉を宛てる誰かのそこに至るまでの努力も何もかもを軽視している。人は幸せになるべくして幸せになる。水心子はそう思っている。
     ――だけれど、その言葉が出かかる瞬間は毎日訪れる。高校生の頃から独りぼっちの家への帰り道を辿りながら、吐き出す息が白いのを見ていた。
     幼いころに父が亡くなった。それからは母を守るのだと必死に生きてきたというのに、高校時代にはその母も亡くなった。貯めてくれていた預金と自分のアルバイト代で大学生にまでなれたけれど、先に何が見えているでもない。
     帰ったってどうせ独りなのだ。温かいご飯なんてない。一緒に食べてくれる人なんていない。
     人を羨みたくはない。――けれど僕は、そんな生真面目さだけを抱えて、いつか両親のようにぱったり死んでしまうんだろうなあ。そう思うと虚しくて堪らなかった。
     なんだか食事を作る気にもならない。スーパーを通り過ぎた。家路にある最後のコンビニが近づく。何か買わなければ。
     通り過ぎた。――ああ、なにやってるんだろ。
     人気のない小さな公園にふと足が向いた。幼い頃は両親と来た場所だ。遊ぶ水心子を見て彼らは目を細めていてくれた。二つあるブランコの片方に腰を下ろす。
     どうして、今、独りなんだろう。目頭が熱くなる。泣くなんてばかみたいだ。でも、でも……。

    「泣きたいことが、あるんだね」

     驚いて横を向いた。誰もいなかったはずの隣のブランコ、人が座っている。
    「ああごめんね、驚かせてしまった」
     焦ったようにしながら綻ぶ秀麗な顔立ちの口元。吐く息は水心子と同じく白い。白いのだ。なのに、服装は――服と言えるのか? ただの布、のように見えるものだけを素肌に纏って、際どい部分はしっかり隠れているけれど、あまりにその格好は――。
    「えっと、おそらく不審者だと思ってしまうだろうけれど、僕はね」
     何やら紡いでいるその手を、がっと掴んだ。跳ね上がる顔に叫ぶ。
    「なんて寒そうなかっこしてるんだ! きみ、ちょ、上着とかは!」
    「え、な、ないけれど、あの」
    「ないの? 家は!」
    「えっと、」
    「遠いのか!」
    「う、うん?」
    「じゃあとりあえずついてきて、うちに行こう! アッもちろん変なことしないから、ただ、そう、保護するだけ! 風邪引く前に! ほら!」
     立ち上がって腕を掴んで、ぐいぐい引きずるように歩く。掴んだ腕は冷え切っていた。こんなで寒空の下にいたら、本当に凍えてしまう。せっかくの綺麗な肌が、凍傷でも負ってしまったら大変だ!
    「あっ、あの」
    「あ、僕は水心子正秀! 一応身分はちゃんとしてるし犯罪歴もないしこれからもしないから安心してくれ、とにかく身体壊す前にあったかいところ行かなくちゃだよ……あ」
     そこでやっと思い至って立ち止まった。後ろを歩いてきていた彼が止まり切れずぶつかってきて、慌てて受け止める。
    「ご、ごめん。……あの、すまない同意を得る前に動き出してしまって……悪い癖なんだ……あの、もし宛てがあるならそちらに行ったほうがいい。僕の家なんかよりきっと……えっと……」
     同じくらいの位置にある顔を覗き込むと、彼はふにゃりと笑った。心拍が跳ねる。
     こんな綺麗な人がいるんだ。
    「ううん。宛てはないんだ、だから、行きたい。水心子のおうち」
     その時はっとして自分のコートを脱いで彼にかけた。ごめん早く気づかなくて、と謝罪すると、彼はとろとろに微笑んでありがとうと言ってくれた。

     一軒家は両親が若いうちに持ち家にしてくれていたので今も住に関しては問題なく過ごせている。そこに帰宅してすぐに水心子はストーブとこたつの電源を入れて、それから浴槽に湯を溜め始めた。とにかく彼を温めなければ。
    「そうだ服! 着替えたほうがいい、僕の服しかないけど着てくれる? 体型はそんなに変わらないと思うから……」
    「う、うん、……いいの?」
    「全然かまわないよ! 君が風邪引くほうが嫌だ」
    リビングの隣の和室に飛び込んで、箪笥を引き出す。今はずっとここで寝ていた。二階はほとんど使っていない。時折自室に戻る程度だ。
     そういえばこの間買ったばかりでまだ新品のルームウェアがあったと袋を開けていると、彼がぽつりと問いかけてくる。
    「……水心子は、どうしてそんなに優しくしてくれるんだい?」
     顔をそちらに向ける。彼は肩にかかったコートを落ちないように握ってこちらを見ていた。窺うような瞳。
    「君は自分が犯罪者ではないと言ったね。だから安心して欲しいって。……僕のほうが危ない人かもとは、思わないの? 真冬の人の世でこんな格好なんだよ?」
     その言葉に、改めて彼の薄着すぎる姿を見て――そして、水心子は飛び上がって彼の肩を掴んだ。びっくりした顔が向けられる。
    「――まさか、誰かにら、乱暴された、とかじゃないよな!」
     彼が目を丸くする。そうだ、どうしてその可能性に思い至らなかったのだろう。こんな格好、もしかしたら手遅れだったかもしれない。もしそうだったら。こんな綺麗な人が、もし、どこかの不逞に乱暴をされていたら――。
    「ふ、……あはは……!」
     しかし彼は笑い始めた。心底おかしそうに、どこか安心したように。戸惑う水心子に、彼はそんなことないよ安心して、と口にしてから、ゆっくりと続けた。
    「君に聞いて欲しいことがあるんだ。すこしだけ、時間をくれるかい?」

     時間をくれるかい、と問うたあと、彼は水心子が渡したルームウェアを着てキッチンに立った。
    「……あの?」
    「作りながら話すから、聞いてくれるかな」
     おずおず頷く。彼はありがとうと言ってくれた。洗われた白い手のひらが上を向く。
    「僕の名前は、源清麿」
    「きよまろ」
    「うん。……それで、こういうことができる身でね」
     上向いた手が、一度きゅっと握られる。
     それが開かれた時、そこには玉ねぎが一個乗っていた。
    「……マジシャン、ってこと?」
    「ふふ。違うんだ、これは本当の奇跡。……って言うと人は怪しむと思うのだけれど……聞いて欲しくて」
     玉ねぎを台に置いたあとは、その手から人参、じゃがいもまで出てきた。それらをまな板に載せて順番に切りながら、彼は時折こちらを向いて続ける。
    「僕は、頑張っている君を祝福するために遣わされた天使なんだ」
     言い切った時、彼は手を止めて苦笑した。
    「気味が悪い? 信じられないよね」
    「う、うん……」
    「……素直」
     くすくす彼が、清麿が笑う。そこではっとした。
    「あっ違、気味が悪いのは違う! 君は嘘をついてないって思うし! だけど、その、いきなりすぎて……よく分からない……」
    「あはは、そうだよね。順を追って説明するから、聞いて欲しいな」

     清麿は、天使界にある人間を救済する課の職員なのだと言った。
     救済課は不定期に、『努力しているが見合う幸福を持てていない』人間の元へその『一番求めるもの』を与えるために天使の派遣を行っている。担当と決められた天使が、対象の人間に直接奇跡を贈るのだ。
     その対象者に、今回水心子が選ばれ、清麿が担当を任されたとの話だった。

     俯いた水心子の頭に、清麿の手がそっと触れる。
    「……ごめんね」
    「……なん、で、謝るんだ」
     その手が髪を梳き、頭を撫でてくれた。温まった手だった。
    「君は誇り高い人だから、そんな与えられる幸福なんて望まないだろう。自力で掴みたい、……そう思うよね。だから、望まないものを押しつけようとしている僕は、絶対に悪い天使なんだ」
    「……そんな……」
    「でもね、これも聞いて欲しい。……僕は、この任に立候補したんだ。君を天界から見ていて、本当に優しくて頑張っていて、一生懸命ないい子だなって思っていたから。……お父様が亡くなられて、お母様も続いて……それでも君は、今日までずっと泣かなかったね」
     じわじわと、心にその言葉の意味が届いて、目を開いた。
     両親が亡くなったことは、こんなシステムを持った課の天使だ、いくらでも分かって当たり前だろう。けれど、水心子が今まで泣いたことがなかったことなんて、ずっと遡らなければ分からないしそんなことまで調べる必要はない。それでも彼は知っていた。
     ――ずっと、見ていてくれた?
     よしよし、と頭を撫でられる。優しい、柔らかい手のひら。
    「ひとりで、よく頑張って生きていてくれたね……ありがとう、すごかったね、水心子」
     ぱたた、と雫が床の木目に染みる。くつくつと煮込まれる鍋の音の中、彼の腕の中に包まれた。
     流れた涙は清麿の肩に吸い込まれていって、あたたかな体温と穏やかな声が何度も『がんばったね』『だいじょうぶだよ』を繰り返してくれることが、ずっと凍えていた涙腺を融かした。

    「それで、あの……なんで、クリームシチューを」
    「? 水心子、好きだろう?」
     泣き終えた頃、鍋いっぱいのシチューもできあがっていた。教えてもいない鍋つかみや鍋敷きの場所まで把握しているのを見ると、どうやら言っていることは偽りないらしい。
     こたつに運んだ清麿が、慣れているような手つきで皿にシチューを盛る。……確かに、クリームシチューは水心子の好物だ。ただし独りになってからは作ったことはない。家族に作ってもらうだけの料理だった。
     それが、今、彼の手で作られて食卓にある。
     こたつの前に立って、彼がぽつりと教えてくれた。
    「他の対象者には、お金とか、地位とか、そういうものが贈られるのだけれどね。でも、水心子が『一番求めていたもの』は、きっとこれだと思ったから」
    「僕の……」
    「うん。……『家族』」
     ――かぞく。オウム返しした水心子に、彼はごめんとまた謝った。
    「ごめんね。本当に欲しいのは僕なんかじゃないよね。君は、本当の家族に帰ってきて欲しかったんだよね……。でも、天使の奇跡でも、一度亡くなった人を戻すことは許されない。……ごめんね。結局僕は、何もしてあげられないようなものだ」
    「そん」
     彼の肩を、強く掴んだ。
    「そんなこと、なんで言うんだ!」
     またぼろっと涙が落ちた。おかしいなあ。今まで一度も泣かなかったのに、ほんとに涙腺がばかになってる。
     清麿の瞳を覗き込んだ。確かに人にはないような目の色。
     宝石よりもうつくしいから。
     その瞳に、伝える。好物だった、ほかほかのクリームシチュー。それがここにある。目の前には優しい天使がいる。
    「……君が作ってくれたシチューを、一緒に、食べて欲しい」
     ――そうしたら、それって家族ってことだよ。
     水心子は微笑んだ。清麿の頬を雫が伝ったから。
    「……ほら、一緒に泣いてもくれるなんて、まるでずっと家族だったみたいだ……」

    「……きよまろ、言いにくいんだけど」
    「うん……ごめん……」
     こたつの右側の一辺で、清麿が突っ伏す。どうやら食べて分かったようで、彼はうううと唸った。
    「……人間界のお塩って、濃度が濃かったんだよね……忘れていたよ……」
     ごめん、と深く落ち込んでまた零すので、水心子は笑ってその頭を撫でてやった。
    「いいんだよ。また、作ってくれたらいいじゃないか」
    「……水心子?」
    「また作って欲しい。……だめ、かな」
     問いかけると、彼はぱっと顔を持ち上げた。明るい瞳がこちらを向く。
    「……いいのかい?」
    「君が、嫌じゃなければ……」
    「嫌な訳ないよ、うれしい! 次はしっかりやるね!」
     そうして飛び上がるので、彼の膝がこたつの天板にぶつかった。がちゃんと音を立てる鍋と食器。
     目を見合わせて、二人で吹き出した。
     散々笑い合って、少しだけ塩辛いシチューはそれでも美味しくて二人で食べきって、皿洗いも二人で。まるで、本当に家族だ。面映ゆく思っていると、洗剤で洗った皿を流す清麿が少しだけ悲しそうに教えてくれた。
    「僕は、一ヶ月この世界にいられるんだ。その一ヶ月が過ぎたら、天界に帰らないといけない」
     温まっていた心が、急激に冷やされた気がした。冷水を被った心地だった。
     清麿はごめんねとまた言った。
    「一ヶ月後、最後に、ひとつだけお願いを叶えられることになっているんだ。天使の最高の奇跡と言われている。死者を生き返らせること以外なら、一生を生きる財も、何でもあげられるよ。……考えておいて、水心子」

     日々は過ぎていく。早すぎるくらいのスピードで。
     次の日清麿に服を贈ると、彼は面白いくらいに慌てた。僕が与えなければいけない側なのにと。そんなのいいんだよって、清麿が喜んでくれたらそれが一番嬉しいんだって、そう告げたら彼の頬は染まった。
     一週間。清麿を連れて街へ出た。天界から見てはいたけれど降りたことはなかったらしく、瞳を煌めかせる彼が可愛かった。揃いの茶碗を買った。彼はなにか言いたそうにしたけれど、僕が望んでるんだよと言ったら黙った。
     二週間。出会った公園に行った。水心子が何かを言う前に、彼は滑り台を指さして笑った。『水心子、怖くて滑れないって泣いたの、可愛かった』そう可笑しそうにするので、それはまだ小学校にも入る前だと怒るとまた彼は謝った。謝らないでと言った。またごめんねと続けたので、その口を唇で塞いだ。彼は驚いたようだったけれど、嫌だったかと聞くと首を左右に振った。人はこんなことをするんだねと言って、でもきもちいいねと笑う彼が、やっぱり可愛かった。
     三週間。清麿はこの世界の調味料を完全に使いこなせるようになった。どの料理もびっくりするほど美味しいのだけれど、それでも水心子は三日に一度クリームシチューを強請った。好きだね、と笑う彼に、僕が好きなのは清麿だよと返すと口を噤んでしまった。
     明日で一ヶ月だな、と水心子が零した夜。清麿がそっと寄ってきて、躊躇いながら自分からキスをしてくれた。
    『……もうひとつ、もらって欲しいものがあるんだ。……あの、天使の奇跡とかではない、から、個人的なものだから、いらなければ言って欲しいのだけれど、』
     珍しく歯切れの悪い言葉をくれる彼を抱き締めた。少し黙ったあと、ずるい、と細い声が耳に滑り込んでくる。
    『どうして、分かってしまうの……』
     恥じ入る彼の身を布団に倒しながら、家族だからじゃないかな、と言うと、その『家族』の指す意味を察してしまった彼は可哀想なくらい真っ赤になった。
     可愛いな。かわいい。きよまろは、ほんとにかわいい。
     もう明日の願い事なんて決まり切ってしまっていたのだけれど、水心子は何も言わなかった。最後だと思っているからか、清麿はたくさんの声と言葉をくれて、さみしいと泣きながら縋ってくれることが罪悪感と一緒になって心を掻き回した。
     初めて彼を抱いた。

     朝になると、清麿はあの出会った日の装束を着ていた。起き上がったばかりの水心子を見て、静かに微笑む。
    「……時間切れなんだ、水心子」
     そうか、と呟いた。彼は薄く笑ったまま、悲しげに正座した自身の膝を見つめた。
    「最後に……聞くね。財でも、名誉でも、なんでも求めるものをあげる。……水心子、君は、何が欲し」
    「君」
     ゆっくりと、彼の目が見開かれる。
    「……え、?」
    「聞き洩らしたの? らしくないな」
    「……え、だ、だって」
    「いいよ、何度でも言うから」
     上向いた彼の顔を見つめて、水心子は微笑んだ。肩に触れる。
    「……君に、人として一緒にいて欲しい。死んじゃうまで、ずっと」
     彼はまた下を向いた。肩が縮こまって震える。破顔して腕を回すと、だって、だってと彼の声。
    「言っただろ、財も名誉も受けられるんだよ。こんな機会、二度とないかもしれないんだよ」
    「そんなのいらないよ。最初に清麿だって、君はいらないって言うと思うって言っただろ。君がいいなあ」
    「……ぼ、僕は、天使はね、下界に完全に降りてしまったら奇跡なんて使えなくなる。君に今までみたいに幸福はあげられないよ。そんな僕なんか、そんなもの、もらっても」
    「君がいい」
     ぎゅ、ときつく抱き寄せる。
    「最初から、ずっと決めてたんだ。断られたら終わりになっちゃうかもだから言わなかっただけ。……僕の幸福なんてさ」
     笑いながら、彼の髪の毛に頬を埋めた。
    「清麿がいれば、全部幸せ以外何もなくなっちゃうんだよ!」

     泣きじゃくる君はやっぱり可愛い。他のものとはどうやったって違う。
    「さ、いしょ、から、そのつもり、だったの」
    「うん」
    「ぼく、……僕、最後だとおもったから、きみに、抱いてもらったのに」
    「最後なんてやだよ。これから、毎日でもしよ?」
     力ない手刀が頭に叩き込まれる。ばか、と言う声もふにゃふにゃだ。
    「……天使でなくなっても、そんな真似は、君にはさせません」
    「一緒に堕落してくれていいんだけどなあ」
    「だめだよ、ばか」
     そうして彼が、泣き濡れた笑顔を見せてくれる。
    「……一緒に幸せになるために、頑張って生きていかなくちゃだろう!」

     玉ねぎと人参とじゃがいもを買って帰る。彼はもう奇跡なんて使えないので、重たい二人分の材料を提げて辿る。
     一軒家に帰り着く時、敷地の入り口から手を振る薄紫の頭。
    「おかえり! 大学お疲れさま!」

     ずっと独りだった家。
     今は君がいる。待っていてくれる。おかえりと声をかけてくれて、そんなに溶け落ちそうなほど笑って。
    「――ただいま!」
     駆け寄って、抱き締めた。笑声が夕暮れに響く。

     今日もシチューは世界一美味しい。君はこの世の何よりも綺麗だ。
     こたつの中、僕の受けた授業の話を聞きたがり、そのくせ大学の友人たちに関する話は少しむくれて聞く君があまりにも愛しくて、腹を抱えて笑ってしまった。
     べちんと肩を叩かれる。
    「どうして笑うんだい!」
     もー、と怒る彼の手を握って甲に唇を落とした。染まる頬を見上げる。

    「幸せだなあ、って、思ったから!」
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    フスキ

    DONEまろくんが天使だったパロの水麿、すいくん風邪っぴき編です。
    ひとは弱くそして強い(水麿天使パロ) 僕の天使。嘘でも誇張でもない、僕のために人間になった、僕だけの天使。
     水心子は、ほとんど使っていなかった二階の部屋に籠もり、布団をかぶって丸まっている。鼻の詰まった呼吸音がピスー、ピスーと響くことが、いやに間抜けで、布団を喉元まで引き上げた。
    「……水心子」
     僕だけの天使、が、ドアの向こうから悲しげに呼びかける。
    「入らせて。ね、顔が見たいよ」
     清麿は、心細くて堪らないような声でそう言った。ぐっと息を詰める。顔が見たい、のは、こちらだってそうだ。心細くて堪らないのだって。けれど、ドアを開けるわけにはいかない。
     水心子は風邪を引いてしまった。もとより人である水心子は、きちんと病院に行き診察を受け、薬を飲んで今ここで寝ていられる。けれど、一緒に暮らす清麿は、元が天使だ。医療を受ける枠組みの中にいない。もし彼に移してしまって、悪化してしまっても、水心子には術がない。天使だったのが人になった身なのだ。病院で診られて、もしどこかに普通の人とは違う部分があって、それが発端となり彼を失うことにでもなったら。
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