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    杜宇(とう)/乙葵

    現在魔道祖師中心
    物書きのために描いた落書き(アナログ/クロッキーでの)の供養用垢
    たまにオフレコ創作メモも

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    杜宇(とう)/乙葵

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    魔道祖師 
    二次創作/忘羨/現代AU/社会人/同居設定/バレンタイン

    現世なので、藍忘機は原作よりは柔らかいゆるいイメージで書いてます。食うに語らずはありません。

    Twitterでのバレンタインタグのリクエストで書きました。ほぼ即興かつ書きたいようにやった!なので読みづらいかったらごめんなさい。
    言い訳タイム作りたい😂😂😂

    Happiness after Valentine 二月十五日 朝七時頃
     いつもは目覚ましが鳴る前に目が覚める藍忘機はこの日は珍しくけたたましいアラーム音で覚醒した。
     頭が重くずきずきと痛い、重たい瞼をやっと開けた途端に襲い掛かってきたのは胸のあたりの不快感。思わず小さく呻いた。
     体がいつになくだるい、風邪とも違うこんな感覚は初めてだ。
     横を見れば腕にしがみついた魏無羨は一糸まとわぬ姿で夢のなかで、むにゃむにゃと何事かをつぶやいている。
     一糸、まとわぬ姿?
    「?!」
     藍忘機は彼の姿に目を見開きがばっと起き上がった。
     響く頭の痛みに額を抑え、胃の辺りからむせ返る感覚をぐっとこらえて、掛布をめくって魏無羨を見れば裸で滑らかな白い肌には見覚えない真新しい噛み跡とうっ血の跡がある。
     にわかに信じがたく改めて自分を見るとやはり裸で、肩甲骨のあたりが傷でもあるのかひりひりと痛い。
    「うぅ‥‥」
     温もりを奪われた魏無羨は寒さに体を丸く縮こませ目を閉じたまま不満げに唸った。
     風邪をひかれるのは困る。掛布をたっぷりとかけてやると藍忘機は再び頭を抱えた。
     この様子から昨晩の自分たちは、相変わらず睦み合ったことは明らかなのだが、その記憶が一切ない。昨日の事をさかのぼると夕食後から記憶がぷつりと切れていた。
     どうして記憶が飛んだのかと考えて、真っ先に浮かぶ原因は酒しかないのだが、昨日の夕食で魏無羨は酒を飲んでいたが、自分はノンアルだった。漂う酒気に酔うことはないので、酔うのなら必ず口に含む必要があるのだが‥‥
     藍忘機が痛い頭で昨晩のことを一生懸命に思い出そうとしていると、横から手が伸びて思いきり魏無羨に抱きつかれた。
    「寒くて目が覚めちゃった。温めてくれよって、藍兄ちゃん酒臭い」
    「!」
     自分でも気づかなかった事を言われた藍忘機は愕然として、すんすんと鼻を利かすがまったくわからない。
     若干困った顔をすると魏無羨はケラケラと笑った。
    「そうか、藍湛覚えてないのか」
    「魏嬰、何故私は....」
     尋ねると彼は面白そうな顔で言った。
    「昨日、おまえはチョコレートを食べて酔っぱらったんだ」

    +*+

    二月十四日 バレンタインデー

    「「魏先輩、わたし達のチョコレートうけとってください!」」
    「お、ありがと!!」
    「もちろん、義理ですよ♩」
    「‥‥その言葉は余分じゃない?」
    終業間近、社内では毎年恒例の女性社員からのチョコレート配りが始まっていた。
     本命狙いの手作りが菓子から、お返しを狙っての媚びた有名店の高級チョコ、なかにはめんどくさいと市販の特用チョコをばらまくものまでいて多種多様だ。
     嬉しいのか悲しいのか恋愛対象ではないが、女子に人気のある魏無羨のデスクには、義理チョコがたんまりと乗っかっている。適当な紙袋に詰めるとパンパンになった。
     これを見た藍忘機は嫉妬しちゃうだろうか?
     考えると、その後の熱い展開まで予想してしまい思わず口元が緩む。
     その時だ。
    「阿羨」
     背後から声をかけられ肩をびくつかせて振り返ると、目の前にいたのは別部署で働いている義姉の江厭離だった。
    「姉さん!わざわざ来てくれたの?」
     子供っぽく相好を崩す魏無羨に、江厭離は温かな眼差しで頷いて紙袋いっぱいのお菓子を見やる。
    「そうよ、今日の阿羨はきっと定時でまっすぐ帰ると思ったから、今のうちと思ってきたの。それはそうと今年もお菓子をいっぱいもらったのね」
    「当たり前だろ、俺は会社の人気者だからな!」
     胸を張って自慢する彼に彼女はわざとらしくからかった。
    「なら、羨羨は私からのバレンタインはいらないかなー?」
    「いるっ!いるよっ!姉さんからのバレンタインちょうだい!」
     両手を出して必死に言う様にくすくす笑うと、江厭離は後ろ手に持っていた箱を彼の手の上に乗っけた。
    「はい、どうぞ」
     赤いリボン施された黒い箱は魏無羨の両手に納まるほどの大きさがあって、開けてみると中にはホワイトのラインが入ったハート形のチョコレートがたくさん入っている。
     箱の中からチョコの独特な甘い匂いとは別にスモークのきいた微かな酒精の香りがして驚いた魏無羨は目を瞬かせた。
    「これ、ウィスキーボンボン?もしかして姉さんの手作り?!」
    「そう!あなたはお酒が好きだから作ってみたの!でも阿羨、車で帰るのだから食べるのはおうちに帰ってからよ。わかった?」
    「ああ、姉さん。わかってるよ、俺はそんな悪い子じゃないってば」
     魏無羨は言い聞かせるように言われて気恥ずかしくなり頬を赤らめる。江厭離は情けなく言い返す可愛い義弟に優しく微笑んだ。
     終業して誰よりも一番に会社を出た魏無羨は寄り道せずに家路についた。
     今日は藍忘機とおうちでバレンタインディナーの約束をしているからだ。
     外でムーディーに食事という提案もあったのだが、結局は一番落ち着く場所でいつも通り過ごす方が自分たちらしいとなって今に至る。だけど、些細な変化はほしくてちょっと贅沢な夕食を一緒に作ろうという話になり、この日のために2人で美味しい食材と上等な酒を取り寄せてと準備をしてきた。
     マンションについたら、きっと先に帰った藍忘機が食事の下ごしらえをしているはずだ。
     駐車場に入ると自分の止める場所の隣に汚れ一つない白い外車、藍忘機の車があった。
     ビンゴ!と内心で歓喜して一発駐車を決めると、車を飛び出してロビーを抜けてエレベーターに乗り込む。
     階段を昇ればすぐに済む可愛い階に住んではいないため、これに乗るしかないのだが彼が待っていると考えると、いつも着くまでがじれったい。
     最寄り階についたら、部屋はすぐそばだ。
    「ただいま!」
    「おかえり、魏嬰」
     扉を開けると藍忘機が出迎えてくれる。
     彼は予想通り先に台所に入っていたようで、袖をまくったワイシャツ姿に黒地に白うさぎの刺繍が入ったエプロンを身に着けていた。
    「今、ちょうど下ごしらえを終えたところだ」
    「わかった。俺もすぐ手伝うよ」
     魏無羨は靴を脱ぎ捨ててリビングダイニングに向かうと、荷物をそこらにおいてから、コートと背広を脱いで、ネクタイを襟から引き抜くとソファーに放り投げる。そして、ダイニングに入ると流し台で手を洗って壁につるされた藍忘機と色違いのエプロンを身に着けて袖をまくった。
    「ようし、作るぞ!俺は何からやればいい?」
     やる気満々の彼に、藍忘機は目元を和ませるとそっと自分の元に引き寄せ抱きしめる。
     とろりとした薄琥珀の瞳がちょっと驚いた魏無羨を映して、顔を近づけて甘えるように額と鼻先をこすりあわせた。
    「作る前にやることがある」
    「つまみ食いはダメだっていったのは藍兄ちゃんじゃないか」
    「これは味見だ」
     せっかくやる気だったのに不満を漏らすもうまく切り返されて、魏無羨はそのままぱくりと藍忘機に唇を食べられてしまった。
     しばらく愛しい人の味見をした藍忘機は夕飯づくりをはじめる。
     一方の魏無羨は濃厚なキスに腰がぬけてソファーに退場、場外からブーイングの嵐を起こしていた。
    「藍忘機、藍湛、藍兄ちゃん!やる気だった俺になんてことをしてくれたんだ!!」
    「君が味付けすると、なんでも辛くなってしまう」
    「なっ、さては俺に料理を手伝わせないつもりでキスしたな!」
     何も言わないが、藍忘機の目はご名答と物語る。 魏無羨は唇を尖らせるが、辛い物しか作れないというのは事実なため唸ることしかできない。
    「じゃあ、俺は何をしたらいい?」
     このままじっとしているのも嫌で、半分ぐずったように聞くと藍忘機は傍にあったレタスを指さした。
    「メインを乗せるお皿にレタスをちぎって添えてほしい。あと、ミニトマトも‥‥」
    「わかった」
     機嫌を直した魏無羨は体が動くのを確認して立ち上がると、彼の言う通りの作業をしていく。味付け以外は本当に手際がいいので、藍忘機は彼に細かなフォローをお願いしていった。
     まもなく料理は出来上がり、2人だけで使うには少々大きなテーブルにフルコースばりの料理がならぶ。
     魏無羨は赤ワイン、藍忘機はノンアルの白ワインで乾杯だ。
     グラス同士のぶつかる小気味良い音が響くなか、魏無羨はワインを煽りながらケラケラと笑った。
    「藍湛、ノンアルのワインがあってよかったな!なかったら100%ぶどうジュースなんて可愛いことになってたもんな!」
    「魏嬰」
     たしなめるように名を呼んでから藍忘機はノンアルの白ワインを口に含んだ。
     甘みが少なく仄かな酸味とブドウの香りが口の中に広がり、ノンアルと言いながらもどこかお酒を思わせる味わいがあった。けれど、ふらっとすることものどが焼ける感覚にむせることもないのだから不思議である。
     味見させてと、魏無羨が一口だけ口に含むと「ジュースじゃん!」と不満な顔をするが、自分はこれぐらいがちょう良いと思った。
     他愛のない会話しながら食事はすすみ、最後のデザートは昨晩のうちに藍忘機が仕込んでおいたチョコレートムースだ。白い皿にはラズベリーソースで細かな花が描かれ、その上にココアがかかった丸形のムースがある。
     藍忘機の相変わらずの凝り性具合に魏無羨は感心せざるを得ない。
    「俺は思う。おまえは一般企業の役員をやめて有名ホテルのパティシエにでもなればいいんじゃないか?」
    「こんなことは君にしかしない」
    「わぁお、俺って愛されてる。俺も愛してるけど」
     しばらく見つめって、互いにふっと笑い合う。
     デザートも甘かったが食べている間の2人の空気ほど甘いものはなかった。


     一緒に食器を方づけて、2人はお風呂の前にソファーでひとまず小休止。
     魏無羨は藍忘機の肩に寄りかかりながら、テレビを眺めつつ会社の女子からもらってきたバレンタインのお菓子を広げていき、たまに味見と称して手作りお菓子を半分こして食べて総評したりとまったりとした時間が流れた。
    「そういえば、藍湛は俺がこんなに女の子からお菓子をもらってきてもやきもち焼かないのはなんでだ?」
     不思議そうに尋ねると、藍忘機は落ち着いた面持ちで答える。
    「‥‥君が私のもので、私が君のものだとわかっているからだ」
    「藍湛、おまえ平然とそういうこというな!」
     まっすぐに見つめられた魏無羨は顔を真っ赤に染め上げ、照れくさくなり顔をそらそうとするが藍忘機はそれを許さなかった。大きな手が真っ赤な彼の頬を包み込んで、動かないようにがっしりと固定してしまう。
    「君の前で私が平然としてられるとおもうのか?」
    「!」
     近づいてくる藍忘機の顔に手を添えると、肌は白いのに感じる体温は熱く、密着したところから伝わる鼓動は早くて大きい。彼の欲情に気づいた魏無羨も胸が高鳴り、目の前の薄琥珀の瞳に吸い込まれそうになった。
     このままいくとイチャイチャコースは確実だ。でも、そうなってしまうと当分は離してもらえない。
    触れ合うなら、せめて準備もかねてお風呂には入りたい!
     でも、一度スイッチの入った彼にお風呂入りたい発言は、それはそれでとんでもないことになるので、魏無羨はなにかストップをかける口実はないかと頭をフル回転させる。
     そして、視界に入った黒い箱でひらめき、理性をもってしてわざとらしく声を上げた。
    「ああ、そうだった。姉さんからもらったチョコレートがあったんだった!」
     この言葉聞いた瞬間、藍忘機は額に青筋を浮かべたが魏無羨は気付くことなく、ぴたりと動きが止まったことを好機と、彼から離れてリビングテーブルに置かれた江厭離がくれた黒い箱に手を伸ばす。
     しかし、それよりもはやく藍忘機が黒い箱をむんずと掴んだ。
    「藍湛?!」
    「私と義姉のチョコレートとどっちが大事だ」
     淡々と言う彼の目は微かに怒っていて、魏無羨は表情をひきつらせた。
    「おおおおおまえ、さっきチョコレートもらっても、やきもちやかないって言ったばっかだよな?!まさか、今更あのノンアルで酔っぱらってるのか?!」
    「酔っぱらってない!」
     むくれる藍忘機は明らかにやきもちをやいている。
     彼がこうなってしまうと面倒だとわかっている魏無羨は苦い顔で笑いながら、彼を穏やかに宥めることに努めた。
    「藍湛、そうだよな。俺が雰囲気ぶち壊したから怒ってるんだよな?とりあえず、その箱から手を離そうな。それ、姉さんが俺のために作ってくれたチョコなんだ‥‥あとで食べるから。今はおまえと一緒に‥‥ってなにしてんだ!」
     必死に落ち着かせようとするさなかに、険しい表情で息を荒くする藍忘機は、こんなもの!とばかりに箱のふたを放って投げると、中のチョコレートを数個掴んで自分の口に入れてしまった。
     魏無羨はしばらく愕然としたが、彼がチョコの中に入ったウィスキーの酒気にむせ込んだことで我に返る。
    「おい、大丈夫か?!それ、酒が入ってるからお前じゃ下手したら」
     背中をさすり言いかけたところで、藍忘機は案の定その場でぱたりと寝落ちてしまい、魏無羨は彼をソファーに寝かすと、息ついて視線を泳がせながら後ろ頭を掻いた。
    「やっちゃった‥‥」
     藍忘機を見れば先ほどまで険しかった顔は消え失せて穏やかな寝顔がそこにある。
     しばらく考えて過去は振り返らないと決めた魏無羨はこの隙に風呂に入ることを決めた。
     でもその前に、せっかくだから江厭離の作ったチョコレートの味見をしようと思い、その場に座って黒い箱に入ったハートを一つとると口の中に放った。
    「うまぁ!」
     チョコを噛めばとろりとウィスキーシロップが口の中で広がり、酒気とともにスモーキーかつ芳醇な果実の香りが鼻腔にまで抜けて、チョコレートの甘みと独特な香りの絶妙なバランスが舌を唸らせる。
    「もういっこだけ」
     もう一つ欲しくなって手を付けた時、背後で藍忘機が目を覚ました。
     気配に気づいたときにはもう遅く、魏無羨はあっという間に床に押し倒されて天井が見えていた。
    「藍湛、おはやいお目覚めで」
     彼を静かに見おろしてくる藍忘機の目は爛々としていて獲物を狙う猛獣そのものだ。
     しかも、すこしトロンとした様子は確実に酔っぱらっている。
     魏無羨は手ごわい相手になって帰ってきた藍忘機に乾いた笑いを浮かべた。
    「なぁ、お風呂入りたいんだけど」
    「だめだ」
    「じゃあ、藍湛は何がしたい?」
    「君が欲しい」
    「なら、さっきのやきもちは治った?」
     黙ってしまう藍忘機は視線をそらし不満げな顔で頬を膨らませる。
     酒が入ると相変わらず子供っぽく素直で、その愛らしさに魏無羨は小さく笑うと彼らの頭を優しく何度も撫でた。
    「藍湛。可愛い藍湛、こっち見て。見てくれたら、おまえにいい物あげる」
     藍忘機が渋々と視線を合わせると、魏無羨は嬉しそうに目元を和ませる。
    「よくできました。ほら、口開けて?」
     手にしていたハートのチョコを咥えて彼の唇に押し付けると、目が大きく見開かれ薄琥珀の瞳が揺れた。
     小さく唇が開いたので、魏無羨は藍忘機の首に手をまわし引き寄せて体を密着させると、チョコごとぱくりと彼の唇を塞ぐ。舌を差し込んでチョコを彼の舌の上に送り込んだところで、キスの主導権を藍忘機に譲ると彼の舌の動きに合わせながらチョコレートを溶かしていった。
     そのうちにシロップが口の中に広がって、むせ返るほどの酒気と甘く醸した香りに2人して鼻に抜ける艶のある声を漏らすと、互いの混ざった唾液ごと甘味を飲み干して離れた。
    「んっはぁ‥‥あまぁ」
     頬を上気させてうっとりとする魏無羨は体をくったりとさせて色気のある吐息をもらし、藍忘機はその様に目を細めるとのどをごくりと鳴ならす。
     もう互いにタガが外れかかっていて、体はすでに求めあう準備を整えつつあった。
     魏無羨は最後のとどめを刺す。
    「俺ってば藍兄ちゃんにまだ、バレンタイン渡してなかった。本当はチョコレートあるんだけど、ひとまず今は羨羨でもいい?」
     可愛く首をかしげると、藍忘機は頷く間もなく彼を抱きしめ深く深く口づけた。

    *+*

     二月十五日朝七時半ごろ
    「で、酔った藍湛はキスしながらチョコレートを食べるのがいたく気に入っちゃって、ヤっている間に姉さんの作ったウィスキーボンボン全部キスでなくなっちゃったんだ。二日酔いはその代償だな」
     藍忘機は昨日の事を振り返りつつ、記憶を失った原因の経緯から、酔った後の事を聞いて言葉を失っていた。
     プレイも濃厚なものをいくつもやったらしく、彼は具体的に話そうとする魏無羨の口を手で塞ぐと、片手で額を抑えて腹の底から息を吐く。
     何故、自分はあのときやきもちを焼いて自棄になってチョコレートを食べてしまったのか!
     いい雰囲気のときに身内の話を持ち出されたら、それは不快にはなるのは当たり前だ。
     けど、少しでも冷静でいれば、あのチョコを食べなければ一夜愛らしい魏無羨の姿を目に焼き付けられたのに!
     ずきずきとする頭の痛みと胸やけの不快感が余計に藍忘機を気落ちさせる。
     見かねた魏無羨は彼をしっかりと抱きしめると、慰めるように話しかけた。
    「俺が悪かったんだ。あのとき、素直にお風呂入りたいっていえばよかった。でも、おまえ一度スイッチはいると酔ってなくてもすごいからさ‥‥一度冷静になる方法がないか試したら逆効果だった。今のお前のその調子だと、今日は会社休んだ方がいい、俺も休むからさ。俺におまえの看病をさせてよ」
     申し訳なさそうに見つめ言う彼に、藍忘機は首を横にふって反省の色をみせる。
    「私も悪かった。君の事になるとどうしても自分の気持ちを抑えられなくなる。受け入れてくれる君には感謝しかない」
     うつむきがちになって仄かに困ったように笑い魏無羨を見た。
    「今日は看病をお願いしてもいいだろうか。二日酔いというのは初めてで、どうすれば良くなる?」
    「うん、まずは水分をたくさんとった方がいいから水持ってくる」
     頼られた魏無羨は表情に明るさを戻すと、上着を羽織ってベッドから降りて台所に向った。
     奥で食事はどうしようとか、会社に電話しないとなど、忘れないように今日の段取りをつぶやく声が聞こえくる。
    「もってきたよ」
     コップ一杯の水を渡されて藍忘機がお礼をいうと魏無羨は満面の笑みを浮かべた。
     目の前で自分と彼自身の会社に休みの連絡を入れる姿を眺めながら、藍忘機は不思議な感覚に陥る。
     いつも睦言を交わしたあとのベッドの主は魏無羨なのに今日に限って逆だからだ。
     でも、彼に尽くされると考えるとたまにならこういうのも悪くはないと思う藍忘機だった。



    Fin


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    recommended works

    sgm

    DONEアニメ9話と10話の心の目で読んだ行間。
    現曦澄による当時の思い出話。
    諸々はアニメに合わせて。ややバレあり。
    [蓮の花咲く]にいれよ〜て思って結局入らなかったやつ
     藍曦臣と睦みあいながらも交わす言葉は、睦言ばかりではなかった。
     夕餉の後、蓮花塢ならば江澄の私室か、真冬以外は四阿で。雲深不知処ならば寒室で。酒と茶を飲みながら語り合う。対面で語り合うときもあれば、すっぽりと藍曦臣に後ろから抱きこまれている時もあるし、藍曦臣の膝を枕にして横たわりながらの時もあった。
     一見恋人として睦みあっているかのようでも、気が付けば仕事の話の延長線上にあるような、最近巷で噂になっている怪異について、天気による農作物の状況や、商人たちの動きなど領内の運営についての話をしていることも多い。
     六芸として嗜んではいるが、江澄は藍曦臣ほど詩や楽に卓越しているわけでもなく、また興味はないため、そちらの方面で会話をしようとしても、あまり続かないのだ。そちらの方面の場合はもっぱら聞き役に徹していた。ただ聞いているだけではなく、ちょうど良い塩梅で藍曦臣が意見を求めてきたり、同意を促してくるから、聞いていて飽きることはなかった。書を読まずとも知識が増えていくことはなかなか良いもので、生徒として藍曦臣の座学を受けているような気分になれた。姑蘇藍氏の座学は今でも藍啓仁が取り仕切って 5582