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    Kana_BoS

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    奏哉さんと合同誌です。
    わたしは、サッカーファンのモブ女の視界から視るゆっきーについて書きました。

    奏哉さんのサンプル:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17413783
    ------
    2022.5.3 SUPER COMIC CITY 29 -day1-
    Out of the Blue
    B6/36P/¥500
    ネット頒布中

    ##サンプル

    【青監獄】Out of the Blue/Blue sky that lasts Forever【サ 気持ちが弾む。ふわふわと軽やかで身体が宙を漂ってしまいそうでありながら、ぱちぱちと刺激的で体内で小爆発を起こす興奮がある。それでいて、じりじりと炙って内蔵を焦がすような焦燥もかすかに混じっている。いつだってそういうものだった。

    「あれ、今日は早いね」

     無意味だとわかっていても逸る気持ちが抑えきれなくて、エレベーターのボタンを連打していた指が止まる。視界の隅にエレベーターが現在いるフロアが表示される電子モニターを収めて振り返る。ノートパソコンを片腕に抱えた同僚が物珍しそうにわたしを眺めていた。

    「今日は代表戦なんですよ」
    「あー、なるほど」

     いつもであればまだ己の業務と向き合っているけれど、唯一の趣味サッカー観戦は最優先事項で、数日前から業務調整をしてそそくさと退勤したところだ。カバンに入ったユニフォームとマフラータオル、ボーナスを全投資しているカメラを持ってスタジアムへ向かう時間も好きだ。この後の試合に思いを馳せて、お気に入りの選手がスタメンに選ばれたかをそわそわとSNSで度々確認して、頭がサッカー観戦モードに切り替わっていく時間。
     それになにより、今日はJリーグではなく日本代表の試合。ワールドカップの本戦出場をかけた予選の初戦で、今後の勢いをかけた負けられない戦いがスタジアムで待っているとあれば、時間に余裕があるはずなのに一分でも早くスタジアム入りしたい気持ちになるのだ。

    「今日の席は?」
    「もちろんメインロアー! しかもラッキーなことに二列目ですっごく近いんです!」

     ゴール裏で熱狂的に応援するよりも、指定席のピッチを見渡しやすい席で、カメラを構えて観戦するのが好き。だからセンターラインを基準にできるだけ中央より、そして写真が撮りやすいように前列だとなおよし。基本的にはJリーグを観に行くときは、チケット購入時に座席を指定することが大半。けれど、代表戦はブロックを選ぶことはできても座席は抽選結果を見るまではわからない。コンビニでチケット発券をしたときに、二列目と印字されているのを見たときは、ひと目を気にせずに叫びたくなってしまった。かれこれ五年近く推していて、今回ようやくA代表へと招集された選手は中盤かトップラインの下で起用されることが多い選手だから、前後半で切り替わっても見やすいようにセンターブロックで、そもそも最初からスタメン起用されない可能性も考えてベンチの様子も見やすいようにベンチ側を指定した。個人的にはかなり良席ともあれば、声に興奮が乗ってしまう。

    「そっか、楽しんで」
    「はい!」

     エレベーターの到着を告げて空いた扉を合図に、会話を切り上げて箱の中へと滑りこんだ。そしてやっぱり、無意味にボタンを連打してしまう。
     仕方がない。五年前のあの試合以来、すっかり虜になってしまった選手の記念すべきA代表初戦なのだ。ワールドカップ予選初戦というよりも、そちらのほうがわたしの心を躍らせる。




     ⭓   ⭔   ⭓   ⭔   ⭓




     突然ブルーロックイレブンなる高校生を中心としたプロジェクトのチームとU - 20日本代表の試合が決まった。しかも今まで招集がかからないのが疑問なほど、スペインの一部リーグで大活躍をし、世界すらも注目している天才ミッドフィルダー・糸師冴が初招集された。そんなことを聞いたら、サッカー好きの血が騒ぐ。向こう数カ月分の運を賭けてチケットの申込みをした。
     そして迎えた試合当日。ブルーロックスタジアムという、ブルーロックプロジェクトのために作られた新しいスタジアムはさすが専用とあって、ピッチがかなり見やすい設計がされている。おかげでアップの時間からわくわくした。それはわたしだけではなく、A代表の試合でもないのに、駆けつけたサポーター全体のボルテージが上向き、キックオフまで一時間近くあるというのに超満員のスタジアムはすでに熱気に包まれはじめている。

    「やっぱ高校生だなあ。線ほそ……」

     U - 20のアップの様子をカメラに収めながら、情報がまったくないブルーロックの面々もチェックをしていく。高校サッカーはあまり観ないこともあって、その体格の細さに心許なさを感じる。あれでは、軽い競り合いでも吹き飛んでしまいそうだ。それに比べ、イタリアのリーグで活躍している愛空のがっちりと安定感のある体付きはさすがの一言だ。
     試合も楽しいけれど、このアップの時間もかなり好きだ。ほどよい緊張感を保ちながらも、チームメイトとのコミュニケーションを深める。サブのメンバーがピッチの脇で鳥籠をして和気藹々としている姿も、まるで男子高校生から成長していないような無邪気さがあってかわいいものだ。

    「〇、二か〇、三でアンダーが圧勝かなあ……」

     一応ブルーロックがホームとはいえ、客席のほとんどはU - 20のサポーターで、誰しも圧勝を予想しているだろう。
     そう確信して、試合開始のホイッスルにカメラを離して拍手でエールを送る。あっちこっちからU - 20を応援するチャントが聞こえ、それを先導する太鼓の音が鳴り響く。
     ブルーロックボールで始まった試合。背番号8のドリブルのテクニックの高さはとても高校生のそれではなくて、会場がどよめいた。彼から中盤を切り裂くようにペナルティエリア前の11番へと上げられたボールはピシャリと愛空がシャットアウトする。さすがのプレーにシャッターを切る手が止まらず、身体の血が騒ぐ。この世代は期待の世代だ。彼らが数年後にA代表に上がってきたらワールドカップはより面白いものになる。
     愛空に続くように、頼もしく強力なディフェンダー陣がブルーロックの果敢な攻撃を思い通りにはさせない。そこからの糸師冴を狙いすました速攻。会場が生き物のように湧き上がる。空気にうねりを感じ、ビリビリと身体が痺れる。ファインダー越しに覗く世界は狭いけれど、近い。カウンターを防ごうと右サイドバックが寄せきる前に、それをあざ笑うような前線へのロングフィード。かなりの額を投資してシャッター速度を重視したカメラだけど、肝心のシャッターをきる人間の反射を伴わせ、その判断が早いパスのキックの瞬間をきちんと捉えただろうか。ドンピシャで足元に届いたパスの精度の高さに息が漏れる。これが糸師冴の才能の一部分なのか。

    「あああ! 決まらない!」

     いくつかのパスをつないで再び糸師冴からの世界レベルのパスがエース・閃堂へと繋がる。ワントラップ挟んでからのシュートは決定機ではあったもののブルーロックキーパーのファインセーブで阻まれ、声を上げてしまう。あの瞬間、ダイレクトでゴールを狙える選手が日本に現れたら世界が近づくのに。決定力不足、その言葉が脳内にちらついたけれど、こぼれ球を拾った糸師冴のパスがどこに出るかという期待で、かき消された。
     そう、パスだと思った。角度がない。人数も寄せている。いつもの日本ならクロスが上がる。

    「うそ!」

     ファーサイドネットに突き刺さったボール。アナウンスの「ゴォーーール!」という大きな声。サポーターの興奮と歓喜の叫び声。勢いよく立ち上がって興奮を表す。熱量が一気にあがって、頬が熱くなる。スタジアムのそこかしこから冴コールが鳴り止まない。
     わたしたち凡人の想像を超えたゴールシーンのリプレイが大型ヴィジョンに映し出され、そのマンガの世界のような芸術的なゴールに鳥肌がたつ。やはり、これは間違いなく糸師冴率いるU - 20の圧勝で間違いがないだろう。
     それでもすぐに流れを掴むブルーロックチームの攻撃力の高さは、つい魅入ってしまうのがある。攻撃のひとつひとつにセンスを感じる。ゴールへのペアリング力の高さは、代表よりも高いかもしれない。そしてボールを持ってない選手の、先を見通した動きのレベルの高さは、ひとりのサッカー好きとして心躍るものがある。

    「……ぇ、」

     驚きで思考が追いつかない。超絶トラップからのリフト、そしてジャンピングでのシュート。きれいに揺れたゴールネットに息を飲んだ。応援しているのはU - 20日本代表だけど、こんな最高のゴール沸いてしまうだろう。拳を天に突き上げた7番の彼に一部のメンバーが集うところが、男の子らしさを感じてシャッターをきる。
     日本サッカー史の中でもこんな面白い試合は稀に観るものだと思う。次はどんな攻防を魅せてくれるのかと、どっちのチームの活躍にも期待してしまう自分がいる。両者ともにハイレベルのテクニック、緻密な連携、そして多彩なアイディアで試合の先を読ませない。同点に返された今、ブルーロックイレブンの力量をみた今、試合開始前のような「U - 20の圧勝」だと断言できる余地はなくなった。
     こんなフォワードが自チームにいたら、を体現するようなブルーロックのメンバーをもっと観たいと思い始めている。
     前半終了のホイッスルと共に溢れた息は、どんな感情が詰まっているのか自分でもわからない。でも不思議と嫌な疲労感は感じていない。



    「え、誰だろ……」

     閃堂の動きも悪くはなかった。それ以上にあの糸師冴と連携しているフォワード。その躍動感が相手の必死さを生み出して出てきた強引なプレー。絶妙な位置でのフリーキックのチャンスはもはやアートだ。凡人の想像の域を遥かに凌駕し、周囲を置き去りにしてゴールネットに叩き込んだボール。あんなフォワードがいたら、名前くらいは聞いたことがありそうなのに、皆目見当もつかない。
     どちらのチームも目が離せない。ファインダー越しでは物足りなくなってきている。

    「それにしても、ブルーロックはルックス偏差値も高いな……」

     交代で下がってしまった長髪のサイドバックも、交代で出てきた子も、容姿が整っている。それに続けて出場しているウィングのスポーツサングラスの子もかなりイケメンだ。これはミーハーな子たちには相当ウケが良さそうだ。それでいて、その全員のサッカーセンスが並外れている。前半を観ていただけでもわかる。日本らしくはないけれど、ゴールに貪欲で、プレーに対する思考力が高い。だからと言って、個人技だけでゴリ押しをするわけではなく、味方のサポートにも入る。少しばかりディフェンスの仕方に粗があるように視えるけれど、まだまだ伸び代だろうし。それに交代で入ったセンターバックの子が見せた、愛空や仁王のようなディフェンス、ゴールキーパーの瞬発力の高さは買うことができる。
     試合が終わったら、ブルーロックプロジェクトについて調べてみよう。そしてあわよくばまた試合があったらスタジアムで観てみたい。
     着実にブルーロックのファンにさせられている自覚はうっすらとある。それだけ魅了するプレーをしているんだから、きっとわたし意外のサッカー好きだって同じような人はいっぱいいるはずだ。

    「やば、あのプレースタイル好きかも……」

     フィジカルが強そうな身体がしっかりした子が入ってからリズムが変化した。そしてこぼれ球を拾った後の5番くん。前半の力で躱すタイプのドリブルから、パルクールのような相手を掻い潜るドリブルに心が歓喜する。エスパニョーラほど陽気ではなく、ブンデスリーガほど堅物でもない。だけど、食い入るように見つめ、その先に何が待っているのかと、彼が視る景色を除いてみたくなる。
     決まったと思ったシュートは惜しくもナイスディフェンスを魅せた愛空に阻まれた。でも何かが決まった音が頭の中で響いた瞬間だった。顔に似合わずパワーで押し込むスタイルだったり、お行儀が悪そうなドリブルスタイルだったり。もっと知りたいと思わせる強さがある。
     でも、それは5番の彼だけじゃない。全員が求心力のあるプレーをする。U - 20メンバーも今までとは違う。こんなにおもしろい試合、息をするのも瞬きをするのも惜しい。興奮で頭がくらくらしそう。

    (なんて、楽しそうにサッカーをする子たちだろう……)

     言葉にできない内から湧き上がる感情で、視界が滲む。身体が震えて、カメラが揺れる。スーパープレーが出るたびに感嘆の息が漏れる。
     ホイッスルが鳴る。ゴールが決まったそれと、試合終了を告げるそれ。サポーターが爆発する。六万人を超えるサポーターたちがこの歴史的瞬間に立ち会った。日本サッカー界が新章に突入した瞬間だったと、数年後のメディアは告げるようなハイレベルな試合を、日本の選手たちが、若い世代が戦い抜いた。
     喜びをチームメイトと分かち合った選手たちが、ピッチを後にする。そのために近づいてくる姿にカメラを向けて驚いた。

    「まじでイケメンだった……」

     何度目かわからない衝撃。16番くんと会話をしながら歩いてきた5番くんは、近くでみると思っていた以上に顔立ちが整っていた。隣の16番くんもイケメンの部類に入るけれど、5番くんはずば抜けている。慌ててカメラを下ろすと、スマホで代表のSNSを開いた。試合の実況投稿をスルーしてブルーロックチームのメンバー一覧を探す。

    「雪宮、剣優……顔よりもいかつい名前だな……」

     そのまま彼の名前を検索タブに打ち込んで出てきた結果に大きく頷いた。そうかなるほど。それは見た目もいいはずだ。

    「モデルでサッカー選手とか、どれだけハイスペックだよ……」




     ⭓   ⭔   ⭓   ⭔   ⭓




     あの試合をきっかけに、5番の彼こと雪宮剣優、通称ゆっきーを追いかけることになった。気づけばモデルをしているときの写真やら記事を探してかき集めたし、彼がブンデスリーガに行ってしまってからの雑誌は必ず買い、なんなら休みに都合をつけて現地まで応援に行った。所属クラブのユニフォームだって持っているし、年始に国内でブルーロックメンバーと集まってやっていた練習も観に行って、そのとき代表のユニフォームにサインだってもらった。そのユニフォームの背番号はあのときの5番でネームプレートを個別オーダーして「KENYU」で入れてもらうほど、どっぷりハマってしまった。
     容姿が整っているのも大きな要因ではあるけれど、それよりも知れば知るほどその容姿とのギャップが強く、人を惹き付ける選手だったんだから、抗いようがない。やさしいザ・モデル顔で、プレースタイルもそうだけど、練習中やメディアの記事、SNSなどをみている限り気取っていなくて、笑うときは大きな口を開けて笑って、意外と少年らしさも残しているのがわかる。喋ったときの口調も堅い。賢そうな印象はそのままで、上昇志向も強い。一番意外だったのは人懐っこいことだった。もっと他人と距離を置いて傍観していそうだと思っていたけれど、彼から率先してコミュニケーションを図ろうとする。
     惹きつけられた結果、追いかけ続けていて印象に残っていることは、ブルーロックプロジェクトから卒業した以降も過酷だと言われるそのプログラムを共にしたメンバーとは仲がいい。頻繁に連絡を取っているのがわかる。特に御影玲王、凪誠士郎、潔世一、蜂楽廻、千切豹馬、烏旅人、乙夜影汰は、オフシーズンに食事や買物に行っている写真がSNSに上がるほどだった。
     アンダーの代表合宿や、アンダーの試合後の挨拶などは、かっこよくもあり、かわいくもあり。子供っぽくはしゃぐメンバーをみて声を出して笑ったり、時折それに乗っていたりするのを見るたびに、わたしの中の感情が爆発を起こす。



    「今日ゆっきースタメンだって!」
    「やったー! 最近ベンチスタート多かったから嬉しい!」


    本編に続く
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    DONE奏哉さんと合同誌です。
    わたしは、サッカーファンのモブ女の視界から視るゆっきーについて書きました。

    奏哉さんのサンプル:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17413783
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    2022.5.3 SUPER COMIC CITY 29 -day1-
    Out of the Blue
    B6/36P/¥500
    ネット頒布中
    【青監獄】Out of the Blue/Blue sky that lasts Forever【サ 気持ちが弾む。ふわふわと軽やかで身体が宙を漂ってしまいそうでありながら、ぱちぱちと刺激的で体内で小爆発を起こす興奮がある。それでいて、じりじりと炙って内蔵を焦がすような焦燥もかすかに混じっている。いつだってそういうものだった。

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    「今日は代表戦なんですよ」
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    Kana_BoS

    DONEブラックコーヒー派で倉持クンにキスするのが大好きな御幸と、カフェオレ派の倉持くん。
    御幸が遠征中のお話。ナンバリング26を御倉にしたかっただけのペラペラの本。

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    2022.5.3 SUPER COMIC CITY 29 -day1-/スーパーウイニングショット 2022
    Pavlov's dog
    A6/22P/¥200
    ネット頒布:予定なし
    【御倉】Pavlov's dog【サンプル】 ぷかり。ふわり。のんびりと時間をかけて覚醒していく意識。閉じた瞼をくすぐる白を残した日差しに、ああ、もう朝なのか、と意識ははっきりとしてくる。できるものならもう少し、あと五分でいいから眠っていたい。体温が移って適温のシーツの中を蠢いて枕に顔を埋めた。すん、すん、と鼻を鳴らせば嗅ぎ慣れた匂いに気持ちも身体も脱力していく。そんな鼻腔をやわらかに刺激する香ばしい匂い。

    「くらもちー。あと三十分で家でないと遅刻するけどいいの?」
    「……はあ?」

     間延びした声。かなり暢気なそれに緊急性を察知できず、自身からも間抜けな声が溢れた。

    「今、七時半過ぎたとこ」
    「おま!」

     ゆるやかな覚醒をしていたはずの脳が一気にアクセルを踏み込んだ。腕力に任せて飛び起きた背後で、掛け布団がベッドからずり落ちた気配がしたけれど、そんなことを気にしている場合ではない。二十分以上の寝坊だ。
    4206

    Kana_BoS

    DONEパフューマー倉持とプロ野l球選手御幸の出会いの話。
    原作世界線ではない、パロディーです。倉持くん好みの香りに仕上げられちゃう御幸と、倉持くんが作った香りを独占したい御幸の関係最高だなって。

    ------
    2022.5.3 SUPER COMIC CITY 29 -day1-/スーパーウイニングショット 2022
    M2
    A6/70P/¥700
    ネット頒布中
    【倉御倉】M2【サンプル】< 01 : Top notes >





     新しいシーズンがはじまる前の、ほのかな緊張感とゆらめく高揚感がチーム全体を包み込んでいた。昨シーズンは惜しくもあと一歩のところで逃した優勝を、今年は掴み取ってやると勇み立つ若手をコントロールしながら、周囲と共に御幸一也も今日の練習を終えた。
     高校卒業後にプロ入りをしてから、気づけば十五年が経過しようとしている。あの頃のような伸び代も、吸収力もない。いくら神経質気味に身体を管理してきても、着実に重ねていく年齢には抗いきれないものがある。その積み重ねてきた時間の分、財産として経験があり、忍耐力がある。
     そうは言っても、御幸の周囲はとても御幸が老いているようには然程感じていない者が多かった。誰よりもストイックに自己管理をして余分というものを知らない肉体と、二十代後半で時が止まった風貌とが相まって、ファンからの人気も留まることを知らない。選手だって、コーチ陣だって、まだまだ御幸の活躍に期待をしていた。
    12304

    Kana_BoS

    DONE高2の冬の金東。バレンタインデーに事件が起こる!
    季節外れだけど!新刊が出ることが大事だよね!幼馴染から恋人へのステップアップってむずかしいよなあ。


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    2021.12.18 松方WEBオンリー
    バレンタインデー憂鬱症
    A6/38P/¥400※送料・手数料は除く※
    ネット頒布中
    【金東】バレンタインデー憂鬱症【サンプル】 どことなく浮かれた空気が漂う。朝練終わりにちらりと見かけた三年生の一部は、将来をかけての試験前でピリピリとしていた。この季節の空気のように乾いて冷え切っていて、気がついたらどこか怪我してしまいそうなそんな張り詰めた空気。
     来年は俺もあの一員なのだろうか。それともなんとか推薦を貰えて、後輩の邪魔にならないように野球の練習に励んでいるのだろうか。
     廊下や他所のクラスの教室から感じる空気からどうにか意識を切り離して、後ろで騒がしい奴らも無視を決め込んで自分のクラスへ黙々と足をすすめる。

    「あ、信二」
    「東条、お前先行くなら言えよ」
    「あー……、ごめん。ちょっと、」

     視線を斜め上へと逃して乾いた笑いを浮かべる東条に、眉が寄る。でもすぐにその理由がわかってしまえば、東条なりの気遣いだとわかる。自分の体に隠すようにして持っている紙袋。そこから覗く愛らしいラッピング。
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