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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    親友からのお題提供でした 甘々な朝

    #漣タケ

    儘ならぬままに ひんやりとした窓に額を押しつけ、ベランダの隅の光を見つける。雪の死骸だ。周りに流されず溶け切らぬままいたら、取り残された小さな塊。そこにあるのはただの虚しさと、そういうものにしか宿らない美しさ。
     気怠い体を起こそうとすれば、身体に腕を回され、思うように動けない。今朝はそんな日だった。日課のロードワークよりも、この温もりを優先するようになったのはいつからだったか。普段は寝汚い彼の、規則正しい寝息が心地よくて、いつまでも包まれていたいと思ってしまう。しかし、朝日は見たかった。窓ガラスが冷たい。
     そのまま上半身を窓に預けていたら、腰のあたりに頭を寄せられた。どこにもいかない、と伝えるように頭を撫でるが、その手に吸い寄せられるように太ももの上に乗っかられてしまった。まるで膝枕のように。まるでじゃない、実際に今そうなっている。銀髪がさらさらと指に溶けていく。
    「……おはよう」
    「……まだ」
     すり、と鼻先が腹をくすぐる。明け方の匂いに包まれて、仄かな光を反射させる彼のまつ毛が好きだ。昼に見るそれはいつも釣り上がっていて、憎たらしくこちらを睨みつけているから、綺麗に揃って伏せられていると、ゾッとするほど美しく思える。
     腰のあたりの鈍い痛みが輪郭を纏い出す。その元凶がこんなに甘えたなのだから、ぶつける先がなくて困ってしまう。一月の冷気が身体をすっかり冷やし、上半身がふるりと震えた。雪の死骸にとっては居心地が良さそうだ。漣の頭をそっと持ち上げ、その隣に寝直した。
     横になるや否や、すぐさま背中に腕が回される。湯たんぽだとでも思っているのだろうか。彼の胸の匂いを鼻腔いっぱいに吸い込む。落ち着くけれど、昨夜の甘さも思い出して全身が熱くむず痒くなってしまった。今更恥ずかしくなることでもないのに。思わず身体に力が入り、その拍子に腹が鳴る。沈黙の帷が開ける。
    「ほら、メシ作るから、どけ」
    「……やーだ」
     このままだと、自分もまた微睡んでしまう。あたたかな彼の体温、鼓動、寝息、愛。それらで胸は満たされるものの、腹は空く一方なのだ。絡みつく腕と脚を払い除けようともがくも、徒労に終わり続ける。
    「まだ寝てろ」
    「オマエが決めるな」
     無理やり抱え直され、とうとう逃げることを許されなくなった。台所が遠くに感じる。起きたらトーストを焼くんだ。四枚切りの食パンにマーガリンを塗って、ハムとチーズをニ枚ずつ載せて。ヨーグルトと牛乳を添えて、それは素晴らしい朝食になるはずだ。腹の虫はそのままに、漣の背中に腕を回す。俺の思い通りにならない身体が、今だけは手の中にある。儘ならぬ朝すら愛おしい。俺は落ちてくる瞼をそのままに、もう一度彼の匂いをたっぷり吸い込んだ。暫しの間、これで腹の虫が満足しますように。
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