食材を捕獲しに行くココマ「小松くん、くれぐれも気をつけて」
ココと小松は毒生物がとりわけ多いエリアに来ていた。その目的は毒があるがうまいとされている食材の捕獲、そして無毒化。無毒化まではできる範囲でいいとのことだが、一番の目的は捕獲。危険なため捕獲した食材全てをIGOに提出することになっている。
トリコも毒に対する耐性がないわけではないが、毒には毒を。元はココ1人だけへの依頼のはずだったが話を聞いた小松が勢いよく名乗り出た。
薬膳餅の簡略化以降、小松は毒食材に興味が出ていた。元からその片鱗はあった。ココと初めて出会ったフグ鯨に始まり、グルメカジノで出回っていた有毒な違法食材、そして患いの雨と薬膳餅が決定打となる。
毒を治し癒すこと。更にはその先の毒を含んだ食材を美味しく調理する方法を知りたい。そう強く思っていた矢先、この話が舞い込んできた。
ココとの2人きりというのは久しぶりで少し緊張もしていたがココの顔を見て一気に緊張が解ける。ココの家で今回の目的とルートを確認しながら準備をするともうすっかりいつもの小松に戻って、キッチンに立っている。
「旅の前にはしっかりと栄養をつけましょう!」
そう言いながら食材たちに目を輝かせいきいきと料理をしている姿に見惚れてしまう。
こうして2人でいるとフグ鯨の時を思い出す。だけどここはフグ鯨の時よりも危険な場所だ。
「待った。
電磁波が乱れている。ここで待ってて」
瞬間、空気がひりつく。ココがターバンを緩め、明らかに戦闘態勢に入る。
戦うためとはいえターバンを緩めてもかっこいいなぁ。そんなことを思いながらうっとりとココを眺めていた。
「お待たせ、もう大丈夫」
そう言いながらターバンを締め直す。
「品のないものを見せてごめんね」
小松と出会う前のココならこう言っていたはずだ。だが、例えそう思ったとしてももう決して言うことはない。小松と出会ったから。小松と出会い、美食屋として再起することができた。食材を自身の手で捕獲する楽しさを再び味わえた。自分を卑下することも、寂しげな顔をすることも減った。
「流石です!先に行きましょう、ココさん!」
出会った時と変わらず接してくれる小松はココの特殊な視神経を通してもなお、明るく眩しい存在だ。
2人は着々と進みながら毒に関しての知識を互いに共有していた。
「大きく分けるとボクのように自身で毒を生成、合成できるタイプと、毒のある生き物を捕食して毒を蓄えるタイプがいる。フグなんかがそうだね」
「そうなんですね!蓄えるタイプだったらIGOで研究してもらったら無毒化できそうです。
そもそも毒を食べなければいい!と簡単にいけばいいですが…
そういえば、合成するタイプはなんで生み出しちゃうんですかね?」
「外敵から身を守るためだろうね、一番は」
「もし外敵が全くいない場合で育てたらどうなるんでしょう?」
「ふふ、面白いね。
さそりは毒のイメージが強いけれど無毒な種の方が多いんだ。そしてさそりの毒も薬にできる。僕たち人にも有害だけれど虫に有害なことの方がずっと多い」
「じゃあもしかしたら、人間界にいる毒生物から作った薬が人間界だけでなくグルメ界で役に立つかも!」
「そうだね。ふふ。小松くんが毒料理の分野でも活躍してくれるのが楽しみだよ。」
ノッキング、毒の知識、対処、毒を生み出す根本である構造。料理人である小松からもココの毒に対する知識と経験は見習うものが大いにある。
「捕獲した食材たちは毒料理を専門としたタイランシェフに依頼をするのもいいかもしれないね」
「はい!僕個人でもお会いした時に聞いてみます!」
タイランシェフは患いの雨でも力を貸してくれた。珍しい食材もあるから喜んでくれたらいいなとはにかむ小松をココは愛おしく見つめた。君も僕たちを、人類を救ってくれたのに。まっすぐな小松が誇らしく、愛おしくなる。
「その…小松くん。また一緒に行かないかい?」
「え?いいんですか!?ココさんと一緒に旅ができるなんて嬉しいです」
「ありがとう、小松くん」