「だったら一度、弓場さんと寝てみたいんですよね」
「ア」
何言ってやがる、と換装体ではない透明なレンズの奥で、目を剥いた。
「ちょっと前に女の人と初体験を済ませたって話はしましたっけ」
「……されてはいねェーな」
「誰とまでは言うのはさすがにプライバシーの侵害だから言いませんけど、ボーダーの人で前から親しくはしてたんですけど、一カ月前くらいだったかな、ボーダーを辞めて三門市を出て行くから、最後の思い出に一度だけダメかなって」
「……」
「中学の時に第一次侵攻だったでしょう? それで復興だボーダー入隊だって色々とバタバタしてて、ぼく、ひとりの人とちゃんとお付き合いってしたことなかったんですよ。キスと、まあそのちょっと先くらいまでは経験してましたけど。でも仮にも女性にそこまで言わせて断るのも、悪いんじゃないかと思ったんです。弓場先輩は叱ります?」
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