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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

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    POIPOI 79

    palco_WT

    ☆quiet follow

    弓場ちゃんと王子。愛はないが情はある。王子は水上と関係があるし、弓場と神田も何かあるかもしれません。まあありますね。
    べったーに置いたのを持ってきました。

    #弓場王
    kingOfTheBowField
    #水王
    waterKing
    #かんゆば
    driedBeancurd

    夢の途中ぼくはいつかあなたの元を離れると思います。だから、もし、いつか作るぼくの隊が、あなたの隊をランク戦で抜くことが出来たら、ぼくの願いをひとつだけ叶えて貰えますか。弓場先輩しか叶えられないお願いです。それは……。
     そんなやりとりをしたのは、王子が弓場隊に入隊した直後のこと。まだ、弓場が六頴館の制服に袖を通して、王子が中学の制服を身につけていた春のこと。


    「あなたは最愛の腹心である神田を手放した上に、神田と同じ隊員だったぼくと寝るんだ。とてつもない罪悪感で死にそうなくらいじゃないんですか。後悔してませんか、あんな約束するんじゃなかったって」
    「ふざけんなよ、王子」
     シティホテルの一室で、熱いシャワーに当たって色白の肌を上気の色に染めて見上げる王子を、ベッドにむっつりとした顔で座り込んだ弓場がねめつける。
    「俺は一度てめえで決めた約束は裏切らねェーよ。今さらイモ引いてられっか」
     だがな、王子、と弓場はその王子の腕を引いて、ベッドへと押し込かす。タオルで拭いてきたものの、濡れてしっとりとした王子の栗色の髪が柔らかな照明を受けて淡く光る。
    「そんな理由で抱かれて嬉しいか、ァ!?」
    「ええ、嬉しいです。それでもあなたと一度でもセックスできるなら。ぼくのプライドとか見栄とか、そんなものはどうでも」
    「王子、おまえ水上とデキてんじゃねェのかよ」
     知ってたんですか、とくすくすと小鳥のように王子の喉が笑みを囀る。
    「そこまで節穴だと思ってたか」
    「いいえ。でもそれはそれ、これはこれです。ぼくはみずかみんぐのことが好きです。でもぼくはずっとあなたを手に入れたかったんです」
     その言葉に弓場は眉をひそめる。その不愉快さごと掬い取るように、王子の唇が眉間に触れる。
    「……そんなの絶対に無理だと思ってたから」
    「気がしれねェ」
     中射程であるはずの銃手のくせに、近接距離で身を晒しながら激しく交戦する、矛盾を携えた拳銃使いの指。王子がまだ若葉の頃、焦がれ、憧れ、何度も救われたその指をまるで飴を含むようにうっとりと王子は唇に取り込む。爪のきわを、指の腹を、ねっとりと舐め回す熱にか、弓場の背が僅かに波打つのを、回した手に感じて、かつて部下だった男は緩く目を細めた。
    「だって望みは叶わなければ、ずっと願っていられるじゃないですか」
    「……」
    「手に入れられないものほど、輝かしく、愛おしいものはないと思うんですよ、ぼくは」
    「だったらお前にとっての水上の『価値』はなんだ?」
    「みずかみんぐだって、手になんて入ってませんよ。彼の心の一部は、奨励会を辞めたあの日からずっと盤上に置き去りのままで。穴だらけでぼろぼろで、でもそんな心臓を色々な理由で矢倉みたいに何とか囲って、こんな物騒なだけで思い入れも何もない街でやり過ごしてる。だから、ぼくは彼が好きなんです」
    「本当に気が知れねェよ」
    「はい、それでいいんです。ぼくは、それで。弓場さんにとって理解しがたい化け物で」
     王子は弓場の胸板に手をついて、少しだけ距離を取らせて、にっこりと愛らしく可憐に微笑する。きっとこの手にかかる重みはトリオンの身体では感じられなかったものだ。生身で感じるこころと、トリオン体で感じるこころは等しいのに不思議だ。
     自分たちは生身よりも長く、長く、偽物の身体で過ごしているのに、こころだけはどんどん育まれて、形作られていく。
    「それでも弓場さんにとってぼくは可愛い元隊員でしょう」
     クソ、と弓場は大きく毒づいて、それでも王子を引き寄せた。
     義理堅くて、逃げることを知らないあなたにつけいるのなんて、楽なことなんですよ。
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    palco_WT

    DOODLE合コンの頭数合わせに呼ばれてうっかりした弓場ちゃんが神田に回収されるの巻。
    (https://twitter.com/palco87/status/1331039561263181824)
    合鍵を貰っておいて良かった、と居酒屋から何とかか彼の部屋まで連れて帰ってきた弓場をベッドに横たえて、水やタオル、万が一嘔吐した時のことを考えてバケツと新聞紙をその傍らに用意する。
    「すまねェ」
     一度も聞いたことのない弱々しい弓場の声に、神田は眉をひそめながらもベッドの近くに引き寄せた椅子に腰かける。
    「大丈夫ですか?」
    「こんなことなら手ェすべったフリでもしてグラスを倒すほうが利巧だったかもしんねェな」
    「?」
     意味が分からずきょとんとした顔の神田に、店に迷惑かけるしなァと、弓場は言い足し、
    「俺の隣に座ってた女が化粧直しに立った隙に、反対側に座ってた奴が一服盛った気配があってな」
    「は!?」
     話には聞いたことはあるがそれは犯罪では???と神田はまなこが落ちそうなくらいに目を剥いた。
    「胸倉掴んで鼻骨のひとつもへし折ってやっても良かったんだが、幹事の知り合いの諏訪さんたちの顔ォ潰すわけにも行かねェーからな。間違ったフリして俺が呑んじまえばいいやと思って、一気に空けちまったんだが、睡眠導入剤ってやつだっけ? 結構効くもんだな。未成年だってェーのは言ってあったから酒呑むわけにはいかね 966

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    MAIKING今宵星がきみに降りるから

    高三弓場ちゃ、神田や蔵内、王子たちが二年のまだ旧弓場隊の頃のクリスマス前後。
    弓場が大学進学が内定したあたりで王子は独立する予定。六頴館だからもう決まってるのかな……
    六頴館高校から本部へと、部下の神田と蔵内を共に向かう道の途中、弓場がふと足を止めたのは青果店の前だった。
    「神田、蔵内、おまえら、リンゴ好きか?」
    「……? 好きですよ」
    「ええ。王子がたまに淹れてくれるアップルティーを楽しみにするくらいには」
    「そうか。なら、キャラメリゼして……」
     何事か小さくつぶやいた弓場は少し考えてから、一見梨にも見えそうな薄い黄色の皮の林檎を幾つか買い求めた。
    「煮るんなら紅玉みてェな酸いリンゴのほうが味が際立つんだが、甘みが強いならキャラメルソースにも負けねェだろ」
     星の金貨、と書かれた林檎を掌に納めて、弓場は透明なレンズの奥の天鵞絨《ベルベット》のようなしっとりした夜の色でありながら品の良い光沢を備えた瞳を細めた。
    「星の金貨……? っていうと昔のドラマの?」
    「関係ねェよ。見た目が金貨みたいな淡い色だからそう名付けたって話だ。品種名はあおり15だったかな」
    「弓場さん、農学部にでも行くんですか」
    「ねえだろ、三大《サンダイ》には」
     何言ってんだと弓場は笑いかけた蔵内にひとつ手渡し、もうひとつには軽くキスをしてから、神田へと放り投げた。お手玉をするよ 720

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    palco_WT

    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983