見てはいけないユメを見た「鋭心先輩って、キスシーン撮ったことありますか? 仕事で」
興味深げにパソコンに繋がれた音楽機材を覗き込んでいた鋭心に、意を決して、何気なくを装って聞けば、その時々直視出来なくなるほどに整いすぎた顔が上げられた。来客に椅子を譲らないのも悪いと思って腰掛けていたベッドから見上げた鋭心の顔は、二つしか変わらないのに随分と大人に見えた。
「ある」
その言葉に、改めて忙しくなったものだと思った。デビューしてすぐの頃はそもそもソロの仕事はほとんどなかったし、ユニットメンバーの仕事は全部お互いに確認し合っていた。今はもう、他でもない彼の出演作なのに見ていないものがあるぐらい、全員仕事がそれなりにしっかり詰まっているのだ。そのシーンを、見た覚えがないほどに。
5983