「ドラルク!!」
「はい、お父様。本当にいらしたんですね」
「酷い目に遭わされたな。可哀想に。ポールはこの奥か? このドラウスが懇々と説教を」
「お父様」
「……ドラルク?」
「私はね、楽しみにしていたんですよ」
「私もお前に会うのはいつも楽しみだよ」
「あの子、私の作るバナナケーキが大好物でしてね」
「良い顔をするんです。一口、また一口と食べるたび、それはそれは幸せそうな顔をして」
「私はその顔を、彼の真向かい。特等席で見守るのが本当に……本当に楽しみで──……」
「……パパ、急用を思い出したから帰るね」
「そうですか」
「今度お詫びになにか」
「結構です。さあ、帰った帰った。よし、今ならまだ間に合」
「さっきは、その。なんか悪かったな」
「……もう、食べたの?」
「へ? あ、ああ。親父さん来てるなら、待たせるのも悪いと思ってさ。急いで食った」
「そう」
「──そう……」