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    はなとゆめ

    @flowerlvsdreams
    支部でハピエン小説書いてます。
    プロフ絵は拙作の1シーンをgomaさんに描いていただいたものです。

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    はなとゆめ

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    鬼殺隊時代さねぎゆ。
    ご都合血鬼術により猫化した義勇を預かる事になった実弥だが?

    #さねぎゆ
    #血鬼術

    冨岡が隊士を庇ってけったいな血気術にかかったせいで猫化したとか宇髄が言うから、最初は冗談だと思って「ふざけんなよ」と笑い飛ばした。
    「ほんとだぜ」と宇髄は真顔で言った後に、「嘘だと思うなら見に行ってみろよ」とニヤリと笑う。いずれにしても厄介な事に巻き込まれやがって、と舌打ちをした。戦力が一人足りねェだけで任務に影響するってのに。
    俺がその後に蝶屋敷に行ったのは薬を貰いに行く用事があったからで、断じて冨岡の姿に興味が湧いたからではない。
    「あ、不死川さん丁度いい所に」
    蝶屋敷の玄関を上がった途端、胡蝶が診察室から顔を出して手招きしている。「何だ」俺がそこに向かうと、診察室にある寝台の上に冨岡が座っていた。見たところ普段と全く変わらない姿に、なぜかどこかガッカリした自分に混乱する。
    「何が丁度いいんだ」
    言いながら冨岡をチラリと見てみたが、冨岡は普段通り無表情のまま俺をじっと見てから興味が無さそうに目を逸らしただけだった。
    「今、冨岡さんは猫です」胡蝶が笑うでもなく真顔で俺に言うから眉間に皺を寄せる。「はァ?どう見てもいつも通りだろ」もう一度冨岡の姿を頭から爪先まで見ると、確かに髪の間に一対の真っ黒な猫の耳が隠れていた。
    「体の構造的に毛繕いこそ出来ませんが、意識は完全に猫です。まず話せませんし」
    「そりゃ嫌味言われなくて済むから好都合だがなァ」
    俺の言葉を聞いた胡蝶が冨岡を見ると、冨岡は黙ったまま表情を変えない。
    「ほんとなのかよ、それ」俺が冨岡をじっと見ていると、冨岡の方もしばらくこちらを見た後にまたスッと視線を外した。
    「でェ?治んだろ?すぐ」
    「だと思います。せいぜい二、三日くらいでしょうか。日向ぼっこを沢山させるのがいいでしょうね。猫ですし」胡蝶がニコリと笑う。
    「なんだよ、その言い方ァ」
    なんとなく不穏な空気を感じて俺が警戒すると、胡蝶は「今、蝶屋敷は隊士を沢山抱えていて手が回りません。かと言って猫の冨岡さんは料理なんかもできませんし、食器も使えないみたいです。隠に世話を頼むのは柱の沽券に関わりませんか?不死川さん」
    「悲鳴嶼さんとか、猫好きなんだろォ。他に当たれる柱はいねェのかよ」
    「今夜非番なのは不死川さんです」
    ニッコリと笑う胡蝶の目の奥が全然笑っていないから、否という返事が受け付けられないのは良くわかった。不本意だったが、こうして俺は自分の屋敷に冨岡を連れ帰った。確かに柱の威厳は守らなくてはならない。

    うちに着くと、俺は冨岡を居間に残してとりあえず風呂を沸かしに行った。戻ってきたら冨岡の姿が見えず一瞬焦って探せば、冨岡は縁側で気持ちよさそうに横になっている。初めてまともに上がったうちの縁側に横になる姿がなんだかあまりに非現実的で可笑しくて、荒唐無稽な夢を見ているようだった。手で一生懸命髪を触っているのは、やつなりに毛繕いしているつもりなのか。
    「なぁ、風呂入れば」俺がぶっきらぼうに言うと、冨岡は途端に眉を顰めた。
    「ほら、風呂、わかるだろ?」俺が腕を引っ張ると、冨岡は振りほどいてまた寝ようとする。
    「てめェ、そのまんまでうちの布団には寝かせねェからなァ」
    俺が凄むと、冨岡は猫耳を伏せて俺を上目遣いに盗み見る。思わず笑ってしまった。
    「とにかく行くぞ」
    俺は冨岡の腕を引っ張り上げ、抵抗するのを無理やり風呂場まで連れて行った。嫌がる冨岡の力は凄まじく、風呂場に着いた時には互いにはぁはぁと息切れをしていた。

    俺が風呂場の扉を開けて中を見せた途端、冨岡は脱衣所の隅に行くと壁に向き、膝を抱えて座った。あくまでも抵抗する気らしい。
    「そんなに風呂入りたくねェのか」俺が聞くと、黙って猫耳を後ろに伏せた。可笑しくて笑いがこみあげる。本能が水を嫌がるんだろう。
    「まあ、一日くらい入んなくても死なねェか」
    俺は諦め、また冨岡を連れて縁側に行った。
    「好きなだけ日向ぼっこしてろ」
    俺が言うと、冨岡は満足そうに横になって目を閉じた。その穏やかな寝顔を見て、普段偉そうに俺を見下してるやつが随分可愛らしくなったもんだなと苦笑いをする。
    冨岡が寝ている間に夕飯を作る。「そういえばあいつ何食うんだ?さすがに猫まんまとかじゃねェよな?」
    わからないのでとりあえず魚にしておけばいいだろうと、鮭大根を作った。
    そろそろいい味がついたかな、という頃に冨岡が厨に現れた。「あ?どうした?」
    冨岡がくんくんと匂いを嗅いでいるから、「腹減ったのか?」と言うと、近くに来て鍋を覗き、何を思ったか突然頭を俺の肩にすり寄せてきた。
    「?!」驚いて菜箸を落とす。「ななな、なんだよ?!」 
    俺が言うと、冨岡はうっとりした目で喉をゴロゴロと言わせていた。
    「…まさか、喜んでんのか?」
    冨岡は目を細めてまた頭を俺の肩に擦り付けるように甘えた。本当にこれ完全に猫じゃねェか、と今更ながら呆れつつ「好きなのか?これ。じゃあ、良かったじゃねェか」と言い、冨岡の体を離した。
    「ほら、まだ少し陽があるからお前はまだ縁側にいろ」と連れて行く。
    縁側に行儀よく座って外を飛ぶ蝶や鳥を興味深そうに眺めてキョロキョロしている姿は、不本意ながら少し可愛いと思ってしまった。冨岡のくせに。

    飯の時間になって、配膳したら素直に目を輝かせる。冨岡が躊躇なく皿に向かって顔をつけようとしたから慌てて腕で胸を押した。
    「おいおい、ちょっと待て、箸使えねェのか」
    俺が箸を卓の上でずいと冨岡の前に滑らすと、冨岡は嬉しそうにそれをちょこちょこと手の先でつついて床に落とす。遊んでやがる…。
    「…あー」俺が片手で頭を抱え「お前なんでこんなわけわかんねェ血鬼術かかってんだよ」と呻いたが、冨岡はただじっと俺のことを眺めているだけだった。
    その邪気のない顔に妙に同情を覚えてしまう。こいつだって意識があれば俺に世話されるなんてのは不本意極まりないに違いない。
    「仕方ねェな、ほら」
    俺が箸で大根を取って口に運ぶと、冨岡は嬉しそうに目を輝かせて口を開けた。その口がまたやたらと小さい。
    「あ?これじゃ入んねェか」
    俺が一度大根を皿に戻して箸で半分の大きさに切るのを、冨岡がじっと見つめている。もう一度口に運んでやると、唇に触れた途端、ビクッとして身をそらした。
    「…?ああ、猫舌か、悪ィ。ちょっと待ってろ」
    俺はフゥフゥと大根を吹き、冷ましてからもう一度差し出す。冨岡はそれをゆっくり口に含むと、俺が一度も見たことのない明るい笑顔を見せた。いつもは深い海みたいに底知れぬ雰囲気をたたえた目が三日月のように細まりきらきらして、口元は柔らかく緩む。
    「え?!」
    あまりに驚いて思わず声が出てしまった。
    こいつ、笑うのか。
    にわかには信じられず、もう一回箸でさっきの大根の残り半分をつまみ上げて吹き、冨岡の口元に持って行くとやはり幸せそうに顔を綻ばせる。思わず、ふ、と俺の口から笑いが漏れた。
    「お前ずっと猫でいれば」

    そのあとも冨岡の口にあう大きさにした鮭や白米を少しずつ食べさせ、味噌汁は完全に冷めるのをまってから飲ませた。
    冨岡に全部食べさせた後に俺が自分の分を食べている間、冨岡は少し卓から離れた場所に移動して満足そうに手で髪を撫でている。
    「毛繕いしてんのか」
    やたらと入念にそうするその姿に、よほど美味かったらしいと可笑しくなって、それを眺めながら食事を終えた。
    夜は自分の部屋から襖一つ隔てた部屋に冨岡の布団を敷き、寝巻きを渡す。冨岡は隊服のままじっと寝巻きを見つめていた。
    「まさか、着替え方分かんねェわけじゃないよな?」俺が恐る恐る聞くと、冨岡は黙ったまま俺を見た。「はぁ…」俺がため息をつくと冨岡は心なしか悲しそうな目をした。
    「そんな目で見んじゃねェよ、全く…」俺は元来動物に弱かった。
    冨岡の羽織を脱がせ、隊服のボタンを一つ一つ外す。何だって俺がこんな目に…と非常に気まずく、また冨岡が大人しくされるがままな事がますますこの状況の異常さを感じさせた。上着を脱がせ、シャツのボタンを外し始めると、次第にあらわになってくる冨岡のなめらかそうな白い肌に別の意味で落ち着かない気分になる。冨岡は相変わらずじいっと俺の手元を見つめていた。あまりに気まずくて、「なんか悪ィ事してるような気分になる」と苦笑いするも、冨岡は何の反応もしない。心を無にしてバサリと冨岡のシャツを脱がせると、その引き締まった上半身になぜか胸が高鳴る。自分で自分に「こいつは冨岡!」と言い聞かせ、無心で袴のベルトを外す。いくら男同士とは言え、流石に直視出来ずに目を泳がせながら袴や脚絆を脱がせ、さっさと寝巻きを着せて帯をぎゅうと締めるとようやくホッとした。なぜか若干自分の呼吸が荒い。

    「よし、寝ろ!じゃあな!」
    俺は冨岡を部屋に放り込み、襖を閉めた。はぁ、とため息をつきながら風呂に入る。疲れていたが、長時間あの冨岡を放っておくのは心配だからさっさと上がり、寝巻きに着替えて自室に入る。隣の部屋が静かだから、もう寝たかと思い自分も布団に潜り込むと灯を消した。
    しばらくして、カリカリ、と襖を掻くような音がしたと思ったら、冨岡の手が少し開いたその隙間にずぼ、と突っ込まれた。「はぁ?!」慌てて上半身を起こしてそちらを見ていると、冨岡は襖の隙間からスッと身を滑り込ませ、俺の布団の横にやってきた。思わず固まったまま冨岡を見つめる。なぜか胸が激しく暴れた。
    「な、何だよ」俺が冨岡を見つめていると、やつはおもむろに俺の足元に腰を下ろして、俺の足の隣で体を丸めるようにして横になった。
    「…!!?」
    自分の掛け布団の上に冨岡が満足げに丸くなって、俺の足を枕に目を閉じるこの異様な光景を、俺は成す術もなく呆然と見つめた。静かな部屋に冨岡の幸せそうな、ゴロゴロと喉を鳴らす音が響く。

    「と、冨岡…さすがにそれはダメだ…色々ダメだ」
    俺は起き上がって、隣の部屋から冨岡の布団を引っ張ってきた。「よし、一人で眠れねェなら、ここで寝ろ」
    自分の布団の横に並べた冨岡用の布団を指差したが、冨岡はチラと見ただけで全く興味が無さそうに俺の掛け布団の上で丸まっている。
    「分かった、お前はそこで寝てろ。俺がこっちに行く」俺が冨岡の布団に入ると、やつは顔だけあげてじっとこちらを見つめていた。
    「じゃあまた明日ァ!」俺は冨岡に背中を向けて布団をかぶったが、後ろからずっと視線を感じる。おそるおそる後ろを振り返ると、冨岡はゆっくり移動して、俺の足元に行くとそこで丸くなってそっと目を閉じた。
    「ああああ!クソがァ!」俺が掛け布団を持ち上げ「風邪ひくから入れェ」とやけになって叫ぶと、冨岡は目を輝かせて、俺の布団の中をじっと見つめている。
    「気が変わんねェうちにさっさとしろ」俺が言うと、冨岡は嬉しそうに俺の布団に入り、ゴロゴロと喉を鳴らした。思わず苦笑が漏れる。
    「あったけェかよ」
    冨岡が俺と一緒の布団の中でうとうとと目をしばたたかせるのを間近で見ていたら、何だか胸が妙な具合に高鳴った。冨岡はゴロゴロ言いながらあっという間に自分の手の甲を枕にしてすやすやと眠りに落ちた。不覚にもその姿から目が離せない。
    冨岡を可愛いと思ってしまった。

    こいつは冨岡だ、まともになりさえすれば俺の事を嫌ってるんだ、と念じながらギュッと目を閉じる。しばらくはまんじりともしなかったが、いつの間にか俺は眠って夢を見ていた。冨岡にそっくりな黒い長い毛をした猫がゴロゴロ言いながら俺に体をすり寄せてくる。「可愛いなァ」俺が額や顎の下を撫でると、猫は夢中になって体をすり寄せてきた。「よしよし、いい子だ」俺が背中を撫でてから尻尾の付け根を掻いてやると、「ニャ、ニャ」と気持ちよさそうに尻尾を持ち上げて小さな声を上げる。
    猫は自分でここを掻けないから、掻いてやると嬉しそうに鳴くのを知っている。
    「よしよし」と笑いかけながら掻いてやっていると、ふとその声が「ん」という切なげな人間の声に聞こえた。夢から覚めてうっすら目を開けると、俺の手は冨岡の腰のあたりを撫でていて、冨岡は俺にぴたりと身を寄せ、苦しげに眉を寄せて気持ち良さそうに背中を反らせていた。
    「あ!?」
    慌てて手を離すと、冨岡はうっすら目を開けて上気したような顔で俺を見つめた。その壮絶な色気に俺の心臓がドクンと音を立てる。

    これはまずい。

    頭が追いつく前に体が本能的に危険を察知し、飛びすさるように冨岡から離れたが、冨岡はそんな俺の気も知らずにまた無邪気に体を寄せてきた。おまけに、もっとして欲しいとねだるように頭を俺の胸に擦り寄せてゴロゴロと言っている。
    「これは猫、猫…」
    自分に言い聞かせながらも、好奇心に負けた俺がおずおずと手をもう一度冨岡の背中に回して腰の辺りをさすってやると、冨岡はまた背を反らせて「あ、ん、ん」と切なげに目を閉じて鳴いた。
    「だ、だめだ、これは」
    独り言を呟きながら、自分の息が荒くなっているのが分かると同時に腹の下にはっきりと疼きを感じ、焦って冨岡から体を離した。
    冨岡はとろんとした目で俺を見ると、また眠くなったらしく手を枕にして長い睫毛を伏せ、スゥスゥと穏やかな寝息を立て始める。
    自分の胸に手を当てて息を整えようとしたが、心臓は落ち着くどころかひたすらドクンドクンと激しく胸を押し上げていた。
    俺に体を寄せて穏やかな顔をして眠る冨岡を見つめながら、自分に湧きあがった感情に戸惑いつつ一夜を明かした。

    ようやくうつらうつらし出した頃、窓から朝日が差し込んだ。眩しさに唸りながら目を開けると、冨岡はまだ俺の胸に身を寄せて寝ていた。長い髪が乱れて顔にかかっているのが鬱陶しそうに見えて、無意識に額からどけてやる。普段は隠れている額が見えると、少しだけ幼く見えてまた心臓が暴れ出した。
    こいつの容姿の美しさには初めて見た時から釘付けになったが、俺に向ける冷たい視線に気付いてからは自分を見下しているのかと思って悔しくなり、なるべく見ないようにしていた。
    しかしこんなふうに間近にいるとどう本能に抗おうとしても目が離せず、ついその美しさに見惚れてしまう。冨岡に人間としての意識が無いらしいのをいいことに、猫の毛並みを撫でるように髪を撫でてみると、冨岡はうっすら目を開けて嬉しそうに微笑みゴロゴロと喉を鳴らした。
    「…お前可愛いなァ」
    つい呟きが漏れる。冨岡は気持ち良さそうに目を細めて俺の手のひらに頭を擦り付けるようにした。
    「昨日、髪梳かしてやればよかったな」
    俺はふと思いつき、布団に櫛を持ってきた。冨岡は俺の動きをじっと見つめている。俺が髪紐をほどいて髪に櫛を通そうとしたら一瞬びっくりしたような顔をしたが、次第に気持ちよさそうに目を閉じて喉を鳴らす。
    「いい子だ。よし、これでいいだろォ。今日も、ちゃんと日向ぼっこしてろよ」
    俺はそう言いながら、髪をまた元通りに結ってやった。
    その後洗面所に連れて行くと、嫌がる冨岡を強引に押さえつけて濡らした手拭いで顔を拭く。拭き終わった途端にあいつが一目散に別の部屋に逃げて行くのを見て俺は思わずゲラゲラと声を上げて笑った。鬼も恐れる天下の水柱はよほど水が嫌いらしい。

    そのあとは俺が近付くとビクビクしていたが、朝飯の鯵の開きを見せてやると、また喉を鳴らしながら俺の肩にすり寄った。
    「よしよし、ちょっと待ってなァ」
    また小さくして冨岡の口に運んでやると、嬉しそうに全部食べ、縁側に移動する。ふとそこに俺が脱いだままの綿入れがあるのを見つけ、冨岡はスンスンとその匂いをかぐと嬉しそうにその綿入れに顔をうずめるようにして丸くなった。なんだか無性に愛らしくて胸がきゅうとなる。
    「なあ。お前、俺のこと嫌いなんじゃねェのかよ」
    そんな俺の言葉をよそに、冨岡は俺の綿入の上に両手をのせ、踏み踏みと足踏みをするような仕草をしてからその上に体に寝そべり、目を閉じると幸せそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
    「その音、最初お前から聞こえんの気味悪かったけど、悪くねェな」
    俺はそう言いながら近づいて冨岡の髪を撫でてやった。
    洗濯するものを取りに行って戻ってきたら冨岡は朝日に照らされながらもうスゥスゥと穏やかな寝息を立てている。
    「いい子だな」
    起こさないようにそう囁いて髪を撫でながら、またその惚れ惚れするような寝顔にしばらく見惚れた。

    猫がほぼ一日中寝ているというのは知っているが、実際に冨岡はひたすら寝ていた。時々目を覚まして伸びをするが、また体勢を変えて寝る。平和そのものの姿に、なんだか心が安らかになる気がした。
    昼頃に胡蝶の鴉が飛んできたのでついていた手紙を開いてみれば、様子はどうかと問うと共に「明日あたりにはさすがに術も解けると思います。今夜の任務は私が代わりますから、不死川さんは引き続き面倒を見て頂き、明日の昼間に様子を見せに私の屋敷に連れてきてください」という事だった。蝶屋敷には一般隊士がうろついているし、冨岡のこんな姿を見せるのは絶対に避けたい。俺には断る理由がなかった。
    心のどこかに、自分に懐いている冨岡をもう少しそばに置いておきたい、という思いがあるのを自分で気づかぬふりする。
    「承知したと伝えろォ」俺が言うと、胡蝶の鴉は静かに庭から飛び立った。

    昼飯に昨日の残りの鮭大根を出してやれば、嬉しそうに寄ってきて全部たいらげ、また髪を撫でつけた後に俺の綿入れの上で丸くなる。日がな一日そんなことをしていたら、夕方陽が落ちる頃には冨岡の様子が少しだけ変わっていた。
    相変わらず口は利かないし耳もついているが、だいぶ人間らしい感覚が戻って来たのか俺が貸した着流しの襟元がはだけると直したりしている。でも、俺がそばを通るとひらひらとする着物の裾にじゃれつくように手を伸ばしたりもするし、髪を撫でればゴロゴロと喉を鳴らすから、まだ感性は猫らしい。
    最初は面倒なことに巻き込みやがってとうんざりしていたはずが、冨岡が人間に戻ってしまう事がなんだか寂しいとさえ感じ始めていた。俺に懐く冨岡は正直言って可愛かったし、情が湧いてくる。これはあくまでも猫の冨岡に対しての情だと自分に言い聞かせるも、髪を撫でてやるときの冨岡の幸せそうな目を見るときに感じる気持ちが、もはや情なんかじゃないことは自分でもじゅうぶん気付いていた。
    今までずっと必死で目を逸らしてきたが、俺は冨岡が猫になる前からずっと惹かれていた。容姿だけでなく、その強さはもちろん、それと裏腹に少し憂いを帯びた姿が時々たまらなく脆く見えて抱きしめたくなったことが何度もあった。そんな自分の気持ちを押し殺して、「こいつは俺を嫌いなんだ」と自分に言い聞かせてきたが、こうしてなんのてらいもなく素直に甘えられたらその思いすら決壊する。
    ついため息が出た。この状態だと、明日には間違いなく冨岡は人間に戻るだろう。

    その夜冨岡を風呂場に連れて行き、「今日はさすがに風呂に入れ」と言うとあいつはまた耳を伏せて後ろを向いた。そのしょんぼりした情けない姿に思わず吹き出してしまう。戦いの場ではあんなに怖いものなしなのに水をとにかく怖がる姿が可笑しくてたまらない。
    「なあ、入ってくれ。もう自分で洗えるくらい手も使えるだろ?」
    俺がなるべく優しい声で言うと、冨岡は耳を後ろに伏せたままゆっくり立ち上がり、着流しを脱ぎ始めた。
    「ま、待て待て、俺は出てくから。自分で洗えるよな?」
    俺が聞くと、冨岡は浮かない顔で俺を見上げる。可愛くて思わず笑ってしまった。
    「なんか頼りねェなァ」
    そうは言ったものの、流石に体を洗ってやるわけにもいかないから冨岡を残して脱衣所の扉を閉める。扉のすぐ外に立っていると、しばらくはシンとしていたが、突然ざばざばと激しく湯を流す音が聞こえたから覚悟を決めたらしいと分かった。思わず、ふ、と吹き出す。腹を括りさえすれば豪快な男だ。

    しばらくざばざばやっていたかと思うと、それもやんで風呂場の扉が開いた音がした。そこに置いておいた新品の下帯と寝巻に気付くだろうかと思いつつ、しばらく外で待っていると脱衣所の扉が開いた。
    「うわ!」
    出てきたのは髪からぼたぼたと水をたらしながらびっしょりの寝巻を着ている冨岡だった。
    あまりの姿に俺は声を上げて笑う。
    「てめェ、なんも拭かずに着やがったな」
    とりあえず手拭いで髪を拭いてやる。冨岡はされるがままだった。髪が拭けたところで、水が垂れてこないように団子のようにくくり、新しい寝巻を出して渡してやる。最初に着ていた浴衣が水をあらかた吸ってくれたから、体は拭かなくてもいいだろう。
    「よし、いい子だ。俺は布団敷いてくるから、新しい方に着替えておけよ」

    冨岡を残して自室に戻り、最初は昨日のように隣の部屋に冨岡の布団を敷いたものの、悩んだ末やはり布団を自分の部屋に移動させ並べる。
    脱衣所から出て来たあいつはしばらく布団をじっと見つめていた。俺が自分の布団に入ると、冨岡はまた俺の足元に丸くなろうとする。
    「…ほら」
    俺が布団を持ち上げると、冨岡は昨日とは少し違い、若干遠慮がちに布団の中に入って来た。そしてまた自分の手の甲を枕にして横になり、じっと上目遣いで俺を見上げる。その瞳をみていると心臓が激しく高鳴り、喉が詰まったように胸が苦しくなる。目を離せずに俺が見つめていると、冨岡のほうですっと目を逸らした。その瞬間、少しだけ頬が赤く染まったように見えたのは俺がそういう目で見ているからだろう。
    「お休み」俺は小さな声でそうつぶやくと、冨岡の髪を撫でた。冨岡はもう一度俺をじっと見つめたあとに目を閉じた。瞼にうっすら血管が浮いて見えるほど白く繊細な肌に触れたくてたまらない。
    一緒の布団に寝たいと思ったのは俺だが、自分で自分の首を絞めたことは間違いない。自分の目と鼻の先にある冨岡の髪から石鹸のいい匂いが漂っているというのに、俺はその色っぽい寝姿を指を咥えて見ているしか出来ないなんてと唇をかみしめる。
    「そんな可愛い顔して寝んなよなァ…」
    俺はため息をつきながら呟き、何とか眠れることを祈りつつ目を閉じた。

    夜中に冨岡がごそごそ、と動いたのを感じて自分がいつのまにか眠っていたことに気付いた。
    「どしたァ?」俺が髪を撫でると、冨岡は体をびくっとさせて俺を見た。
    「ごめん、驚かせたな」俺がそう言いながら髪を撫で続けると、俺を見上げながら冨岡の頬がどんどん赤く染まっていくのが分かった。その様子を見て俺の心臓が跳ねる。
    「なあ…」
    俺は自分の心臓が今までになく暴れるのを感じながら、落ち着くためにごくりと息をのんだ。
    「なんでゴロゴロ言わねェの」
    俺が囁くと、冨岡は困ったように眉を下げて恥ずかしそうに目を逸らした。髪を撫でていた指を冨岡の頬に滑らすと、冨岡はそれを自分の手でそっとつかんで切なげに俺を見た。
    俺がどきどきしながらゆっくり顔を近付けると、冨岡は頬を赤くしたまま目を閉じる。

    俺は冨岡と口づけをした。

    薄く冷たそうだと思っていたその唇は想像していたよりずっと柔らかく温かくて驚く。俺が角度を変えようとして唇を離したら、冨岡が離れるのを嫌がって追いかけるように自分から唇を押し付けてきたから途端に興奮が増した。
    さりげなく冨岡の頭に触ってみると、もうそこに猫の耳はない。
    やはり血鬼術は解けていると思う。
    その途端、俺は自分の胸が幸せに満ちているのを感じた。

    可愛い。
    冨岡が可愛くて堪らなくて、思い切り抱きしめた。
    「冨岡」俺が呼ぶと、冨岡は体を震わせた。
    自分の胸に顔をうずめるようにしている冨岡を覗き込むと、冨岡は一瞬動揺したように目をパチパチとしばたたかせ、それから俺を困ったような目で見上げる。その目は熱があるみたいに潤んで、頬はりんごみたいに赤い。
    冨岡はまたすぐに恥ずかしそうに顔を俺の胸に隠した。血鬼術が解けていることに、俺は気付かないふりをすべきなんだろうか。
    口付けをしながら冨岡の背中に手を滑らせる。前に触れた腰の辺りで一旦止まったあとに、そっとそのまま尻の方まで撫でていくと冨岡が「あ、」と眉間に皺を寄せる。俺はそれに一気に煽られ、冨岡の着物の裾を割って腿を掴み、ぐっと自分のほうに寄せると俺の腿を挟むように乗せた。
    自分自身の高まりは既にあからさまに分かるくらいだったが、冨岡は果たして俺を相手に興奮したりするんだろうか…と少し緊張しながら口づけを続ける。
    冨岡は息を弾ませ、時々鼻に抜けるようないじらしい吐息を漏らした。そのときふと、自分の腿に硬いものが当たったのが分かる。その途端途轍もない安堵を感じるとともに、ますます興奮が増した。自分の屹立をそこに押し付けるようにすると、冨岡は急に息を荒くして俺にしがみついた。
    冨岡の首元に口付けながら寝巻きの帯を解くと、冨岡の体があらわになる。昨日ちらりと見えた胸元どころか、全身が目に飛び込んできた。下帯を身につけていないのは、さっき風呂から上がった時はまだ猫だったせいでうまく巻けなかったからだろうが、その姿にたまらなく興奮した。冨岡の体の中心は既にじゅうぶんに勃ち上がっている。

    気持ちはふわふわとして弾むようだったが、ここで冨岡を好きだと口にしていいのか迷った。冨岡が何も話さないのは、こうなっているのは血鬼術のせいだと言い訳にしたいからではないか。そう思うと、複雑な気持ちだった。冨岡のために、流れでこうなっただけという体を保つべきなんだろうか。俺の方は明らかに愛着を感じてしまっているのに。
    俺が冨岡の屹立に直に触れると、冨岡は体をビクッと震わせ俺の肩に顔を伏せた。手を動かすと、普段は取り澄ましている冨岡の口から甘い喘ぎが漏れるのがたまらなくいやらしく感じて思わず夢中になる。口付けを交わしながらしばらく手を動かしていると、冨岡が俺の腕を掴む手に一層力が入った。そしてすぐに体を震わせた途端、俺の腹に冨岡の精液が飛ぶ。自分の手で冨岡が…と思ったら、胸が興奮と歓喜にわいた。
    「気持ち良かったか?」
    思わず口にすると、冨岡は恥ずかしそうに赤くなりながら肩で息をしていた。可愛くて堪らず、唇にも頬にも耳にも、小さな音を立てて何度も口付ける。今見た光景や、冨岡の目元が赤く潤んで色香を放っているのに思い切りそそられ、俺は自分の腹に飛んだ白濁を指で掬い取ると冨岡の後孔に塗りつけ、指をそっと差し入れた。途端に冨岡が焦ったように体を反らせ反射的に逃げようとする。
    「ごめんなァ、ちょっと我慢してくれ」と抱きしめて、ちゅ、と唇に口付けると、冨岡が必死で息を整えようとしたのが分かった。指を一本ずつ増やす度、冨岡は冷や汗を額に滲ませながら俺にしがみつく。おかしな感じがするに違いないが、文句一つ言わずに耐える様が健気で、俺は何度も冨岡の額や頬に口付けた。
    「いい子だな」
    つい猫の時の癖が出て自分で可笑しくなる。
    「だいぶ柔らかくなったと思う。痛かったらちゃんと嫌がれよ」
    俺が自身をそこにあてがうと、冨岡は不安げに俺に両手を伸ばした。愛おしさが湧き上がり、思わず微笑んで抱きしめ、出来る限り優しく口付けをした。好きだ、と言いかけてやはり躊躇する。

    ゆっくり自分の屹立をそこに埋めていくと、冨岡はぎゅっと目を瞑った。
    「力抜け、俺を見ろ」
    俺が冨岡の頬を撫でると、冨岡は恐る恐る目を開けて俺を見上げた。額に滲む汗と、不安げに潤む目を見てもう一度安心させるように冨岡に口付ける。
    冨岡の温かい胎内の気持ち良さに、つい思い切り自身を奥まで一気に押し入れたくなるのに耐えながらゆっくり進めていく。冨岡が俺の腕を掴む手のひらに汗がじっとりと滲んでいるのがわかった。

    ゆっくり進み、全部入ったところでホッと安心する。ようやく、じわじわと冨岡と一つになっているという実感が湧き、胸がいっぱいになった。
    「動くぞ」俺がゆっくり動き始めると、冨岡は苦しげにまた目を閉じた。目尻にうっすら涙が浮かぶその儚げな表情に、奥を思い切り突いたりしたらこんな綺麗な人は壊れてしまうんじゃないかと思えて躊躇する。可哀想になり、少し浅いところでゆっくり抽送をしていたら、冨岡が次第に体の力を抜き始めたのが分かった。

    段々と表情が溶けてきたと思ったら、「ん、ん」と小さく上がり始めた喘ぎ声がたまらなく色っぽくて更に俺の体を突き抜ける快感が増す。つい激しく突きたくなってしまうが冨岡が気持ち良さそうだから我慢して続けていると、冨岡はますます息を荒げ始めた。その様子を見ているだけで達しそうだと思っていたその時、冨岡がまるで熱に浮かされたように口を開いた。

    「不死川、そこ…」

    久しぶりに聞いた冨岡の声に胸がドキッとして、夢中で「ここか?ここがいいのか?」と聞くと、冨岡はうっすらと目を開けて切なげに俺を見上げて頷き、「気持ちいい、もっと」と囁いた。
    ズン、と俺の下半身が激しく疼く。今までに経験のない興奮が自分を突き動かした。本能のままに動いたりしたらまずい、落ち着け、と自分に言い聞かせるが、胸が苦しくなるほどの思いが込み上げて冷静になれない。冨岡が悦いと言う場所に当てていると、冨岡の呼吸がますます荒くなり、快感に耐えきれないように色っぽく善がる。自分がこんなにも冨岡を悦ばせていると思ったら嬉しくてたまらず、俺の頭はついに理性を捨てた。

    「好きだよ、冨岡」

    自分の口から勝手に溢れ落ちた言葉にハッとして、慌てて冨岡を見ると、冨岡は途端に息を荒げ、ますます興奮したように俺の首に腕を回すと俺を引き寄せた。唇が触れそうになった瞬間、冨岡の口から
    「俺も大好きだ」
    という控えめな声が漏れた。
    あまりに感動してしまい、夢中になって舌を絡ませ合っていたら、冨岡が次第に苦しげな顔になり俺の肩に爪を立てながら「ああ、いく、不死川」と囁く。「うん、いいよ」俺がそのまま動いていると、冨岡は「口付けを」と俺を引き寄せた。
    舌を絡ませたまま抽送を繰り返していくと、冨岡は「ああ」と声を上げ、俺と冨岡の腹の間で気をやった。
    目尻から涙を一粒こぼしながら、はぁはぁと激しく胸を上下させる姿が愛しくて、そのままぎゅっと抱きしめた。胸が苦しいくらいの想いに浸りながらしばらくそのままにしていると、冨岡が「お前も」と言って脚を俺の体に絡ませるようにしてきた。
    「おい、お前そんな事したら…」
    必死で昂る気を落ち着ける。
    「お前がよくなるところが見たい、俺は大丈夫だから、好きなように動け」
    冨岡がまだ荒い息を押し殺すようにしながら優しく囁いた。
    それを聞いた途端我慢できなくなった俺が思い切り腰を突き上げると、冨岡が「あ!」と目をチカチカさせる。
    「お前可愛すぎ、あんま煽んな」
    夢中になって腰を打ち付けているとずっと耐えていた射精感がすぐにこみ上げて来た。
    「いきそう」俺が目を閉じると、冨岡の「うん。大好きだよ」と言う声が耳元で聞こえた。
    「俺も好きだ」
    絞り出すようにつぶやくと、激しく湧き上がる快感を経て俺は冨岡の胎の中で達した。あまりの気持ちよさに体が震え、しばらく動けずにそのままの体勢で冨岡を抱きしめ続ける。こんな快感は生まれて初めてだった。
    「すげェ気持ち良かった」
    「うん、俺も」
    「辛くねェ?悪ィ、中で出しちまった」
    俺が自身を抜きながら言うと、冨岡は息を荒げながら「大丈夫だ、嬉しかった」と微笑んだ。

    冨岡の体を綺麗に拭いてやり、横になって胸に抱き締める。素直に俺に体を預けてくるその体の重さが愛おしくてたまらない。
    「血鬼術解けても、俺の事嫌だと思わなかったのか?」
    俺は冨岡の腕や腰に手のひらを這わせながら聞いた。この幸せがあまりに非現実的に感じて、つい確認するために冨岡の体に触れていたくなる。
    「え?血鬼術なんか関係なく前からお前を嫌だなんて思ったことない」
    冨岡がびっくりした顔をした。「ずっと好意を示してきたつもりだ。いつもお前を怒らせてしまっていたが」
    「好意ィ?!全然わかんねェよ、猫になってからの方がしゃべってた頃よりずっとお前の気持ちが分かりやすかった」
    俺が笑うと、冨岡は心外!という顔をした。
    「またあのゴロゴロ言うの聞きてェなァ。あれ可愛かった。話さなくてもお前が喜んでんのはっきりわかって」
    俺の言葉を聞いた冨岡は恥ずかしそうに赤くなって目を伏せた。
    「覚えてない」
    「そうなのか?残念だ」
    俺は冨岡の頬を指でそっと撫でた。冨岡は嬉しそうに俺を見上げる。
    「術が解けてだんだん自分の意識が戻って来た時、お前が俺を布団に入れてくれたから驚いた」
    冨岡は俺を見つめて小さく笑った。「夢でも見ているのかなと思って眠ったけど、目が覚めたらお前がやはり優しいから、その時間が終わってしまうのが怖くて術が解けたと言い出せなかった」
    そう言ってから冨岡は、そっと俺の胸に頬を寄せた。頬が熱があるみたいに熱くて可愛い。
    俺は冨岡の髪を撫でながら、綺麗な白い額に口付ける。
    「俺はお前に好きって言っていいのか迷った。お前が全然しゃべんねェから」
    「しゃべったら、お前がやめてしまうんじゃないかと思って。あのまま抱いて欲しかったから、しゃべれなかった」
    恥ずかしそうに赤い顔で言う冨岡の言葉にまた臍の下が疼いた。冨岡を抱き寄せ、唇を合わせる。嬉しそうに俺の首に腕を回し、「ん」と可愛い喘ぎ声を漏らすのが愛しくてたまらず、思わず気持ちが昂った。
    こいつと俺は恋仲なんだ。冨岡は俺の恋人。そう思ったら情けないくらいに俺は浮かれた。

    「義勇」

    そう呼んでから途端に自分で恥ずかしくなり、おそらく赤く染まっている顔を見られないように冨岡を抱きしめた。冨岡は固まったまま何も答えない。
    ふと見ると、冨岡の耳が真っ赤になっていた。
    「名前で呼んでもいいか?」
    俺が真っ赤なその耳に尋ねると冨岡はしばらく沈黙した後に消え入りそうな声で言った。

    「ゴロゴロ」

    俺は思わず笑い声を上げて、「義勇」ともう一度呼ぶと首筋にそっと口付けて揶揄うように囁いた。

    「いい子だ。大好きだよ」




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