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    はなとゆめ

    @flowerlvsdreams
    支部でハピエン小説書いてます。
    プロフ絵は拙作の1シーンをgomaさんに描いていただいたものです。

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    はなとゆめ

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    初めて喧嘩したさねぎゆのお話🥰

    冨岡と喧嘩した冨岡と初めて喧嘩をした。言い直すと、冨岡と恋仲になってから初めて喧嘩した。

    発端はいつもなら笑って済ますような事だった。
    風呂から上がった冨岡が、ろくに髪も拭かずにウロウロしていたから「そういう事してるから風邪ひくんだろうが!またひいても粥作ってやらねェぞ」と、この間同じような事をして熱を出したあいつに言った。
    すると、いつもならどこ吹く風という感じの冨岡が珍しくムッとした顔をして「お前はいつもそう言うけど、お前に会うまでずっとこうしてきたがそれで風邪なんかひいたことなかった。この間のは髪のせいじゃない、たまたまだ」と言い返してくる。
    散々心配した人の気も知らねェで、とカッとなった俺が、思わず売り言葉に買い言葉で
    「じゃあ二度と髪拭いたりしてやらねェから風邪なんかひくんじゃねェぞ」と眉間に皺を寄せると、「結構だ。それにひいても世話してくれなくてもいい」と俺を見据えたあと、さっさと寝室に入っていった。
    「かっわいくねェ!」
    後ろから捨て台詞を吐いてやったが、何の返事もない。
    しばらく居間で座ったままイライラとしていたが、やっぱりこんな気まずい空気でいるのが嫌で、さっさと仲直りするか…とため息をつく。惚れた弱みとはこの事だ。もし今俺がごめんと言えば、きっとあいつも「俺もごめん」と言っていつもみたいに俺に甘えて抱きついてくるに違いない。冨岡のいい匂いがふわりと鼻先に香ったような気がして、仕方ねェな、折れてやるか…と立ち上がり、居間の電気を消すと寝室に向かった。

    襖を開けた途端、俺はその光景を見てさっきまでの甘い想像がガラガラと砕け落ちるのを感じる。
    そこには布団が二組敷かれていた。いつも一つしか敷かず、「狭いな」と笑いながらも、どちらも決して敷こうとしなかった二つ目の布団。冨岡はそのうちの一つのど真ん中に枕を置き、向こうを向いて寝ているんだか、狸寝入りをきめているんだかしている。
    その初めて見る光景に衝撃を受け、更にさっきまで可愛く寄り添ってくる冨岡を想像していた自分が恥をかかされたような気がして、また更に怒りが大きく燃えた。
    そっちがそういう態度なら謝ってなんかやらねェ、そもそも俺は何も間違ってねェ!と頭の中で啖呵を切ると、さっさともう一つの布団に入り、冨岡に背を向けた。布団がひんやりと冷たくて、驚くほど広い。
    冨岡に対する怒りは確かにあるのに、今もし冨岡が後ろから俺を抱きしめてくれたら、迷わず「ごめんな」と言ってしまう自信があった。なのに冨岡は背中を向けたまま、決してそんな事はしてこない。
    俺は頭の中であいつにベタ惚れな自分を呪いながら、眠れない夜を過ごした。まるで昔に戻ったようなギスギスした雰囲気に、自然と出そうになったため息を押し殺す。

    朝方空が明るくなりかける頃まで眠れなかった俺がようやく目覚めたときには、もう昼前になっていた。なんとなくいい匂いがした気がしてうっすら目を開けてから、「しまった、冨岡の朝飯…!」と思いガバッと頭を起こして隣を見ると、隣の布団が既に折り畳まれて端に寄せてあった。
    そうだった、喧嘩していたんだと思い出し、また憂鬱な気分が蘇る。のそのそと起き上がり、寝巻きの帯を直しながら居間に行ってみるとそこにも冨岡の姿はなく、いつも食事をする卓の上には漬物やめざしの焼いたのの上に布巾がかけられてあって、お櫃や茶碗も用意されていた。
    そしてその隣に置かれた紙には「街に行きます」という冨岡の綺麗な筆跡。

    冨岡がいない事にホッとしたようながっかりしたような心境だった。顔を合わせるのが気まずかったから、先延ばしになったのはいいが、やっぱり姿が見えないと恋しい。紙を見て、昨日はごめんなさい、という一言を一瞬期待した自分には腹が立つ。
    こんな事をしてくれるんだからものすごく怒ってはいないようだが、今すぐ仲直りしたいというわけでもないのか。冨岡が用意してくれた朝飯を噛み締めながら悶々と考える。
    そもそも、冨岡がやたら頑固なのが悪い。自分の体を雑に扱うのが見ていてたまらなく心配だ。熱を出したあいつが青い顔をして悪寒に震えながら寝ている姿は見ていて辛く、恐怖さえ感じた。そんな俺の気も知らず何度も「俺は寝てれば治るんだから放っておいてくれて大丈夫だ」とかあいつが平気で言う事に腹が立った。

    冨岡にずっと元気で笑っていて欲しい気持ちが、どうしてあいつには伝わらないんだろう。自分をもっと大事にして欲しいし、あいつが心配で夜も眠れなくなる俺の身にもなって欲しい。
    そんな事を考えていたら、また怒りが再燃してきた。そうだ、俺は何も間違っていない。よりによって布団を二組敷くなんて、仲直りするつもりなんかありません、というあいつの主張に他ならないじゃないか。

    イライラと食器を洗い、洗濯籠に向かうとそこには洗濯物が何も無かった。不思議に思い、裏庭を見れば既に洗濯物が干してある。俺は思わず首を傾げた。一体なんなんだ、あいつは。怒ってるんだかなんだか、さっぱり分からない。俺に貸しは作らないとでも言うつもりか?片腕で洗濯物を干すのはものすごく大変なのに。
    着物を着替えて居間に戻り、座って新聞を眺めてみたものの、同じ行ばかり何度も読んでしまうし内容は一切頭に入らない。ついに俺は立ち上がり、出掛ける支度をした。街に行けば冨岡に会えるわけではないが、家でじっとしていたら時間が永久に経たない気がしていても立ってもいられなかった。

    街に行き、冨岡の寄りそうな本屋やら魚屋やら八百屋を覗いてみるが案の定姿は見えない。焼き鳥屋を見れば「あ、ねぎまがあるな」とか、通りに面したところでうまい匂いを漂わせながら鰻の蒲焼きをひっくり返している鰻屋を見れば「弁当にしてもらって夕飯にあいつと食うか」とか、全てが冨岡と直結してしまう自分に呆れる。
    俺はあいつに怒ってるんだから、考えてやる必要なんかない!と自分に言い聞かせる。

    「あれ。何してんのお前」
    鰻屋の前で立ち尽くしていた俺の耳に入ってきたのは聞き慣れた声。
    「…よう」俺がその大男に返事をすれば、あいつはニヤニヤとしながら「だいぶ顔が怖えけど、その鰻お前の親の仇かなんか?」と近付いてきた。
    「うるせぇ、見てただけだ」と目を逸らすと、あいつは「一人なんか珍しいじゃねえの、なあ、昼飯食った?」と肩に腕を回す。
    「まだだけど、朝飯食ったばっかりだから腹減ってねェ」
    「じゃ、俺の昼飯に付き合え。お前は甘味でも食ってればいいだろ」
    強引に連れられて入った飯屋で、「俺天丼。二杯な」と注文する宇髄に続き、今は大して食いたくもない甘味を頼んだ。
    「で?何で喧嘩した?」
    宇髄の言葉に「は?」と顔を上げる。
    「何でわかる?って顔に書いてあんな。一つには、お前が一人でいる事と、もう一つはまた鬼狩りでも始めたかと思うような顔してんのがな」
    宇髄の悦にいった喋り方に「クソがァ」と目を逸らすと、「あともう一つは、冨岡がさっきうちに来たから」と嬉しそうに付け足す。
    「は?なんでだよ」俺が詰め寄ると、宇髄は「なんでって、そりゃお前が街をウロついてる理由と一緒だろ」とふき出す。
    「あいつが言ってたけど、街に行きますって置き手紙残したんだろ?だからそれ見たお前が来るだろうなと思って、冨岡と別れた後にこうして俺は街に来たわけだ。ちなみに、冨岡にも一緒に昼飯食おうって誘ったけど、お前に会いたくなったらしくてさっさと帰っちまった」
    その言葉に思わずガタリと立ち上がった俺の腕を「まあ待て」と掴み、「ちょっと聞けよ」と座らせる。
    「何だよ」ジリジリとしながら俺が言うと、宇髄は出てきた天丼に、美味そう、と呟いてから「お前さあ、冨岡が何で怒ってるか知ってんの?」と箸を入れる。
    「俺が小言言うのが気に食わねェからだろ。あいつ頑固すぎんだよ、人の気もしらねぇで自分の体粗末にしやがる」俺が言うと、宇髄は笑いながら首を振る。
    「あいつ、お前が体壊すんじゃねえかってすげえ心配してた」
    「俺が?なんで」わけが分からず眉を寄せると、宇髄は「冨岡の話聞く限り、お前も大概頑固だろ」と笑う。
    「不死川が全然休まねぇって、あいつ心配してたぜ。いつも家事を見つけては忙しくしてて、掃除なんか一日二日してなくても死にはしねぇって言っても毎日丁寧にやるし、洗濯もいくら冨岡がやるって言ってもやらせねぇんだろ?」
    宇髄の言葉に思わず固まる。
    「自分が季節の変わり目にちょっと熱出しただけで、やれ粥だ、湯たんぽだって寝ないで看病するし、普段食事だって自分が作るからって言っても、外に食いに行こうって言っても全然聞かねぇで全部やろうとするし」
    まるで宇髄が冨岡になりかわったかのように滔々と言うからカッとなり「うるせぇな、ほっとけよ」と遮ると、宇髄は珍しく真顔で「お前には元気でいて欲しいんだよ」と低い声で言った。
    ハッとして黙ると、宇髄は「なぁ、頼むからラクしろよな。冨岡は正しいぜ」とだけ言い、また天丼に口をつける。
    俺が黙ったままでいると、宇髄が「健気じゃねぇの。お前がいつも自分の心配ばっかしてる事に腹が立った、って冨岡言ってたぜ。あいつに美味いもんでも買って、さっさと帰れば」とこちらをチラッと見る。
    「…引き止めたのはてめェだ」とかろうじて憎まれ口を叩いてから「甘味はてめェが食え」と、まだ口をつけていない甘味と天丼の代金を机に置き立ち上がった。
    「あ、ちなみにさ」
    行こうとした俺の背中に宇髄が言うから振り返ると、「お前が家事出来なくなるように俺様が仕組んどいたから。明日になりゃ分かる」とニヤリと笑う。
    「わけわかんねェ。…でも色々世話になった」
    俺が言うのを聞いてあいつは「犬も食わねェもん食っちまったから、こうして口直ししてんだからな」と楽しそうに言ってから「ごちそうさん。色々と」と笑って二杯目の天丼を引き寄せた。

    屋敷に戻ると玄関の鍵が開いていて、冨岡と顔を合わせるんだと思ったら思わず緊張する。こんな事は初めてだ。
    「ただいま」と言いながら入ると、居間から「おかえり」と普段より抑えた冨岡の声が聞こえてくる。
    居間に行くと、冨岡は固い表情で座っていた。
    「話がしたい」
    まるで昔に戻ったかのような冨岡の顔つきに思わずごくりと唾をのみ、正面に行ってあぐらをかいた。
    「なんだ」
    俺の言葉を聞くなり、冨岡は「前から何度も言っているが、お前は働きすぎだ」と険しい顔をした。「俺は今までずっと一人でやってきたし、やってこられた。お前に手伝ってもらわなくてもなんでも出来るし、熱を出そうがそんな事は一人で対処できる。前はそうしてきた」
    普段より饒舌な冨岡の言う事を聞きながら目をじっと見つめていると、あいつの厚いまつ毛に小さなほこりのような物があるのが目に入った。錯覚かと思ったが、よく見てもやっぱりほこりだ。
    その間も冨岡は何やら話していたが、俺はそれが冨岡の目に入りそうで気になって気になってたまらない。「おい、不死川聞いているのか」と言う冨岡の声を聞きながら、俺はほこりを取ろうと片手を床につき、冨岡の方に体を傾けて手を顔に伸ばした。冨岡がそんな俺を見てしようとしている事を察したらしく一旦口を閉じ、眉間に皺を寄せたまま目を閉じた。
    俺が指先でスッとまつ毛からほこりをつまみ取り、「よし、取れた、もういいぞ」と言うと、冨岡は目を開けて不思議そうな顔でじっと俺を見つめている。
    「ほら、これ」と指先のほこりを見せた途端、冨岡は突然体を半分に折るようにして床に突っ伏し悶え始めた。わけが分からず、「え?冨岡?どうした」と混乱しながら肩に手を伸ばそうとしたら、上から見える冨岡の耳も首も火がついたように真っ赤だ。
    その瞬間、冷たくなっていた俺の胸に一気に温かい湯が流れ込んできたようだった。

    「もしかして、…口付けすると思ったのか?」

    俺が尋ねると、冨岡は突っ伏したまま首をぶんぶん振って「うるさい、うるさい!誰だってそう思う!」とうめく。
    胸がいっぱいになり、「冨岡」と囁いて冨岡の体を起こし、俺から逸らした真っ赤な顔を見ないようにしてやりながら、恋しくてたまらなかった体を思い切り抱きしめた。
    「可愛い。大好きだよ。ごめんな」
    あまりに愛おしくて、俺の目に涙が滲む。
    「俺こそごめん」冨岡はそう言うと、俺の背に手を伸ばしてぎゅうと俺を抱きしめ返した。「意地張って布団二つ敷いたりして。あれはやりすぎだった」
    「あの布団いらねェから明日捨てる」
    俺が言うと、冨岡はふきだしてから鼻を啜った。
    「寂しかった、大好きだよ」
    冨岡の言葉に何度も頷く。「俺も寂しかった」
    冨岡の頬を両手で包み、口付けをする。一緒に住んで以来こんなに長い時間口付けをしなかったのは初めてで、その新鮮さに妙に胸がときめいた。
    唇が離れて目が合うと、目に涙をためながら赤い頬で幸せそうに「もっと」と微笑む冨岡があまりに可愛くて、抱きしめながら何度も唇を合わせる。

    その夜、一つだけの布団の中で何度も冨岡と愛し合った。互いの大事な体を慈しみ合うように、口付け合い、触れ合う。普段穏やかな冨岡があんなに怒るほど俺を思ってくれる気持ちを思うと、愛しさが更に高まった。既にこれ以上好きになるなんてあり得ないと思うくらいだったのに、冨岡を想う気持ちに天井がないらしい事をあらためて実感する。

    翌朝、布団の中で互いの体に触れ合ったり口付けしあったりしていると、ふと冨岡が「今日は何か予定があるのか?」と言うから「天気いいから、洗濯するくらいか」と答えてから冨岡の表情を見て、思わず「…と思ったけど、そんな顔されたくねェからたまにはサボるか」と笑った。
    「そうだ、それで思い出した。今日、いい物が届くんだ」
    急に冨岡が得意げになって言うから、なんだ、と聞くとあいつは眉を下げた。
    「贅沢だって怒らないか?」
    「お前はずっと体張って命かけてきたんだ。その対価をどう使おうが、俺が口出しする権利はねェよ」
    俺は冨岡の髪を撫でながら言った。正直、滅多に贅沢をしない冨岡が何か買ったと聞いて少し嬉しいくらいだった。冨岡はホッとしたような顔をして言った。
    「最近発売されたばかりの洗濯機というものだ」
    「はァ?!」思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。「あれはすげェ高級品だろ?!」
    俺の言葉に、冨岡が少ししゅんとして見えたから慌てて声を抑えてまた髪を撫でる。「いやいや、いいんだぜ、別に。使ってみたかったのか?」
    「使ってみたかったっていう興味もあるし、そうしたら洗濯が楽になって、その分二人の時間が増えると思ったから」冨岡は嬉しそうに頬を染めた。「宇髄にそんなものがあると昨日初めて聞いたんだ。まだ滅多に店頭には置いてないらしいが、昨日宇髄と一緒に訪ねた店にたまたま評判集めに置いてあって」
    あの野郎、妙な事教えて…と思っていると、早速玄関から「ごめんください、電気屋です」という声が聞こえてきた。

    届けられた洗濯機の使い方を二人してその電気屋から聞き、最後に「代金を」と言うと、「昨日一緒にいらっしゃった宇髄様とおっしゃる方が夕方にお見えになって代金の半分をお支払いになりましたから、残り半分を」と言いながら懐から何やら書かれた紙を出した。

    「天丼ごちそうさん。同居祝いしてなかったの、今更思い出した。全額払ったら不死川に殺されそうだから、不本意だが半分にしといてやる。おめでとう、末永く達者で暮らすために使え。宇髄」

    冨岡と二人、呆然と見つめていると、「あのう…よろしかったんでしょうかね、代金半分頂戴してしまって」と電気屋が困った顔をした。
    その瞬間、宇髄がニヤけながら言っていた言葉を思い出す。

    — お前が家事出来なくなるように俺様が仕組んどいたから。明日になりゃ分かる。

    俺は「借りがえらい事になった」と苦笑いしたあと、「ああ、いいんだ」と電気屋に言った。冨岡が複雑な顔をしながら用意してあった代金の半分を電気屋に渡すと、電気屋はほくほくしながら「売ったのはお客さまが第一号です、良かったら使い勝手をお聞かせください」と帰って行った。

    「まさか宇髄が半分も払ってくれるとは。すまない、油断した」と落ち込む冨岡を「まさかそんな事予測出来ねェよ」と慰める。
    「どうする?ちょっと洗濯には遅くなったが使ってみるか?」と冨岡に聞くと、冨岡はふとハッとしたような顔をしてから、俺のそばに来て首に腕を回した。ドキッと心臓が跳ねる。この雰囲気の時はいつもそういう誘いだ。
    「なあ、我儘を言ってもいいか?」
    冨岡の色っぽい上目遣いに反射的にその腰を抱き寄せる。
    「ああ、当たり前だ」俺は興奮のあまり声が掠れた。
    「風呂に入りたいから沸かしてほしい」
    途端に気が抜ける。冨岡はたまに寒い日や雨の朝なんかに自分で風呂を沸かして一人で入る時がある。温まると寒い時期にしくしく痛む神経痛にいいらしい。
    「ああ、いいぞ。待ってろ」
    ちょっとがっかりした気持ちを上手く隠せたか分からない声で言う俺から、冨岡が絡ませた腕を外さない。

    「今日は一緒に入ってほしい」

    油断した俺の隙をついたかのような誘いに、一気に心拍数が上がる。俺の肩に頭をもたせかけながら恥ずかしそうに囁いた冨岡の体をもう一度抱きしめ耳元に囁いた。
    「ほんとか?」
    冨岡が頷くから思わず息が弾む。
    「あと、風呂から上がったら髪を拭いて欲しい」と小さく呟いた冨岡の言葉を聞いて、思わず笑みが浮かぶ。冨岡は俺をチラと見上げてからまたぎゅっと抱きついてきた。
    「ごめん、心配してくれてるのに言うこと聞かなくて」
    「いいんだ、俺も自分の今までの感覚抜けなくて悪かった。お前が気ィ遣って言ってくれるの聞かずに、つい色々やり過ぎてたな。もっと手ェ抜くから」
    「ありがとう、そうしてくれ」冨岡は嬉しそうに微笑んだ。
    「今日は夜、鰻食いに行こう」俺が冨岡の手を取ると、冨岡は「いいな、俺も食べたいと思ってた」と笑う。
    俺がふと冨岡に顔を近づけたら、あいつがはにかむような顔をしてそっと目を閉じかけてから、いきなりパッと開き「まさか、またほこりじゃないよな?」と警戒したから大笑いした。
    「違う。けどあの顔すげェ可愛かったから、口付けしなかった俺が馬鹿だ」

    その日俺は何の家事もせず、一日中冨岡と愛し合うという夢みたいな日を過ごした。
    ちなみに、宇髄の言っていた「家事出来なくなるように仕組んだ事」が洗濯機なんかじゃなく、「朝から風呂に一緒に入りたいって言ってみろ」と冨岡を焚き付けた事だったと後で知った時は「まんまとやつの術中にはまっちまった」と悔しかったが、最高の祝いをくれたから今回は目を瞑ることにする。






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