サンプル──カン。
カラコロカラコロカラコロコロコロ……。
嘔気が酷い。
冷えたタイルだけが、冷静さを保てと最悪な気分の中で訴えかけてくる。
ノートン。ノートン・キャンベル。おまえはそんなに愚かであったか?
深酒したわけでも無いのにずっと腹の中のものが逆流するような感覚に囚われて、便器の中に延々と嘔吐していた。粘ついた黄色い液体だけが喉を伝い、その焼ける感覚にうんざりしてしまう程だった。泡立った便器の中を眺めても一向に良くならない。
朝食を取ろうとしても、小麦の焼けた匂いが気持ち悪くて食堂に近づくどころでは無い。食物の入り混じった匂い、人の話し声。それら全てが煩わしくてすぐに踵を返した。
手負の獣の気分だ。生き物の放つ臭い、それから物音。これら全てに過剰に反応して、それを放つものに敵意を感じている。
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