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    クルリ

    @rice_kajii

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    クルリ

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    途中で挫折してしまった魚雷先生と天ちゃんの大人デートな話です。大人デートが良くわからず手付かずになってしまったので供養。冒頭のみなので突然終わります。気が向いたら続き書きます。

    魚雷問答「アナタ、私と一緒に水族館に行かない?」
     目の前に仁王立ちする魚雷からミサイル級の一言が放たれる。その衝撃に天の助は耐えきれず、今度こそ完全に沈黙した。


     ツルリーナ3世を倒した後、天の助はボーボボたちとは別行動をとり、現在に至るまで自由気ままに過ごしていた。
    同窓会に出席したりバカンスに出たりと、これまでの戦いの日々に比べれば圧倒的に暇であり、空いた時間には色々と考えてしまう。こうして今日もぼんやりと1人で夕日を眺めていたところ、轟音響かせ見慣れた魚雷が天の助に着弾したのだ。胸の穴はぽっかりと綺麗に開いている。
    「天の助のくせに手間かけさせやがって! 探したわよ!」
    理不尽な言葉を浴びせられながらも抗議の声を上げようとするが、魚雷の一睨みでなけなしの抵抗はしおしおと尻すぼみになる。
    身を砕かれる懐かしい感覚に、再生中の胸が少し疼いた。


     ……そして冒頭の彼女の一言である。
     衝撃から立ち直った天の助から、至極当然の疑問が漏れる。
    「え、いやちょ、待ってくださいよ魚雷先生。人違いじゃないですか」
    「人違いも食品違いも無いギョラ」
     当然とばかりに言い放つと、魚雷ガールは天の助の目の前にずいと勢いよくチケットをかざす。眼前の紙を寄り目で眺め、彼は少し驚いた。

    「これ、最近できた水族館だ……ここに来るまでにも色んなところで話題になってたし。このチケットどうしたんですか?」
    「どうしたもこうしたも、あの成金ヤローが渡してきたのよ」
     苦虫を噛み潰すという表現がぴったりな魚雷ガールの表情に、天の助はLOVE戦での彼女らのやり取りを思い出す。きっとあれの延長だろう。よくよく見ればその水族館もハレクラニが経営するハレルヤランドの系列だった。マルハーゲ帝国が滅んでからも、経営者としてかなり手広く事業を展開しているらしい。

    「奴から施しは受けないと決めているのだけど、流石にチケットに罪は無いから使うことにしたわ」
     ひらひらと2枚の紙を振りながら話す魚雷ガール。天の助はハレクラニと魚雷ガールの間に何があったのか知らない。だが、魚雷ガールと破天荒の関係を見ていると、何となく触れないほうが良いのかもしれないとも思う。彼女も28歳の女性だから色々あるんだろう。彼はそれ以上魚雷ガールの交友関係のことを考えるのを止めた。それに、今は自分自身のことを考えるべきだ。

    「それならオレよりも向いてる相手いるじゃないですか。ソフトンとか」
    記憶が確かならば、彼女の想い人はピンクのアイツだったはずだ。まさか忘れたわけじゃあるまいと天の助は提案するが、魚雷ガールは「フッ」と鼻で笑う。
    「……アンタはもうちょっと大人の魚雷を勉強した方が良いわ。好きな人とのデートプランは自分で立てる! チケットも自分で手に入れる! 狙った恋は自分で掴む! それがギョライング・マイウェイよ」
    「そうですか……」
    拳を振り上げ力説する彼女に、大人の魚雷がどういうものなのか分からない天の助はとりあえず話題を流しておく。

    「じゃあ、ボーボボとか首領パッチは?」
    「アンタには想像力が無いわけ?」
    かつての仲間の名前を挙げるも、呆れ顔の魚雷ガールに疑問で返された。
    少し想像してみる。ボーボボと魚雷ガールが水族館、首領パッチと魚雷ガールが水族館……
    「……無理だな」
    水族館が爆発する未来しか見えなかった。
    「物分かりの良いところてんで助かるわ」

    腕を組んだ魚雷ガールはフゥと息を吐いて彼に告げる。
    「まあつまり消去法でアンタなのよ」
    「あー、そうなりますか」
    頭を掻きながら困った顔をする天の助。ここまで話が進んでも乗り気でない彼の顔を見て、魚雷ガールは最後の一言を放つ。
    「アンタは存在自体がふざけてるけど、私が誘ったんだし多少のおふざけは目を瞑ってあげるわ。だから行きましょう」
    優しく微笑む魚雷ガールに、天の助は自身の負けを悟った。
    天下無敵のボケ殺しにここまで言われてしまっては承諾するしかあるまい。
    退路を完全に断たれた天の助はガクガクと頷き、水族館に行く約束を取り付けられたのだった。

    ***

    次の日の朝、水族館の門の前に天の助は所在無さげに立っていた。
    結局彼は魚雷ガールと別れた後も、彼女と水族館に行くという謎のシチュエーションに恐れをなし、昨晩は一睡もできなかった。
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