「王子様」「トキメキ」 静寂を聞き流すために流したラジオから最近話題のバラードが流れる。薄暗くなり始めたばかりの空を巽は眺めていた。
「運転、変わりましょうか?」
既に長いこと運転を任せていたHiMERUに問う。丁度サービスエリアを示す看板の横を通り過ぎたところだった。
「いえ、あと三十分程ですし大丈夫ですよ」
目的地に着くまでに気を失ってその気を失ってしまっては困るとHiMERUは即座に断りを入れた。そんな心配よりも、先程から天辺だけ見えるラブホテルが気になる。特に栄えていない場所に設置された高速道路から見える背の高い建築物は大体ラブホテルだと勝手に決めつけているだけだが。運転中ずっと見ていた景色が標識、ラブホテル、そして時々恋人と来たらHiMERUは気がおかしくなりそうだった。
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