2/14のおさすなちゃバレンタインデー当日の朝
隣のクラスの女子達の会話が聞こえてきた。
「治くん今年はチョコ貰ってくれへん〜」
「えっ彼女でもできたん?」
「彼女からしか貰わんてことなんかな」
それを聞いたあと治と1ヶ月ほど前にした会話が蘇ってくる。
「なぁ、来月バレンタインやんか」
「うん。そうだね」
「…すな誰かにチョコやるん?」
「女バレで交換するかな」
「俺には?」
「ん?」
「俺には…くれへんの?」
「…欲しいの?」
「おん」
あの会話はなんだったのだろう…。
「(私の欲しいって言ったよね?)」
じゃあ私からのは貰ってくれるのだろうか…
他の子のは断っているのに?
「(あっ治)」
そんなことをもんもんと考えながら教室に向かう途中治の姿を見つけた。治と、もう1人美人だと噂の3年生の先輩咄嗟に隠れて様子を伺う。
「(なんだ貰ってるじゃん)」
先輩からのチョコを受け取る治。
やっぱりあの話はただの噂だったのだろうか?
なんて考えは先輩が去った後に打ち砕かれた。
「はぁ…めんどくさ」
ポツリと呟かれた言葉で喉がキュッと締まるような感覚になる。それを聞いて私のは貰ってくれるだろうなんて楽観的にはなれなかった。
「(本当に彼女からのしかもらいたくないのかも…)」
あの話をしたのはもう1ヶ月も前だし治ならその間に彼女ができたっておかしくない。
なんせあの宮兄弟なのだから。
きっとあの時だってなにも考えなんてなくて本当にただチョコが欲しかっただけなんだ。私からのが欲しかったわけじゃない、
だって私は別に治の特別ではないのだから…ただの私の片思い…。考えれば考えるほど落ち込んでしまう。普段はしないお菓子作りを頑張ってみた。1つじゃ足りないだろうと治のには2つ用意した。可愛くラッピングされたチョコマフィンを朝に見たときは緊張と同時にワクワクもがした今見ても寂しさがこみあげて来る。
そんな中渡せるわけもなく迎えた放課後
「(もういいや、自分で食べちゃお)」
すなちゃはベンチに腰掛けマフィンにかぶりいた。「(なかなか美味しいじゃん)」
1口目を飲み込み2口3口と勧めていくと
「何してるん?」
と後ろからかけられた声にビクッと身体に力が入った。声の主は振り返らなくてもわかる
「うまそうなの食ってるやん」
「…治」
なぜここに、と思ったがその言葉はマフィンと共に飲み込まれていった。
「なぁ俺も食いたい」
「これしかないもん」
「じゃ、それちょーだい」
「こんな食べかけじゃなくても治はちゃんとしたの貰えるでしょ?」
「もらってへん」
「えっ?」
「欲しいやつからしか貰わんて決めてん」
それはいつから決めてたの?なんで私にほしいって言ったの…?なんて言っていいかわからなくなる。沈黙を破るように治くんは真っ直ぐすなちゃを見て言った。
「なぁ俺すなからのが欲しいねんけど」
「嘘…」
治くんからの言葉に少しびっくりしつつ浮かんでくるのはあ朝教室に向かうときに見た光景だった。
「嘘やない」
「おっ治先輩から貰ったら面倒だって言った!」
「えっ?!聞いてたん?!だってあの先輩ツムに渡しとけ言うねんで!!」
「えっ…」
自分で渡せ思わん?とか押し付けられてんって言う治くんを見てそうだったんだってちょっと胸のザワザワが落ち着いた。治くんは隣に移動してもう一度訪ねる。
「なぁ、ほんまにそれしかないん?」
袋の中に残されたまだ手付かずのマフィン。
これを渡したらどんな反応をするのだろう…
袋ごと「はい」っと差し出した。
「これ手作りなんな〜!食べてええ?」
受け取った治くんはニコニコしなが中身を取り出したす。
「えっ今食べるの?!まっ…」
待ってと言う前にマフィンは治くんの口の中だった。心臓が早く動く。
「うんまぁ〜」
まるでぱぁっという効果音が出そうなほど幸せそうな治くんの表情にほっと安心するすなちゃ。マフィンを口いっぱいに頬張る治くんがリスみたいでくすっと笑ってしまう。
「何笑っとるん」
「よかった喜んでもらえたみたいで」
「あたりまえやんか。ずっと欲しかったんやもん」
そんな幸せそうに言われたらドキドキしてしまう。先輩のは違った、他の子からはもらっていない、
でも私からのが欲しいと言う…
期待してもいいのだろうか?
気がつくと治くんはマフィンを完食していた。
「すなありがとお」
「どういたしまして。ホワイトデー楽しみにしてる」
って今はこの幸せそうな顔を独り占めでかたからいいかなって期待は胸にしまうすなちゃと「まかしとき」ってホワイトデーに1歩踏み出す予定の治くんのお互いめちゃくちゃ意識してるおさすなちゃの2/14...。