【現パロ】黒服ロー愛生まれてました「おぉ、そうだロシナンテ!おまえもなにか歌ってきなさい。」
「それはいいな!」
今日は会社の飲み会があり、二次会の会場で思いついたように上司たちが囃し立てる。だいぶ酔いが回ってきているらしい。楽しそうで何よりだ。
お堅い職種の為、風営法を守っていない店は使えないので必然と行ける店は限られている。オーナーの弟である自分が行くと融通も利くので今日はドフィの経営するクラブの1つ、お姉さんのいる店、所謂キャバクラに来ていた。
「えー…、何かってそんな無茶振りな。嫌ですよ、ステージの上なんて晒し者じゃないですか…。」
通常クラブのカラオケと言うと席で歌えるところも多い中、この店は豪華なステージセットを用意してあり客席の前方、目立つ場所で歌うルールになっている。今ドフィはいないがもしかしたら裏にいるだけかもしれないし、この店にはローもボーイとして出勤している。素面の知り合いの前でノリノリで歌う度胸はない。
「ロシナンテはな、歌が上手いんだよ…!」
「えー、そうなんですか?聴いてみたーい♡」
そんな自分の言葉はスルーして自慢げにセンゴクさんが隣の女の子に話している。
「みんな歌ったから歌ってないのはロシナンテだけだぞ?なぁ?」
「…俺も歌いました。」
葉巻に火を着けてもらったスモーカーがニヤリと笑う。あいつはあんなに意地悪だっただろうか。新人の頃はあんなに可愛がってやったと言うのに、一緒に歌ってくれたりしないのかとロシナンテは恨めしく思う。1人1回歌うルールなんていつ出来たのか、知っていたら若い衆が数人でステージに上がった時について行けばよかった。
「ね、私も一緒に歌うから一曲入れましょう??」
「おぉ、それはいいな!ならデュエットがいい!」
ガハハと楽しそうに笑うガープの指示で隣のキャストのお姉さんがリクエストカードを記入し、ボーイに手渡している。程なくして画面上部に曲名が出る。歌えない曲ではなくて良かった、順番は5曲目。
(…まぁ、一曲くらいいいか)
半分諦めにも似た気分で自分の順番を待つことにした。
◻︎ ◼︎ ◻︎
店も混んできて、女の子達が入れ替わっていく。融通が利くのはこちら側だけではない、ドフィにもこの席は融通が利くと思われているので席の女の子の比率が減っていく。仕方なく丸椅子に移りグラスに気を配る。店を手伝ったこともあるから手慣れたものだ。
上司達の間に女の子がいる形で後輩達の方は女の子ひとりと補助としてボーイのローが付いた。知っている顔がきて嬉しい。女の子は後輩たちに譲ってローと他愛ない話をする。
正直、店に来ている今日1楽しい時間だった。
『15番テーブルのお客様、リクエストどうぞ!』
店内にアナウンスが響き渡る。人数的に女の子は連れて行けそうにはない、縋る気持ちで後輩の方を見るがみんな目を合わせない。なんて薄情なやつらだ。クイっと袖を引かれてそちらをみるとローが首を傾げてこちらを見ていた。上目遣いになって可愛い。
「コラさんが歌うのか?」
「まぁな、だけどなー…1人デュエットは中々ハードル高いな…」
「…仕方ないからオレが一緒に行こうか?」
「へ?」
「よく聴いてるし、多分歌えると思う。」
「おぉ!悪いな、ありがとう!」
1人デュエットじゃなくて良かったと、意気揚々とローの手を引いてステージにあがる。
聴き慣れた伴奏、ローがマイクを両手に握って画面を見つめている。
(ドジった、どっちのパートを歌ってくれるのか聞いてなかった!)
気づいた時には女性パートが始まろうとしていた。ローが小さく口を開ける。女性パートに寄せてくれているんだろう、普段より少し高めの声が歌詞をなぞる。そう言えばローが歌っているところは初めてみた。女性パートだけど確かに男の声で、だけど耳によく馴染む歌声にぼぅっと聴き惚れているとトントンと脇腹を突かれる。
慌てて、自分の男性パートを歌う。
曲に慣れてきたのか時々ローと目が合う。その度に照れたようにめを瞬かせて顔を背けてしまう。実際はロシナンテがローを見つめて歌っているからなのだが本人はそれに気がついていない。
「「世界で一番素敵なよーるをー、みーつめーていーる」」
もう歌詞なんて見なくてもだいたい覚えている。ロシナンテの方を見るとじっとこちらを見ていた、目が合うと嬉しそうに微笑んで肩に腕が回った。強く抱き寄せられ、バランスを崩して胸に寄り添う形になった。ヒューとどこからか野次が飛ぶ。
(こちらは素面だと言うのにこれだから酔っ払いの相手は…!)
煙草に混じった優しい甘い匂いに頭がクラクラする。熱くなる頬に、酔っ払い相手だから仕方ないと言い訳をしてロシナンテの腕の中、どこをみて歌えばいいのかと視線を彷徨わせる。
刺さるような熱い視線に誘われて、目がそちらをみてしまう。紅い瞳に写る自分自身と目が合ってしまった。もう目が逸らせない。
歌い終わる頃には、抱き寄せられた厚い胸板に頬を埋めてうっとりと溶けた表情でロシナンテを見上げるロー。
鳴り止まない拍手の中、肩を抱かれたままふらつく足で席へと戻っていく。
「…やっば、まじで愛生まれたわ…今」
店の後ろ、録画してシャチに送ってやりたいわと弛む口元を抑えるペンギンがいた。
(ドフラミンゴが裏で店内カメラに映る2人の映像を保存していた。)