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    Fantome

    コラロだらけ やりたい放題
    表記ないものはだいたいこらろです。
    なんでも許せる方向
    思い出したように加筆修正されます

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    Fantome

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    探偵(元刑事)✖️家出DK
    ペット探しの依頼でハチワレの猫を探してる
    後半はエロ

    転パロバケツをひっくり返したような大雨にうんざりする。濡れるのは嫌いだ。水に触れた時の力が抜ける不快感を今でも覚えている。

    (能力なんてとっくに失ったというのにな…)

    強い雨足に撥ねた水が熱を奪っていく。
    窓から漏れる灯りだけが頼りの仄暗い路地裏に雨の音が響く。この場所へ辿り着いたばかりの時は世間からここだけ切り離されたようだと柄にもなくアンニュイな気分に浸ってしまったが、自分しかいなかったこの世界を切り裂くように傘をさした大男が先程から視界に入り込んでは出て行くを繰り返してうざったい。せっかく静かな場所を探して路地裏に入ってきたと言うのに台無しだ。

    「おーい、コラソーン!」さっきまで雨音に紛れて聞き取れなかったが、男はコラソンを捜しているらしい。

    (…俺と一緒だな、俺もコラさんに逢いたい。)

    少しもの寂しい気持ちになってぎゅうと腕に閉じ込めた温もりに縋る。にゃあと隙間から顔を出した猫が濡れた頬を舐めてきた。ざらついた舌がくすぐったい。

    急に泣き出した空に、走り込んだこの軒下でさっき出会った猫。名前も知らない黒と白のハチワレ模様の成猫は首輪はしていないが毛並みは艶々できっと誰かの飼い猫なのだろう人懐こい猫だった。ローよりも先にこの場所で雨宿りをしていた猫は、突然割り込んできた人間に嫌そうな態度をみせないばかりか足元ににゃあと甘えるように擦り寄ってきてくれたのだ。空は泣き止む気配もなく、どうにもままならない全てに無性に腹が立って泣きたくなってきた。

    腕の中のハチワレがコラソンと呼ぶ声に反応しているのか、耳をぴくぴくとしている。声はだんだんと遠ざかっていく。

    「…おまえ、コラソンって言うのか?」
    「にゃあ」
    「…いい名前だな。」

    いつの間にか男の姿は見えなくなっていて、諦めて違う場所を探すことにしたんだろうか、この猫に悪いことをしてしまったかもしれない。

    雨は止んでいた、ざぁざぁと止む気配などなかったのに突然ピタリと止んだ。雨に濡れた身体はすっかり冷えてしまい、水を吸ってずっしりと重くなった服が肌に纏わりつく。腕の中のコラソンの声がにゃあにゃあと段々細く弱々しくなっていく。可哀想だが身体を拭いてやれるタオルはない。数日分の着替えを入れていたリュックサックはこの雨のおかげでびしょ濡れだ。きっと中身も無事ではないだろう。

    用を成さない荷物を一瞥し、溜息を零す。

    家を飛び出して2日目にして終わる家出とはなんとも呆気ない。家族は家出をしたとは思ってもいないだろうが。

    連休中は友人の家で勉強会も兼ねて遊んで来ると言えば、急に決まったことだというのにお小言ひとつなく「そうか、楽しんできなさい。」迷惑かけないのよと送り出された。関心がないわけではないのだろうがもっと心配してくれてもいいのにと拗ねた子供のような気持ちになってしまう。"今"でも両親は医者をしていていつも忙しそうだ。

    1日目はペンギンのアパートに泊まった。急な申し出にも関わらず受け入れて貰って感謝しかない。何日いて貰っても大丈夫ですよと笑ってくれたが、大学に通うペンギンは休みの日もゼミがあるらしく、家主不在の部屋にいるのも憚れて出てきた。

    (俺もおまえもそろそろ帰らないとなのかもな…)

    コラソンと呼ぶ声が再び聞こえてくる。男が戻ってきたのだろう、猫を男の通り道にはなしてやる。飼い主だろうか、こんなに一生懸命探してくれているんだ、きっと大事にされてきたんだろう。

    「あーッ!おまえコラソンか?!」

    猫を見つけた男が走り寄るのが見える。良かったぁと男が猫を抱き抱えて、胸ポケットを漁り、なにやら紙を取り出して見比べていた。

    (なんだ飼い主じゃなかったのか…)

    同じ屋根の下、さっきまで雨宿りをしていた仲間だ。無事に帰れるか見届けようと物陰から見ていたがどうやら男は猫の飼い主ではないらしい。無事に見つけましたよと嬉しそうに電話のむこうに報告している声が聴こえてきた。それでも飼い主のもとには帰れそうだと安心して壁に寄りかかる。

    (…あいつが居なくなったら移動しよう。)

    早くどこか行ってしまえばいいのに男が動く様子はない。路地裏に入り込んだ冷たい風が頬を撫で、身体を震わせた。まだ電話をしているのかところどころ聞き取れた内容は猫の飼い主は迎えに来れない状況らしい。

    「コラソン、ごめんな…おまえの飼い主は仕事で迎えに来れないらしくてな。少しの間、俺の家だが我慢してくれないか?」

    (…勝手なことだな。迎えに来れないならそもそも探さなきゃいいのに。)

    男が何やら取り出して猫に与えている。猫はよほど腹が減っていたのだろう。警戒するように皿へと近づいて、安全だと判断すると勢いよく食らいついた。

    「…ぜったいに迎えに行くからって、いい飼い主さんだなァ、コラソン」

    にゃあと猫が答えるように甘えた声で鳴く。
    傘で顔は確認出来ないが、男の声はどこか知っている声に似ていた。

    (ッ、コラソンなんて名前のせいだ、あいつの声がコラさんの声に聞こえてくる。)

    断片的に思い浮かぶ妙にリアルで、ここではないどこかの映像、これが自分ではない自分の記憶なのだとしたら?前世と名付けるのが1番しっくりくる。

    初めて記憶を取り戻したのは、本当に突然だった。いつものように家族と会話をしていてふと感じた違和感。

    (ー・・・父様がなんでここに居るんだ?)

    あの日フレバンスで確かに、いやフレバンスってどこだっただろうか。断片的すぎて最初は白昼夢を見ているのかと思った。しかしその後も少しずつなぞるように、馴染んでいく記憶に確かにこれは"以前の"自分が経験したことなんだと理解した。

    何人か知っている顔に出会った。
    同じ時代を憶えている者もいたが、憶えていないのか、それとも憶えていないフリをしているのか分からない奴も多かった。

    記憶として馴染んでいくこととは裏腹に、現世での上手く掴めない距離感に戸惑いなじめないまま数年を過ごした。当たり前だが、時代も変われば風潮も文化も異なる、以前とは真逆の関係性をもった奴等も少なくはなくて生温い接触を繰り返し、少しの違和感が積み重なり大きくなるのも時間の問題で、真綿のようにじわじわと思考を締め付けていった。自分だけが前世に囚われて、世界に1人だけ存在しているような疎外感。

    なぜ誰も彼も幸せそうに笑っていられるのだろう。

    (…コラさんに逢えれば、記憶を取り戻した意味がきっとあるのに)

    きっと猫の飼い主は愛してないからすぐに迎えに来ないのだ。大好きだったあの人も愛してないから迎えにきてくれないのかもしれないと思うと視界が滲んでしまう。



    立てた膝に顔を埋める。真っ暗な路地裏、塞ぎ込めば男の声も小さくなり意味を成さないノイズへと変わる。

    ー・・・ぁいしてる

    聞こえた響きに思わず、身を乗り出してしまう。気のせいなんかではない、コラソンの声だった。

    「おまえに伝言、愛してるわ、だってよ。はは」

    そんなに大事にされてるなら預からないわけにもいかねぇよ、と男が笑う。

    【愛してる】聞き間違える筈がない、その響きを何度も何度も前世も今世まで灼けつけるように再生したのだから。

    ーロー、愛してるぜ!

    いつだって自分はその言葉に返す感情を用意していたではないか。


    (…あぁ、でも)

    ここから飛び出して、本当にコラソンがいたとして、彼は自分を憶えていてくれるのだろうか。ぎゅっと左胸を服の上から抑え込む。そうでもしないとドキドキと忙しなく脈打つ心臓が飛び出して彼の元へ駈けていってしまうかもしれない。こんなに五月蝿いのだ、拍動が聴こえてしまうかもしれない。

    (もし、忘れられていたら・・・)

    たとえ憶えていたとして、分からないのではないか?あの時代では13歳にしては成長が遅く、平均よりもだいぶ幼い見た目をしていた。今の自分はもうすぐ18歳になる。平均以上の身長に、あの頃に見た目を寄せようと伸ばし始めた顎髭と2連のピアスを付け、顔立ちもすっかり変わっている。唯一気づいて貰えそうなトレードマークの帽子はデザインは似ていても形を変えてしまっているし、なにより今は雨に濡れて鞄の中だ。


    (・・・一目だけでも確認したい。)

    傷つくことが怖くて、でも会いたくて
    音を立てないように立ち上がり、そっと覗きこむ。

    雨は止んでいる。

    軒先の乾いている木箱に軽く腰掛けて、男は煙草を吸っていたようで、細く煙が他靡いている。少し丸められた大きな背中は、大好きなあの人に似ていて、記憶の中の大好きだったあの人よりも随分小さく感じた。

    雨避けに深く被っていたフードは取り外されて、色素の薄い髪が街頭に照らされてキラキラと瞬いていた。口全体を覆うように軽く手を当てて、細く煙を吐き出すその仕草は何度も夢にみた記憶と変わりがない。

    (…逢いたかった。)

    今にでも走り寄って、抱きつきたい。湧き上がる衝動を必死に押さえつけて、ただただ彼をみつめていた。

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    Replies from the creator

    Fantome

    DONEフレバンスがあったら
    きっとローさんは頭がよくて顔も医者としての腕もいいと自覚しているスーパーモテ男なんだろうな。と思った妄想の産物(コラ←ロに見えるコラ⇄ロ)
    それは恋におちたと言うには長い前フリで女ってのはなんて面倒くさいんだろう。わざと相手に聞こえるようにため息を吐いた。感情が昂っているからか相手は気にする様子もない。

    「俺に不満があるなら別れればいい。」

    違うそう言う意味じゃないと騒いでいるが、興奮した高い声が頭に響いて耳障りだ。

    「付き合う時に言ってあるだろ?お互い面倒になったら別れるって、あんたもそれに了承した、だから付き合っていた。」

    物分かりのいい女だと思っていたが勘違いだったみたいだ。特に不満も無かったんだがこんなに面倒な女だったとは誤算だった。

    「今までありがとう。お別れだ。」

    話しは終わったと伝票を掴んで席を立つ。私はこんなに貴方を愛してるのにと叫んでいるがよくこんな公共の場で恥ずかしげもなく騒げるものだ、お店の人にも迷惑だろう。迷惑料も兼ねてレジに多めにチップを置いて、振り返ることなく店を出る。結構気に入っていた店だったが当分来れないなと本日何度目になるか分からないため息を溢した。この店の挽きたての珈琲がしばらくは飲めないのは惜しい、もう少し味わっておくんだった。そもそもデート場所に使うべきではなかった。
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