一心[一心]
「ねぇ、ちょっとアレ…」ねぇねぇ…!
スマホを見ていた友人の腕をつつく。
「えー、何? うわ、…やばっ」
あまりの光景に、その二人は口元に手を遣り、言葉を失った。
かっこよすぎない?
この女性たちを始め、周囲の一切の熱視線と興奮を一手に集め、噂話の標的となっている当人たちは、全く意に介さない様子だ。
一人は腕を組み、大きな双眼を見開き、前だけを向いている。金髪というだけでもかなり目立つ毛色なのに、その毛先は炎のように真っ赤に染まり上がっている。
そして、その隣にいるもう一人の男性は、頭一つ抜き出る大柄の長身で、銀髪がこれまた人目を引くが、少し気怠そうにポケットに手を突っ込んでいる。
とにかくこの2人が並ぶと、あまりの美丈夫さに見惚れた行き交う人々全員が、もれなく振り返る程である。『ここまできたら、もはや美の暴力である』と揶揄した友人も居たとか居ないとか。
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