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    うに。

    @Tartaglia_____Lです
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    うに。

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    マフィアパロ
    遂行も何もしてないけど出すなら12月の本に足せたらな〜と

    #タル蛍
    chilumi

    マフィアパロ タル蛍ん〜…よし、100枚ベットだ。どうせ負けても失うのははした金だしね」
    含みのあるような笑みを浮かべながら積み上げられたチップを差し出すこの男。
    歳は20程だろうか。
    青い瞳に橙色の肌。西欧のビスクドールのような白い肌に整った顔立ちをしており、その見た目から女性受けしそうな甘いマスクをしている。しかしそんな端正な顔をしているにも関わらず彼の表情にはどこか軽薄で小狡い印象を受けるのだ。
    それはまるで道化師が化粧をするかのような白々しい演技にも似た胡散臭さを感じさせる。光を映さぬ深海色の髪も相俟って、まるで深淵を覗き込むかの様な不気味さを醸し出していた。
    ここは、違法カジノの地下闘技場である。
    賭博場としての収益以外にも非合法な賭け試合や奴隷市場なども兼ねている地下施設であり、大企業の重役から極道やマフィアまで幅広い顧客層を抱えている。
    この青年も例外では無い訳で、彼は此処の常連客。
    海外に拠点を構える大型組織のボスに年若くして成り上がり、裏社会では名の知れた悪童としての顔を持つマフィアの若頭、"公子"。それが彼だった。
    酒にはめっぽう強く、女癖の悪さも相まって女遊びが過ぎると評判ではあるが仕事に関しては非凡なる才覚を持っており、その手腕で瞬く間に組織のトップへと上り詰めた若き傑物。
    そんな彼が何故こんな場所に居るのかと言うと、理由は単純明快。ギャンブル狂だからである。
    元々勝負事を好く性格ではあったが、とある事件を機にその性質がより一層顕著になっってしまったようだ。
    バニーガール姿の女性ディーラーの尻を追いかけ回すように視線を送りつつ、手元にあるカードに手を伸ばす。そして引いたカードを一通り確認するとニヤリと口角を上げ、一枚だけテーブルの上に伏せて置いた。
    「ふふん、来たよ来たよ。これなら余裕だね」
    「おぉ!これはこれは公子様!!なんという強運でしょうか!?まさかの一発大勝利です!」
    ディーラーの言葉と共に観客達が歓声を上げる。
    そうして出されたカードは、ハートのA。
    ポーカーにおいて最も強い役の一つであるファイブカード。それをこの男はたった一度の勝負で引き当ててしまったのだ。それもただの一回目で。
    本来ならばあり得ない事なのだが、それだけこの男の実力が高いということだろう。
    そんな圧倒的とも言える結果を出したこの男に対し、周りからは賞賛の声が次々と上がる。
    だが当の本人はそれに応える様子もなく、淡々と次のゲームの準備を進めていた。
    その様子を見て周囲の人間達は少しつまらなさそうな表情を浮かべる。というのもこのカジノにおいては、こういった派手な勝ち方はあまり好まれないからだ。
    イカサマでも何でもなく純粋に腕だけで勝ったとしても、その過程を見ずに結果だけを見れば不正があったと思われてしまう。故にこういう場で勝つためにはある程度の駆け引きが必要になるのだが、如何せんこの男はその辺りを全く理解していないらしい。
    その後も順調にチップを増やしていく中、ついに手持ちのチップが1,000枚を超えたところで彼は一旦手札を捨て、新しいカードを受け取る為にディーラーの元へと向かう。
    そこでディーラーから受け取った二枚目のカードはスペードのエース。またしてもロイヤルストレートフラッシュの完成であった。
    これには流石にギャラリー達も沸き立つ。
    しかしその反応とは裏腹に、公子は眉一つ動かさずに淡々と同じ動作を繰り返していった。
    その後三回ほど同じ手順を繰り返すとようやく手持ちのチップが2,000枚を超え、これで彼の手持ち資金は約6億となった。
    「あはは、今日も増えたねぇ」
    上機嫌な笑みを浮かべながら独り言ちるその背後から届くのは鈴のように綺麗でか細い声。
    「……あなた!もう、飛行機から降りた途端勝手に居なくならないでよ!探したじゃない……」
    金糸色の髪に琥珀色の双眼をした少女が彼を見上げながら怒りを滲ませる。
    彼女はサイドの後れ毛を緩く巻き、漆黒の花の髪飾りに紅石のピアスとネックレス、胸元の空いたセクシーなドレスを身に纏っていて。
    突然現れた絶世の美女に、会場中の男達も首ったけになる程に見惚れていた。
    「あ、あの!此方で2人でお酒でも飲みませんか!」
    「お姉さん、俺と熱い夜を過ごさない?」
    「いやいや、是非私と一緒に……!」
    下心を丸出しにした彼らが彼女に腕を伸ばしたその瞬間。
    「…………人の嫁に気安く触らないでくれるかい?殺すよ」
    底冷えするような低い声で呟かれた一言に周囲が固まる。
    先程までのヘラついた態度とは打って変わり、まるで氷のような冷たい目で彼らを睨むのは賭け事に夢中になっていた筈の公子。

    一瞬にして場の空気を凍らせた彼は、彼女の腰を抱き寄せ膝へと乗せるとその髪を優しく撫で上げた。そして蕩けるような甘い笑顔で彼女へと語りかける。
    「ごめんね蛍。寂しかったのかな?君があまりにも可愛いものだからつい意地悪しちゃったんだ。許してくれるよね?」
    「……もう慣れたよ」
    彼女がそう答えると公子はその頬に軽くキスを落とす。
    その一連の流れを見たギャラリー達は顔を真っ赤に染め上げて口をパクつかせており、そんな彼らを見て公子は愉快げに口元を歪ませた。
    「可愛いだろ、俺の奥さんなんだ。あんまり馴れ馴れしくしないで欲しいなぁ。それとさっき言った事は本心だから。もしまた僕の奥さんの手を煩わせる様な事があれば容赦無く殺しに行くから覚えておいてね」
    最後の言葉を聞いた彼らは青ざめた顔をしながら何度も首を縦に振る。
    「も、もう……。私だって、男性と遊びたい時くらいあるのに…」
    「俺を妬かせて怒られたいならいいよ?」
    不満気に頬を膨らませて拗ねる彼女を宥めるように、彼はその額にもう一度軽いキスを落とした。
    そしてその体勢のまま、ディーラーへと向き直る。
    「はい、次出していいよ。早く終わらせよう。これ以上待たせたら怒られそうだからね」
    「かしこまりました」
    公子の催促により、ディーラーは手元のカードを手に取るとテーブルの上へと広げて見せた。
    「おぉ!!これはこれは!なんという幸運でしょうか!またロイヤルストレートフラッシュを揃えております!」
    「うっそだろ!?」
    「マジか!!」
    「すっげぇ!!!」ディーラーの言葉を聞いて周囲から驚きの声が上がる。
    「はい。換金は次回でいいよ。さ、帰ろう蛍」
    公子はそう言うなり、妻の手を引いてカジノの出口へと向かった。
    そんな二人の背中を見送りながら、ギャラリー達は口々に語り出す。
    あれ程の豪運の持ち主ならば、このカジノのオーナーの座に就く事も夢ではないのではないか、だとすればあのカジノの今後の動向がどうなるのか、等々。様々な憶測が飛び交っていた。



    ホテルに戻り、一息つく。
    カジノでの一件以来、ずっと不機嫌そうな表情を浮かべていた妻であったが、流石に疲れが出たらしくソファの上で眠ってしまった。
    その寝顔を眺めていると、ふと彼女の鞄から何かが飛び出して来る。
    薔薇の花束にアクセサリーと思わしき小さな小包達。
    目を離した隙にカジノの客から貰ったのだろうか。あれ程強く牽制しておいたのにも関わらず、やはりこういった輩は後を絶たないらしい。
    「はぁ…………」
    公子は深いため息をつく。
    そして徐に立ち上がると、眠っている彼女の元へ向かい、その体を抱きしめる。
    すると彼女は無意識のうちに公子の服を掴み、そのまま胸に顔を埋めてきた。
    それを見て公子は微笑み、彼女の頭を優しく撫で上げる。
    だがその笑みはすぐに消え失せ、眉間にシワを寄せながらその唇を強く噛み締める。
    「……ねぇ、蛍。君は本当に俺を愛してくれてるのかな」
    彼女の肩口に顔を埋めると、その首筋にゆっくりと舌を這わせ、歯を立てた。しかしそれでも彼女は起きる気配はなく。
    それが無性に腹立たしく感じた公子は再びその体に腕を回し、その首に思い切り爪を立てる。
    痛みを感じたせいなのか、妻は小さく声を漏らすと薄らと目を開いた。
    しかしその瞳はまだぼんやりとしていて。意識がハッキリするまでの間、ただ黙ってその光景を見つめていた。
    するりとドレスの裾を捲れば左の太腿辺りに見えるのは、組織紋の鯨と自身のイニシャルを象った刺青。自分の背中にも大きく彫られているそれは紛れもなく夫婦である証で。
    「ねぇ……俺の事だけ、見ててよ…」
    鎖骨に止まる墨色の蝶を指先でなぞりながら、公子は彼女へと問い掛ける。
    けれどその返事は無く。
    ただ虚空を見据えたまま、自嘲気味に笑う事しか出来なかったのだ。




    「で、向こうの条件は?こんなに良い土地譲るだなんてさぞかし大層な見返りがあるんだよね?」
    そう問いかけると、目の前に座った男はニヤリと笑い、一枚の写真を差し出してきた。
    そこには妻程ではないけれど確かに美人と言える女が写っている。歳は恐らく二十代前半といったところだろう。
    公子はその写真をつまらなさげに見下ろすと、それをテーブルの上に放り投げた。
    写真に映るその女は整った容姿をしており、長い黒髪に睫毛、儚さを感じさせる白い肌、スレンダーな体型でありながらも出る所はしっかりと出ている。
    「オレの愛人とお前の妻を交換だ。悪い話じゃあないだろう?」
    簡潔に言えば、この男は蛍が欲しい、と。そう言っている訳なのだが。しかしそんな事を言われて素直に応じる人間など居る筈も無く。
    寧ろ公子にしてみれば、何とも馬鹿げた条件を出して来たものだと呆れ返る他無かった。彼はその口元に薄い笑みを浮かべる。
    そして男の顔を見るなり、1発蹴りを入れた。
    「ぐっ!?」
    「いやー、ごめんね。つい足が出ちゃった」
    「テメェ!ふざけんじゃねぇぞ!!」
    蹴られた頬を押さえつつ、怒りの形相でこちらを睨んでくる。
    その視線を受けながら、公子は愉快そうな表情で椅子に腰掛けた。
    「ははっ、君こそ随分ふざけた提案をしてくれたじゃないか。まさかとは思うけど、本気で言ってたりしないよね?」
    「本気も何も、これが一番お互いにとって有益な方法だと思うが?」
    「俺が根っからの愛妻家だってこの裏社会でも結構有名だったと思うんだけど。そんな奴相手に愛人と妻を交換するとか、普通に考えて有り得ないだろ」
    額に青筋を立てながら、公子は鋭い眼光を放つ。しかし相手は全く怯む様子無く、鼻で笑ってみせた。
    その態度が気に食わなかったのか、公子は再びその男の顔を殴りつけた。
    鈍い音が響き、相手の口の端から血が滴り落ちる。だがそれでも尚、男は余裕の表情を浮かべており、その口から流れる血液を拭うと挑発的な笑みを見せた。
    その行動に苛立ちを覚えた公子は、今度は鳩尾目掛けて拳を振り上げたのだが。
    「あなた…?何、してるの?」
    不意に背後から聞こえてきた声にピタリと動きを止める。そして恐る恐る振り返れば、そこには妻の姿があり。彼女は酷く冷たい目を向けながら、ジッと此方を見つめていた。
    その姿を見た瞬間、先程まで感じていた感情が一気に冷めていくのを感じる。
    そして冷静になった頭で考えた結果、自分が何をしようとしていたかを思い出し、冷や汗を流しながらその場に立ち尽くした。
    「あぁ、奥さん。君の旦那と少し取引をしていてね」
    「……取引?」
    「そう、ちょっとばかし良い物件があったもんで、それを譲る代わりに奥さんの体を要求したんだよ」
    男はヘラヘラとした笑みを浮かべながら、まるで世間話をするかのように彼女に語りかける。だがその内容は決して穏やかなものではなく。
    蛍は僅かに眉間にシワを寄せ、その瞳を細めた。
    するとその反応を見て満足そうに微笑んだ男は、徐に彼女の元へと歩み寄り、その腕を掴む。
    「どうだい?悪くない提案だろう」
    「……お断りします。私は貴方の愛人になるつもりはないし、ましてや夫以外の人とそういった関係を持つなんて絶対に嫌」
    きっぱりと拒絶の言葉を口にすれば、その男は小さく舌打ちをする。
    掴まれた手を乱暴に振り払うと、そのまま背を向け歩き出そうとする蛍の腕腰を強引に引き寄せ豊かな乳房を掴んだ。
    「いっ……!」
    そのまま首筋に舌を這わせようとした男だったが、それを阻んだのは他でもない公子の手で。
    彼の手にはいつの間に取り出したのか、バタフライナイフが握られており、刃先は男の喉元に向けられている。
    その切っ先が皮膚に触れると、男はビクリと肩を震わせた。
    「死ね」
    公子は静かに告げると、更に力を込めてその手に持った凶器を押し当てる。
    軽く刃を横へと引けば忽ち赤い線が生まれ、そこからじわりと滲むように赤黒い液体が流れ出た。それを間近で見ていた蛍は息を飲み、慌てて彼を止めに入る。
    その行為が面白くなかったのだろう。男は蛍の手を払うと、彼女を突き飛ばした。
    バランスを崩し倒れそうになったところを、すかさず公子が抱き止める。
    「……今突き飛ばしただろ」
    不機嫌そうに言い放つと、公子は男の首に当てたままだった刃物をそっと引いた。そして懐から拳銃を取り出すと、それを男に向けて構える。
    「ま、待ってくれ!オレはただ交渉をしようと……」
    「じゃあね」
    男が慌てふためく様を見ながらも、公子はその言葉を一蹴する。そして躊躇いなく引き金を引いた。乾いた銃声と共に放たれた銃弾は、男の腹部を貫いて鮮血を飛び散らす。やがて言葉を紡がぬただの肉塊となったそれに見向きもしないで、公子はそのまま蛍を連れてその場を去った。
    残されたのは、床に倒れたまま動かない男の死体だけ。それはまるで時が止まったかのように、ピクリとも動かずに。

    暫くすれば部屋には複数の男が入って来て、死体を運び出す準備を始める。
    『ちゃんと血痕ひとつ残さず処理してくれよ。コレでも一応向こうの参謀だったんだ、殺したと気付かれでもしたら事が大きくなる』

    濁った深海には、何も映らない。
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