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    れのる

    @Renoruu

    えっちなのとか多分置きます

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    れのる

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    穹丹+星なの のたんこ〜となのちゃんが恋バナする話 最近書けてないので昔書いたやつをあげます🥲行為を匂わせる描写あり うーん業が深い

    #穹丹
    #星なの

    この後美味しく頂かれた《丹恒、今度の週末予定ある?相談したいことがあるんだけど...》

    そんなメッセージがなのかか送られてきたのは丹恒が資料室でいつものようにアーカイブを整理していた時のことだった。突然鳴った自身の携帯の画面を確認して丹恒は首を傾げる。別に彼女から相談されることは珍しいことではない。大抵は些細な疑問や悩みで、丹恒が読書の合間に答えられるようなものだったのだが、わざわざメッセージを送ってくるということはあまり他の人には知られたくないのか。ともあれそんな風に頼られて断れるほど薄情でもなかったので了承の意を返すと、すぐさま感謝のスタンプとベロブルグ市内のカフェを指定するメッセージが返信されてきて丹恒は再度作業に戻った。



    「あっ、丹恒!ここここ!」
    「待たせたな、三月」
    「ううん、こっちこそ来てくれてありがとう!」

    クリフォト城前の広場で特徴的な桃色の髪を見つけて丹恒が声を掛けるとなのかはぱっと花の咲くような笑顔を見せた。ここで相談内容を聞くのも野暮かと思い連れ立ってカフェへと足を運ぶ。道中もなのかは少し緊張した様子で丹恒に話し掛けていた。そしてなのかに連れてこられたのは大通りから少し外れた、あまり人目につかないこぢんまりとしたカフェだった。予約してあるんだ〜となのかがニコニコと店員に話し掛け、案内されたのは完全個室。穏やかな色合いの照明と店主の趣味なのかアンティーク雑貨が至る所に配置されていて彼女にしては随分と落ち着いた店を選んだな、と丹恒は心の中で呟いた。そしてなのかは数量限定のケーキセット、丹恒はコーヒーを頼んで向かい合って座る。少ししてから運ばれてきた苺のケーキを見て目を輝かせるなのかに店員が部屋から退室したのを見計らって丹恒は口を開いた。

    「......で、相談というのは何なんだ?」
    「う、うん......それがね、......丹恒、怒らない?」

    明らかに顔を強ばらせて、なのかは窺うように丹恒を見上げる。何故なのかの相談で丹恒が怒ることになるのか分からないがここで留まらせても何も解決しないだろうと丹恒は静かに頷いた。

    「、......その、穹ともう...え、えっちした?」
    「ゴフッ」
    「わ〜っ丹恒!?」

    なのかの爆弾発言に丹恒は飲んでいたコーヒーを喉に詰まらせて咳き込んだ。持ち前の体幹でなんとか溢れることは阻止する。なんとも無害そうな顔をして何て話題を切り出してくるのだろうか。穹と丹恒が付き合っていることは別に列車の面々には伝えているしそれについて間違いはない。ただ、如何せん内容があまりにも赤裸々に話せることではない。漸く落ち着き始めて冷静さを取り戻した丹恒はじと、と胡乱げに目の前の少女を見つめる。

    「え、......性行為のことか。何故突然そんな話になる」

    なのかは記憶喪失なこともあり少々常識外れな言動もあるが、性根は至ってまともであり突然仲間の性事情に首を突っ込むほどとち狂ってはいないはずだ。それこそ同じく記憶喪失のまま列車に乗車した双子よりかは。丹恒の言葉を受けたなのかは頬をほんのりと染めてもごもごと口篭りながら弁明する。

    「う、ウチと星って付き合ってるじゃん?...その、えっちするとき、ウチって変なのかなって思うことがあって...こんなこと、他の人に相談も出来ないし......」

    先述した記憶喪失の双子の姉である星となのかは付き合っている。弟の穹と丹恒も付き合っているのだからミラクルである。そのことも既に列車の皆には知れ渡っていた。というよりは星がうっかり(?)口を滑らせただけだったが。パムなんかは純粋な瞳で祝いの言葉をかけてくるものだから流石の丹恒も気まずい思いをしたというのは別の話。何はともあれ、そんなそれぞれ双子の片割れと付き合っていて、尚且つ夜の営みに関することを相談出来るのはなのかにとって丹恒しかいないということは理解できる。しかもお互い列車という狭いコミュニティに属している身だ。相談出来る人物はただでさえ限られている。何も言わない丹恒が怒っていると思ったのかなのかはちらちらと不安そうに様子を窺っている。ぐ...と自分のプライドや羞恥諸々と目の前のなのかを天秤にかけて丹恒は眉を寄せて普段より幾分小さな声でぽつりと話し出した。それが照れているということはそこそこ長い付き合いのなのかからしたらバレバレだったのは言わないでおこう。

    「......それなりにはしている方だとは思うが。三月は何が変だと思うんだ?」
    「う、うん。えっとね、よく星がウチの項辺りをがぶがぶ噛んでくるの。痛いからやめてって言ってもやめてくれないし...し、しかも最近なんか噛まれる度にじんじん?して気持ちよくなっちゃってきて...やっぱりウチ変なのかなぁ...」

    ......思ったより返答に困る話題だった。一体何を話しているんだ、と言いたいのを本気で悩んでいるらしいなのかを前に堪えて、丹恒は半ば諦めの気持ちで頭を整理する。項を噛まれて困る。これについてはまぁ、猫などの動物の交尾ではオスがメスの首を噛む行動が見られるらしいから、そういうことだろう。確か行為が終わるまでメスを逃がさずに排卵を促すため...だったか。問題はそれになのかが恐らくは性的興奮を得てしまったことだろう。...ふと、丹恒の脳裏にある光景が浮かぶ。遠くない記憶のうち、自らが穹に揺さぶられながら首の後ろ...丁度項を甘噛みされているもの。......そこで丹恒は気づいてしまった。あの双子が、同じようなことをしていることに。しかも噛まれた項に真っ先に丹恒が感じたのは痛みでも嫌悪でもなく、穹の独占欲にあてられ、獲物として喰らわれる悦びだったというのだから、丹恒も人のことを言えない。そんなことを考えていたからか、分かりやすく目元を赤く染めた丹恒を不思議そうになのかが見つめていると2人の止まってしまった時間を呼び覚ますかのように陽気な着信音が鳴り響いた。びくりと肩を跳ねさせ、なのかが慌ててスマホを覗き見る。どうやら相手は件の人物だったらしい。伺い立てるような視線に了承の意味を込めて頷くとなのかは画面をタップしてスマホを耳元まで掲げた。

    「星?今?丹恒と一緒にいるよ。......うん、ベロブルグの......あっなんでもない!2人でお茶してるだけだから!、......うん、えっと、ちょっとまってて」

    危うく所在地を言いかけて慌てて誤魔化すなのかに丹恒が呆れながらも見守っていると穹が会話をしたがっている、とスマホを手渡された。はて、と思いつつも聞こえてくる声に耳を澄ます。

    「...あ、丹恒?今なのと居るんだってな。言ってくれれば俺と星も一緒に行ったのに」
    「...いや、生憎三月が狙っていた限定ケーキセットとやらは1日の数量が限られているらしくてな。お前達のどちらかの分が無いと拗ねるだろう」
    「......まぁ、確かにそうだけど」

    即席にしてはなかなか説得力のある事実を織り交ぜた嘘を平然とつく丹恒になのかは憧れの眼差しを向ける。そのままスピーカーにして、と言われ指示通りに画面をタップすると一緒に居るらしい星の声が混ざってきた。

    「なの、丹恒。2人でデートとはいい度胸してるね。私と穹は置いてけぼり?」
    「そうだそうだ、なのは星と行けば良いじゃん?俺だって丹恒とデートしたい」

    「ち、違うよ!ウチが丹恒にそう...んむ!」
    「......穹、デートは今度行こう。お前のおすすめの場所に連れて行ってくれ。星も三月が一緒に服を買いに行きたいと言っていた」

    もう喋らせるとロクなことにならないと判断した丹恒はなのかの口を反射的に抑えるとテーブルの中央に置かれたスマホに向かって宥めるように話しかけた。聡明な双子のことだ、言外に丹恒が今回は見逃せ、と言っているのが理解出来たのだろう。しぶしぶ、といったように納得して、丹恒がほっと息をついたのも束の間、星が「なら最後になのの頼んだケーキが見たい」とただをこね始めた。まあそれくらいなら、となのかはそのまま写真のアプリを起動して自身とケーキ、それから丹恒も写るように写真を撮ってメッセージ機能にて送信した。それに満足したのか、星は早く食べないと生クリーム溶けるよ、なんて言葉を残してそれきり双子の声は聞こえなくなった。...なんとも変なところで鋭い双子である。ケーキの存在を思い出したのか、スマホのケース面を上に向けてテーブルに置いたなのかが頂上のつやつやの苺を食べ始めた。そんな中んん、と咳払いをした丹恒は真っ直ぐになのかを見つめる。双子からの電話というハプニングこそあったが、元々はなのかの相談に乗っていたはずだ。答えになるかは分からないが不安、という点においては安心材料になるだろうと丹恒は羞恥を押し殺して言葉を紡ぐ。


    「その...項を噛まれるという話だが、動物の中には交尾中にメスの項を噛むものもある。例を挙げるなら猫辺りか」

    猫ちゃん!と瞳を輝かせるなのかには申し訳ないが項を噛む理由はそんなに甘くないものなのだ...とは言えなかった。そして、丹恒はそれこそ誰が見たって分かるほど頬を薔薇色に染め上げて水を求める魚のように口をはくはくさせて、少ししてから漸く声に乗せることが出来た。

    「......俺も、穹に項を噛まれると......き、気持ちいいと感じる、から......三月が異常という可能性は、低い、と思う」

    言ってしまった。誰にも、穹本人にだって言うつもりなど無かったのに。ぽかん、と呆気に取られたような顔をして固まるなのかにいたたまれなくなって丹恒はすっかり冷めたコーヒーを口に含んだ。意識するとなんだか項の辺りがぞくぞくするのなんてきっと気の所為だ、そうに違いない。暫く無言の時が続くと、ようやく意識が浮上したなのかがぱっと丹恒の手を取ってぶんぶんと振る。

    「ほ、ほんとにほんと!?ウチだけじゃない!?......よ、良かったぁ...てっきりウチが変なコトに目覚めちゃったのかと...」
    「三月が安心出来たなら、それでいいが...」
    「......よし。じゃあウチの悩み解決してくれたお礼に丹恒も穹とのことで悩みがあったらどーんと相談してくれていいよ!ウチは話すだけでも安心したし」

    覚悟を決めたような顔をしたなのかに更なる爆弾を投下されて今度は丹恒が固まる。...100パーセント悪気のない善意に基づいた発言であることは疑いようのないのだが。流石にこれ以上自らの醜態を晒すような真似は如何なものか。丹恒が何も言えずにいるとなのかは不安げにウチじゃ役不足?と捨てられた子犬のような瞳で小首を傾げた。やめろ耳を垂らすな、なんだかこちら側に非があるみたいになるだろう!とも言えず、丹恒は必死に穹との恋人になってからのめくるめく記憶を思い起こそうとしていた。悩み...悩み...?そんな大層なものが自分にあるのか。ただでさえ穹に流されてしまうばかりなのに、とそこまで考えて丹恒ははっと思い立った。果たしてこれを悩みと言っていいのかは疑問だが、少なくとも困っていることには違いないだろう。もうここまで来たらヤケクソで丹恒口を動かした。

    「そ、そのだな......普段はいつも穹に任せ切りで、俺は受け身なばかりなんだ。だから、穹を満足させてやれているのかと...」

    行為の誘いだって恥ずかしくてロクにしたことは無いし、いざ始まると緊張と羞恥と、それから穹から与えられる快楽で頭が真っ白になってしまう。いつだって準備に時間も手間もかかる丹恒の身体を優しくほぐして、穹のものが受け入れられるくらいまで溶かされてしまう頃には丹恒はすっかり何も考えられなくなっているのだ。そのことをなるべくオブラートに包んで話すとふんふんとなのかは興味深そうに頷いた。

    「わかるよ、ウチもいっつも星に流されて気づいたら朝になってるとかよくあるもん」

    それは流石にどうなのだろうか。丹恒にも中盤くらいまでなら記憶はきちんと残っている。

    「でも、穹から誘ってくれるんでしょ?少なくとも満足してなかったら穹から誘わないと思うよ」

    偶にウチが夜に資料室行こうとすると穹に牽制されるもん、となのかから告げられるとんでもない事実に丹恒は再度思考停止を余儀なくされた。資料室はあくまでも丹恒が仮の寝床にしているだけであって、元は公共スペースだ。まあ夜に調べ物をしようとするなのかにも少しくらいは非があるがそれにしてもそんなことをされれば"今から丹恒とセックスします"と言っているようなものではないか。......まぁ、それはそれとしてなのかの言うことには一理ある。先程は"それなりにしている"と答えたが正直に言うと週に3.4回は穹と致している。世間一般の行為の頻度は分からないが明らかに平均よりは多いだろう。しかもその殆どが穹から誘われるものだ。なら、期待してしまってもいいのだろうか。決して丹恒だけが満足して、求めているのでなく、穹も同じように思ってくれているということを。

    「確かに...そうかもしれない。少し考えが足りなかったな。...三月、ありがとう、お前の言う通りだ」
    「気にしないで!ウチらってば似たもの同士だもんね!」

    お互い破天荒で何を考えているか分からない双子が恋人で、振り回されてばかりいる。そんな2人が今までは内に秘めていた不安やら惚気を1度吐露してしまえば、歯止めが効かなくなるのは必然で。折角なら恋バナしよ!恋バナ!と純新無垢な笑顔を向けられてしまえば、丹恒は普段の生真面目さをほんの少し緩めてなのかとの恋バナに乗じるのだった。

    「ウチはその、星と一緒に開拓の旅をするうちにね?いつの間にか、好きになってたんだけど...丹恒はいつ穹のこと好きになったの?」
    「いつ...と言われると正確には答えられないが...自覚したのは羅浮での問題が解決した辺りだろうか」

    丹恒の隠された過去を知ってなお、穹は丹恒を丹恒として見てくれた。勿論なのかや星含めて列車のメンバーは皆丹恒を受け入れてくれたが、穹のあの、少し高めの声で名前を呼ばれるとじわりと胸に温かさが広がるのに気づいたのは、いつだったか。丹恒、と甘さの滲んだ声で名前を呼ばれる度に自分は自分なのだと、丹恒のままで良いのだと言われている気がして堪らなく嬉しくなる。そんなことを言うとなのかがニマニマと口角を上げる。

    「丹恒からそんな惚気が聞けるなんて思わなかったよ、確かに穹に名前呼ばれるとすご〜く嬉しそうな顔してるもんね!」
    「...それは否定しないが。三月だって似たようなものだろう」

    そんなに露骨に嬉しそうな顔をしていたのか、自分は。最近気が緩んでいるのかもしれないと思ったのと同時に揶揄うような微笑ましいものを見るような視線に何か仕返しをしてやろうと丹恒はつい先日ラウンジで見かけたやり取りを引き合いに出した。

    「この前星に"なのか"と呼ばれた時声も出せないくらい照れていただろう」

    たまたま丹恒がラウンジに入った瞬間にソファにゼロ距離で座って肩を星に抱かれたなのかが愛称ではなく"なのか"と呼ばれて首まで真っ赤にしていたのは記憶に新しい。丹恒に気づいていた星はなんでも無いような顔で自室へと戻って行ったが。丹恒としてはただ、ほんの意趣返しのつもりだった。それなのに丹恒の予想に反してなのかはぶわっと茹でダコのように赤くなりだらだらと汗をかき始めた。そして口をとんがらせてあちこちに視線を揺らがせながらもじもじと話し出す。

    「だ、だって......"なのか"、なんて...そーいう時にしか呼ばれないんだもん......」

    そーいう時。なのかの反応とその言葉で丹恒は自分が何を言ってしまったのか気づいた。もしかして、自分はとんでもなく恥ずかしいことを言わせてしまったのではないだろうか。

    「そ、そうか......すまない...」
    「いや、いいよ別に......今日はそういう話する為に来たんだし...」

    それきり2人してだんまりと口を噤んでしまって、暫し沈黙の時が流れた。そしてそれに耐えきれなかったなのかがぱん、と自身の柔らかそうな頬を叩いてきっと丹恒を真っ直ぐ見つめた。さながら戦闘中に敵に向けるような強さを含んでいる。

    「も〜こーなったらヤケだよ!今日は普段言えない不満も惚気も洗いざらい吐くし吐いてもらうんだから!」

    覚悟してよね!とびし、と指さされ丹恒はまた面倒なことに巻き込まれたとため息をつくのだった。



    「星ったらウチのこと揶揄うみたいに可愛い可愛いって言ってくるの!確かにウチは美少女だけど、なんか恥ずかしいし...」
    「まぁ...それは、分かる気もするな。三月や星にならまだしも俺に言われるとむず痒いというか...」
    「でしょ?嬉しいけど...もやっとするって言うか...ちょっと照れるっていうか...」


    「怪異退治隊での活躍で星と穹は知名度も高くなっただろう、その、よく応援メッセージの中に本気で穹に恋をしているようなものもあってだな...穹の恋人は俺なのに、と思うことがある」
    「わかるー!!!2人とも恋人いるって言ってるのに何でそういうメッセージ来るんだろね?しかも星ったらウチに見せてくるんだよ!?"見て、なの。銀河打者って美人で背も高くて素敵だよね、付き合いたい。だって"って!!星と付き合ってるのはウチだもん!」


    「周りに人いっぱいいるのに急にちゅーとかしてこない?恥ずかしいからやめてって言っても可愛くてつい、とか言って誤魔化すし...嬉しいけどさぁ...」
    「そういえば急に路地裏に連れ込まれたこともあったな...やはり双子ということもあってそういう趣向も似ているのだろうか」


    「飲月の装束がやたら性的だと詰られる。まぁ、やたら布面積が少ないことは認めるが俺の意思で着た訳でもないのに何故穹に怒られるのか理解出来ない」
    「う〜ん...でもウチもちょっとアレはえっちだと思っちゃうけど...。穹の気持ちも分かるかも。だっておっぱいのとこなんであんなに開いてるの?星に真顔で"丹恒と私、どっちが胸大きいと思う?"って聞かれたときウチ返事に困っちゃったもん...」
    「......暫く、飲月の姿にはならないことにする」
    「うん、それがいいと思う。...穹には悪いことしちゃったかもだけど」


    坂道を転がるように2人の話はエスカレートしていき、当初もじもじとしていたのが嘘のように恋人に対してほぼほぼ惚気とも言えるような不満を吐き連ねる。そして丹恒がコーヒーのおかわりを頼む頃にはすっかり人には聞かせられないような話題にすり替わっていた。


    「丹恒と穹って、その...資料室でシてるよね?列車の壁ってそんなに防音じゃないし、ウチの声とか聞こえたり...しないよね?」
    「今のところはしていないが...。そちらこそ、俺の声は聞こえていないな?」
    「う、うん。大丈夫!...声抑えようとすると星が寧ろ躍起になって声出させようとしてくるからさぁ。廊下まで聞こえちゃうんじゃないかと気が気じゃなくて...」
    「そんなところまで似なくて良いんだがな...穹も同じだ。全く、男の声なんて何がいいんだか...」


    「.........キスが異様に上手い」
    「だ、だよね?!星もだけどこう...いつの間にかへろへろにされちゃうの仕方ないよね?!ウチが下手なんじゃなくてあっちが上手すぎるんだって!」
    「偶に耳を塞がれると音が、......、響いて何も考えられなくなる」
    「なんかちかちかしてきちゃうよね......まあ、嫌じゃないけど」


    「2人って手袋してるじゃん?...その、丹恒は外して欲しいって思う?」
    「...、それは、行為をするときという意味か」
    「う、うん」
    「......偶に、邪魔だとは思う。ただの布1枚であることは分かっているが...出来れば直接穹に触れて欲しい」
    「うん、ウチも一緒。でも本人に言うとぜーったい揶揄われるから!気をつけなよ!」
    「(揶揄われたのか.........)」


    「......自分では気にしていなかったのだが、穹にその...胸が大きくなったと言われて...」
    「そうかなぁ?まあ丹恒は元々おっきいから...。ウチも星も飲月の時のおっぱいはガン見しちゃったし...穹とかすっごい目で見てたもんね...」
    「...訂正するとおっぱいでなく胸筋だ。柔らかくもないだろうに、しつこく揉まれる」
    「うん...星も同じだよ。2人しておっぱい星人なんだから......丹恒大丈夫?星にこう指ずぼってされたりとかしてない?」
    「.........」
    「されたんだ......。ウチもしていい?」
    「駄目に決まっているだろう」


    「そもそもなんでいつもはあんなにゴミ箱とか漁る変人のくせに急に色気マシマシの美人になるの?顔?顔がいいから?」
    「その切り替えはいつもながら感心してしまうな...。黙っていれば2人ともまぁ、顔は整っているとは思うが」
    「うぅ〜なんか悔しい!いつかぎゃふんと言わせてやるんだから!なの、かっこいい...抱いて♡って言わせてあげる!」
    「(......その"いつか"は訪れないような気もするが言わないでおこう)」


    「穹も痕を残したがる傾向が強いな。キスマークならまだしも噛まれるのは......、......」
    「嫌じゃないんだ?」
    「.........」
    「分かるよ。なんか、独占欲?っていうのかな。星がウチのこと繋ぎ止めてくれる感じがして、痛いけど嬉しいし見る度に愛されてるな〜って思う」
    「...三月のそういう素直なところに星も惹かれたんだろうな」
    「な、なに急に?照れるからやめてよ......」


    そしてなのかが紅茶まで飲み終える頃には丹恒が当初予想していた時間を大幅に過ぎていた。少し話し疲れはあるものの、今までは口に出来なかった自分の気持ちを吐き出すことで、胸の内はスッキリとしている。恋バナも案外悪くないものだな、と丹恒が思っているとなのかが不意に呟いた。

    「いっぱい話したけど、なんだかんだ言ってウチら星も穹も大好きだし、一緒に居れてすっごく嬉しいんだよね。ウチ、記憶喪失で何も覚えてなかったけど、星に会えて良かった」
    「...俺も同じだ。穹に会えて、恋人になれたこと、とても喜ばしく思っている」

    ほわほわとした雰囲気の中なのかが立ち上がる。んーっと伸びをしてぱっと笑顔を見せると、それを見て丹恒もふっと微笑む。穹も、星も、勿論なのかも丹恒にとっては大切で大事な家族であり、自身の生い立ちからは考えられないくらい幸せで充実した日々を他でもない彼らと送れている事実が、堪らなく嬉しかった。

    「よし!そろそろ帰ろっか。なんか話してたら星に会いたくなってきちゃったな〜。今日くらいは好きにさせてあげてもいいかも!」
    「まあ......それもそうか。きっと2人とも寂しがっているだろうからな」
    「うん!」

    そう言って2人が店から出て1歩歩き出した時だった。────見慣れた銀髪の双子が店の前に立っていると気づいたのは。

    「は、......」
    「えっ......、?」

    声も出ない2人の肩にポン、と手を置いてニコリとそれはそれはお手本のような笑みを浮かべる。

    「た〜んこう」
    「なの」

    その瞬間丹恒となのかの背筋にとてつもない悪寒が電流のように迸った。なにか、いやなよかんがする。冷や汗をかきながらもまだ冷静になれた丹恒は店から出てきたのを見られただけで、何もおかしなことはない、電話で2人でお茶をしていることは話しているし、出会ったのも偶然だろう、と考えた。しかしそんな淡い期待はいとも容易く打ち砕かれることになる。

    「せ、せいにきゅう...?どうしたの、なんでこんな所に」
    「なのが送ってくれた写真から特定した。ベロブルグは私達の庭だよ」
    「ひえ.........っ」

    震える声でなのかが問えば星はなんて事ないように言う。仄かな恐ろしさを感じる星の笑顔になのかは思わず悲鳴を零す。丹恒も動揺を隠しきれずに後退ると肩に置かれた穹の手に力が入るのを感じた。

    「なんだっけ、丹恒は俺に噛まれるのも、本当は嫌じゃないんだよな」
    「ッ、な、んで......それを...。まさか、」
    「なの、スマホ見てごらん」

    星に言われ取り出したなのかのスマホの画面右上の円にはバッチリ【星:通話中】の文字が。星がにこにこと笑う。滅多に動かさない表情筋をこんな時だけ動かすんじゃない。まさか、まさか。ケーキの写真を強請ったのも最後になのかにケーキを早く食べるように催促したのも、全て計算づくだったというのか。メッセージアプリを起動することで、通話を示す画面は右上に小さなアイコンとして追いやられ、生クリームが溶けることを危惧したなのかは星と穹の声が聞こえなくなったことで通話が切れたのとばかり勘違いして、そのままスマホを放置する。なのかのことを知り尽くした星ならではの手法だった。そのことに気づいてしまった丹恒は顔色を悪くする。もし、それが本当なら......最初から最後までこの2人に会話が筒抜けだったことを意味する。

    「丹恒、気づいたみたいだね。2人してこそこそ何話してるのかと思えば......ふふ、」

    星が目を細める。獲物を前にした獰猛な獣のように舌なめずりをする姿になのかは身体を縮こまらせた。

    「なのにはあんなに素直に喋るんだな、丹恒。......まぁ、全部聞けたからいいけど」
    「ひぁっ......、おい......!」

    つつ、と項をなぞられて丹恒が肩を跳ねさせる。心做しか潤んだ瞳で睨みつければ全く効いてないと言わんばかりに爪でかりかりと掻かれ、丹恒は息を詰まらせた。そして耳元で普段よりも幾分低い声で囁かれて、腰が砕けそうになる。

    「今日は帰らないって姫子に伝えてあるから。...口だけじゃ伝えきれないから、俺がどのくらい丹恒のこと好きか、身体で分からせてやるからな♡」
    「かっこいい、抱いて...だっけ。是非、私に言わせてほしいな..."なのか"」



    そうして憐れな獲物達は、2人の獣に美味しく頂かれてしまうのでした。めでたしめでたし。





    おまけという名の蛇足

    「あれ?丹恒は?なのもいないのか」
    「どうやら2人で出掛けたらしいね、パムが言ってた」
    「2人で?珍しいな。俺と星も誘ってくれれば良いのに」
    「......電話してみようか」

    中略

    「早く食べないと生クリーム溶けるよ、.........よし、ミュート完了」
    「流石星。...んーと、なになに?......項?」
    「穹に噛まれると......って、」
    「た、たたた丹恒!?な、なに言ってるの!!!えってか気持ちよくなっちゃうの!?え!?」
    「珍しいね、丹恒がデレるなんて」
    「そういうのは俺にやってくれ......あ、」
    「」
    「なのも...気持ちよくなるんだ......」
    「なのの可愛いところは私だけのもの。よし戦争だ」
    「それ言ったら丹恒の可愛いところは俺だけのものだ。やるか」
    「バット構えて、......ちょっと待った。何かまだ喋ってる」
    「?......丹恒...!?ど、どうしたんだ...何時でも満足どころか大満足させてもらってますけど...」
    「......ねぇ、穹。もしかしてこの2人恋バナしてる?」
    「......だと、思う。あの丹恒がこんなにあけすけに喋るとはあんまり思えないけど...」
    「、...和平条約を結ぼう。多分、いい事が聞けると思う」
    「イエッサー。因みになのから送られてきたケーキの店はもう特定済み」
    「我が双子の弟ながら素晴らしい仕事ぶり。因みにこの音声は録音済み」
    「あなたが神か」


    「.........星さん、1つ提案が」
    「.......なに」
    「正直もう我慢出来ないので突撃しませんか。その後ホテル行きたい」
    「欲に忠実だね、嫌いじゃない。......姫子に外泊するって送っておいた」
    「ん。......ほんっっと...可愛すぎる......」
    「なのは私のだから」
    「分かってるよ、でも俺は丹恒の1部だから」
    「マウントとらないで。......行くよ、穹」
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