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    きさき ひめ

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    きさき ひめ

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    次の話で絶対にえっちさせるからね。絶対だからね。
    (えっち文章の練習として書き始めたものです)

    #ドラロナ
    drarona

    足らぬ言葉と熱視線 ロナルドは悩んでいた。それは人からしたら小さな悩みであり、ロナルド自身も「いやしょーもないな」と思っている。さらに、その内容は恋人……今でもお付き合いをしているという自覚が湧かないが、すぐからかってきてすぐ死ぬ同居人についてのことだ。
    「クソッ……関係を進めるって、どうすればいいんだよ!」
     これがロナルドの目下の悩みだった。

     ロナルドはドラルクに告白した。あの時はもう限界だったし、ただでさえ一緒に住んでいて距離が近いのに気持ちを隠し通すにも無理がある。恋愛経験五歳児と揶揄されるだけあって、ロナルドには余裕がなかった。ドラルクの作った唐揚げを口一杯に頬張ってるうちにぼろぼろ涙が溢れて、最終的に絞り出すような声で告白をした。
     好きだ。ごめん。それだけを言って泣き続けるロナルドを見て、ドラルクは目線をよそに逸らして何か考えた後、私もだよと言ってのけた。ぽかんと口を開けて顔を上げたロナルドのなんと間抜け顔なことか!ドラルクは今でもたまに思い出しては棺桶の中でひとりクスクス笑っている。
    「それで最近夜泣きしてたのかい」
    「夜泣き言うな」
    「私に相談もないのはおかしいと思っていたんだよ。ギルドの人たちに聞いても微笑まれるだけでね」
    「うるせー」
    「ロナルドくん」
    「なんだよ」
    「思いが通じ合ったなら、次にやることがあるよね?」
     こうして二人はお付き合いを始めた。ジョンは頬を染めて祝福してくれたし、ギルドは二人の門出に乱痴気騒ぎになったし、ドラウスは発狂した。

     それが三ヶ月前のこと。

     ノートPCの光が瞳を刺す。原稿のウィンドウを端に寄せ、ロナルドが必死に見つめているのは検索エンジンだ。椅子の上で手負いの獣のような唸り声をあげつつエンターキーを押した先には「恋人 三ヶ月」の文字とその二単語の検索結果たち。
     慣れてくる時期。二人の温度差が出てくる時期。倦怠期になる。後ろにいくにつれて恐ろしい単語が出てくるのを、ロナルドは震えながら見ていた。いつものデートのマンネリ化、喧嘩と意見交換の履き違え。そこまで読んでからロナルドは勢いよくPCを閉じた。心当たりがありすぎる。デートはいつもシンヨコ内をブラブラ歩き回るだけ。喧嘩は毎日どころか毎秒している。というか、待って、俺、最後にキスをされたのはいつだっけ……?
     ヒュッ、と喉が鳴る。そういえば最近手を繋いでもいないし、忙しくてデートも出来ていない。ロナルドは退治と原稿とトンチキ吸血鬼どもの対応に追われており、ドラルクもそんなロナルドを気遣って退治に着いていく回数を減らし、家でしこたまご飯を作って待っていて、ご飯の後は風呂そして入眠。こんな生活では関係性は前進どころか後退してしまう。なんとかしなければ。こういうのってどこに相談すればいいんだ。ギルドのメンバーはもう真面目に聞いてくれねえし、そもそも男に相談するのがまず間違いか?こういう恋愛ごとの話は女性の方が上手いイメージがある。ギルドメンバーではない、ロナルドがこういった恋愛話をしても笑わない、ロナルドが今すぐ呼べる女性。ロナルドは混乱と不安で頭の中をごちゃごちゃにしながら居住スペースに飛び込み、ドラルクが朝食用に作り置きしていたバナナマフィンの皿を引っつかんで事務所に戻ってきた。
    「ヒナイチ!おやつ食べるか!」
    「ちん!」
     五秒で現れるインスタント駆け込み寺とはこのことだ。ロナルドは少しほっとすると同時に、ヒナイチが誘拐でもされやしないかと心配になった。

     ソファに座って向かい合い、事の顛末を洗いざらい話す。ロナルドにとってはまさに羞恥の極みだったが、ヒナイチが真剣に聞いてくれたためなんとか憤死せずに済んだ。もごもごとバナナマフィンを咀嚼し、ごくんと飲み込む動きが小動物のようだなあと現実逃避をしていれば、お茶で口内を整えたヒナイチはスッとこちらを見据えて口を開く。
    「そこまで不安なら、お前から言えば良いんじゃないか」
    「……俺?」
    「そうだ。今不安に思っている事とか、手を繋ぎたいとかそういうのだ」
     予想の五百倍真面目な答えが返ってきた。なんとなく相談を聞いてもらえれば満足だと思っていたロナルドからすれば、意外であり、有難くもあった。なんせ相談相手が居なくてどうしようもなくて呼んだ相手である。頼れるなら万々歳だ。
    「ちなみにこれは私が三歳の頃、母に甘えたいが恥ずかしくて出来なかった時期の経験からのアドバイスなんだが……」
    「やっぱり恋愛偏差値クソガキってことかよチクショー!!」
     ソファでのたうち回ってワンワン泣くロナルドを、ヒナイチは暖かい目で見つめる。ヒナイチには、何がロナルドをそんなに恐怖に陥れているのか理解できない。好きなら好きと言えばいいし、手を繋ぎたければ伝えればいい。寂しいも悲しいも健全に共有して育ってきたヒナイチならではのアドバイスは、余計にロナルドを苦しめた。
     そして何を隠そうこのヒナイチ、クッキーで買収されており、クッキーと引き換えにほぼ毎日ドラルクの惚気を聞いていた。やれロナルドくんが可愛いだ、やれウブすぎて手を出せないだ、とにかくそのようなことをドン引きするほど聞いていた。最近は右耳から左耳へと話をすり抜けさせる術を習得したほどだ。そして、ヒナイチはパウンドケーキで口止めもされている。そんなこんなで、今のヒナイチがロナルドにできることは、大丈夫だと言い続けることだけだった。
    「とにかく、きっと大丈夫だから!」
     あれよあれよという間にバナナマフィンを食べ終えたヒナイチは、そのまま吸対で仕事があるから、と事務所から出て行ってしまった。駆け込み寺即終了。救いの神など居なかった。
     そうこうしてロナルドが悩みに悩んだ結果選んだのは、自分達の関係を進めること。手は繋いだ。キスもした。ならばちょっとくらいえっ……ちな雰囲気になってもおかしくないのでは!?恋愛経験五歳並みの精一杯である。
     ロナルドから見たドラルクはムカつく同居人で、クソ雑魚で、相棒で、それと同時に非常に紳士な恋人だった。ロナルドが良いと言えば進み、嫌と言えば止まる。嫌の種類も様々であり、恥ずかしい・緊張する・キャパオーバーなどすべての場面でロナルドはドラルクに我慢を強いて来た。ドラルクは鋼の精神と年の功をもってロナルドを緊張させないように、いつも通りにと振る舞っていたのだが、自分の感情の始末で手一杯のロナルドにそのような繊細なことに気付ける余裕などない。ただでさえ相手の態度をマイナスに捉えてしまいがちなロナルドは、ぐるぐるとした思考の果てでついには己の魅力などというものは一切信じられなくなり、あろうことか飽きられ始めているとも思っていた。
    「ドラ公を誘惑するにはどうすればいいんだ……」
     そうして行き着く先がこれである。先程ヒナイチに言葉にしろと言われたばかりだが、それが出来ていたらこんなに悩んでもいない。ロナルドの理想は、ちょっとそういう雰囲気を出して、ドラルクがなんとなくそれに気付いて、そのまま何か進展があれば……というなんともワヤワヤなものだ。仕方ない。突っ立っていても何もわからないので、朝閉じてそのままにしていたノートPCを開き、検索エンジンに「恋人 誘惑」と打ち込む。すると女の人のエッチな下着姿がはちゃめちゃに出てくる。さっそく挫けた。ロナルドはそれで思い出したが、そもそも世の中は男女で付き合うこと前提で話が進みがちである。男同士でしかも吸血鬼と人間となると調べるのに時間がかかるだろうし、調べてるうちに今みたいに徐々に傷ついていくのは目に見えていた。ため息をひとつ。ロナルドは全てのウィンドウを閉じ、ノートPCの電源を落とした。もうあと数時間すればドラルクの起きる時間だ。それまでに何とか、何かしらを考えてなければ。結局ロナルドは一人頭を抱え、ドラルクが起きてくるまでその姿勢でいた。

    「地蔵がオムライスを食べてる」
    「うるせえ」
     いつも通りもりもりと目の前のご飯を食べまくるロナルドを見て、ドラルクはほっと胸を撫で下ろす。さっきまではとにかく酷かった。
     起きてきたドラルクはまずテーブルに置いたバナナマフィンが無くなっていることを確認し、冷蔵庫の作り置きが減っていないことに気付き、この若造め朝飯は食ったけど昼飯は忘れたなんてアホなことしたのかと事務所の扉を開けた。目に飛び込んでくるのはノートPCも開かないまま頭を抱えてデスクに向かうロナルドの姿。一旦ドアを閉めてしまったけど誰だって閉めるだろあんなもん見せられたら。意を決してもう一度ドアを開けば、目の前にロナルドが立っていた。びっくりして死んだ。足音もなく移動するな。B級ホラー映画か君は。ゆっくり、サラサラと蘇生するドラルクを見下ろしたまま、ロナルドは固まっている。
    「……ロナルド君?」
     さすがにこれはおかしいと思い、恋人に声をかける。いつもだったらやい腹が減ったやいこれから退治だと起き抜けのドラルクをこき使うのに。まるで魂が抜けたのかというほど静かなロナルドを見て、ドラルクはだんだん心配になってきた。
    「どうした?何か嫌なことでも?原稿が進まなかったとか?」
    「……原稿はしてないけど違う」
     してないんかい。思わず口から出そうになったツッコミを飲み込む。ここでコントを始めても殴られて死ぬのがオチだ。
    「じゃあどうしたの?」
     つとめて優しく声をかける。こんなに気遣った声を出したのは初めてキスをしたとき以来だ。あの時のロナルドは緊張で固まって動かなくなっていて、とにかくリラックスさせるのが大変だった。
     ロナルドは相変わらず下を向き、自分の足元を睨みつけている。やれやれと腰を落として目線を合わせようとすれば、ロナルドはようやく口を開いた。
    「お」
    「……お?」
     しかしそこから先が出てこない。ドラルクがひょいと顔を覗き込めば、ロナルドの苦しげな表情が視界いっぱいにうつる。
    「……ロナルドく」
    「なんでもねえよバカ!!!!!!!!」
    「ブエーーーーッ!!!!!!」
     鋭い腹パン。私でなければ倒れていた。まぁ死んでいるけれど。結局死ぬんかい。とにかく言いたいことは沢山湧いた。しかし、そういえば腹減ったなと普段の調子を取り戻したロナルドを見ていると段々混乱もムカつきも削がれていく。自称紳士のドラルクは、すべてをぐっとこらえてロナルドに何が食べたいか尋ねることに成功した。
     そうしてどうにか昼飯を忘れたアホに飯を食わせたドラルクは、ジョンと戯れながら考え事をしていた。
     なんか今日、ロナルド君からの視線が、痛い。
     ドラルクがオムライスを作っている時も、テーブルに並べられたそれをロナルドが食べている時も、ロナルドはとにかくドラルクの方を見つめてきた。しかし何か用かと視線を合わせれば、ふっと逸されてしまう。それは洗濯する時も続き、ドラルクがゲームをしている時も、ロナルドがおもむろに原稿を開いた時も、そろそろ寝ようかとジョンに呼びかけている時まで続いた。
     さすがのドラルクも痺れを切らす。何か言いたいことがあるなら言えばいいのに。私はそんなにも甲斐性のない恋人だろうか。フツフツと、小さな怒りが込み上げてくる。そっちがその気ならこちらだって。ドラルクは決意を胸にゲームの電源を切った。

    「というわけで今から君を問い詰めます」
    「ウエーーーーン!!」
     お風呂上がりのロナルドはまだ悩んでいた。結局何も良い案は浮かばず、せめて可愛げのあるおねだりが出来ればと一人風呂場で練習してみたが、そもそも一人で虚無に向かっておねだりの練習をするというシチュエーションがあまりにも虚しすぎて泣いた。そして辞めた。そのままウンウン唸りながら着替えてソファへ移動し、ビショビショの髪の毛のまま考え事に夢中になっていれば顔の横からニュッと手が伸びる。振り返ればドラルクがドライヤー片手に立っていたので、ご厚意に甘えて髪の毛を乾かしてもらう間も考え事を続けた。そうして考えて考えて、ドライヤーの終わる音がして、考えて考えて、隣から気配がして、ふっと横を向いたら真面目な顔したドラルクが座っていた。そして尋問宣言である。
    「なんでだよ!俺なんかしたか!?」
    「カーッ!少なくとも私が起きてからずっと心ここにあらずな癖に何かと私をガン見してくるのが何もしてないうちに入るとでも!?」
     ウッ。ロナルドが固まる。どうやら見られていたのは気のせいでは無かったらしい。勘違いだったらどうしようかと思っていたのですこし安心した。ドラルクはすぐさま思考を切り替え、慎重に言葉を選び、ロナルドに語りかける。
    「何か悩みでもあるの?」
    「……うん」
     珍しく素直だ。まぁ珍しいことが立て続けに起こったからこうして問い詰めているのだが。
    「それは私に関係あること?」
    「……ある」
    「聞かせてもらっていい?私にできることならなんでもするから」
     そっと手を握り、俯いた頭をじっと見つめる。なんだか今日はロナルド君のつむじを見ることが多いなと思いながら、ドラルクはじっと返事を待った。青い瞳は握られた手を凝視して動くことはない。しばらくの沈黙の後、ロナルドはようやく口を開いた。
    「……どらこぉ」
    「うん」
    「ドラルク」
    「うん。聞いてるよ」
    「……ドラルク」
     何か覚悟を決めたように手を握り返し、急に顔を上げたロナルドを見て、ドラルクは死ぬかと思った。いや今死んだら台無しだと、本能が警鐘を鳴らしていたのでなんとか持ち堪えたのだ。しかし、今、己の目の前にある、ロナルドの表情は、何というか……
    「どらるく、俺……俺は……」
     真っ赤な顔。真っ赤な耳。下げられた眉。今にも涙が溢れそうで、潤んだ瞳。至極単純な言葉で言えば、ドラルクから見た今のロナルドはとても美味しそうだった。いやまさか、そんな、この五歳児に限ってそんなこと。いやでも、この顔には覚えがある。これは、ああそうだ、この愛しい男が初めてキスをねだってきた時の……
    「ドラルク」
     ハッと顔を上げれば、己の手を頬に当てる恋人が居た。真っ赤な顔は予想した通りとても熱い。ごくり。唾を飲み込む音がする。今の音は己から鳴ったものなのか。ドラルクはそれさえ曖昧になり、ただただ目の前の男が次は一体なにをしでかすのか、それだけが気がかりだった。そんなドラルクの心境などつゆ知らず、ロナルドは頬に当てた手のひらをそのまま唇まで持っていき、ちゅう、と音を立てて吸い付いた。
    「その……こういう俺って、嫌いかな」
     ガン、とドラルクの頭の中で何かが鳴り響いた。心臓はドクドクと脈打ち、体温だって低いはずなのに顔が暑くて熱くて仕方ない。急にどっと押し寄せた感情に任せて、ドラルクはロナルドの手を振り払い、代わりに両肩を力一杯掴んだ。
    「好きだとも」
     良かった。そう言おうとしたロナルドの声は、性急に合わせられたつめたい唇に飲み込まれた。
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