頭を撫でる「頭を撫でてくれないか」
自分のことを覚えてくれているだけでとても嬉しい。
それどころか、自分を友達といって、手を繋いで出かけたり、難しい分析を聞かせてくれたりしてくれる。
なぜかただ不安になってしまって、名前を呼んでほしいだけの時にふらりと訪ねても、にこにこ笑って「辻田さん」と呼んでくれる。
声色は太陽みたいだったり、柔らかだったり、たまに仕事が忙しくて少し疲れてるように聞こえる時もあったが、でもカンタロウは絶対にナギリを名前で呼んでくれた。
だから甘えてしまったのだ、もしかしたら、もしかしたら──、頭を撫でてくれるかもと。
路地裏の小さな非常階段の下の段に2人並んで腰をかけて、カンタロウの手元を覗き込む。
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