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    acusu1979

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    寛→←七(お互い無自覚)です

    #日車寛見
    japaneseCarKanzumi
    #七海建人
    sevenSeasBuilders

    散歩顔見知りから飲み仲間になるまでには時間がかからなかった。日車は不思議と七海とはウマが合うようで、同僚というには収まらない状態にある。二人で興味があることを語り合い、時にはただ静かに酒を酌み交わし日付が変わる頃に七海の部屋にお邪魔して朝を迎えるというのがいつものパターンになりつつあり、男同士での雑魚寝は大学生以来で少しだけ懐かしくもあって回数を重ねるのが多くなっていく。一方七海も社会人を経験していたとは言え不器用に、真っ直ぐに人と向き合い1度は挫折したものの、先を見ている日車の姿勢に自分の周りにはいない新鮮さもあって興味が増すばかりだった。

    「七海、少し外に出ないか?」

    自宅で飲み明かした次の日。珍しく日車が七海を誘っている。ちょうど行きつけのベーカリーに日車を誘おうと思っていた七海は二つ返事をして家を出た。

    「日車さん、帰りで良いので寄り道をしたいんですが構いませんか?」
    「構わない」

    少し歩くが大きな公園があり、人々の憩いの場所となっている。日車は七海をそこへ誘いたかったようだった。初めは他愛のない会話が続いたが途中からポツリポツリとなっていく。公園に着く頃には少しだけ硬い様にみてとれる。普段から無口だがそれでも表情は柔らかくいる日車。何かありましたか?と聞ける立場にいない自分にイラつきを感じながら黙ってついていく。すると木々の生い茂った人目に付きにくいベンチに手招きされて大人しく横に座った。途中で買ったコーヒーを口に含むとあとは鳥や風の自然の音しかしない。ふぅーと長い息を吐いた時、日車が口を開いた。

    「昔、駆け出しの弁護士だった頃、この公園に来たことがある」
    「…」
    「用があって出張できたんだがな。学生の頃はこっちに住んでいたから大丈夫だろうとタカを括っていたんだ。一年、二年と経てば別世界になっていて、迷って疲れてこの公園で休もうと歩いていた。そんな時に学生から声をかけられた。「そちらは危険です。あちらに迂回してください」と」
    「唐突ですね」

    体の向きを日車に向けながら急な思い出話に思わず出た七海の言葉だが、日車は別の意味に捉えて話を続けた。

    「本当に唐突だった。何を、とも思った。だが真剣な眼差しで言ってくるんだ。だから俺は大人しく従った」
    「それからどうなったんですか?」
    「どうもしないさ、それで終わりだったからな。だが今思い返せば虎杖達に似たような制服だった。高専の呪術師だったのかもしれん」

    この公園は定期的に呪いが発生している。今は居ないが学生の頃に来たのかもしれない。

    「その可能性は否定できませんね」
    「だいたい10年前の話だ。高身長でグリーンアイ、それからブロンドヘア…あの時の学生は七海、君だろう?」
    「…」
    「人は見てくれは変わってもココ、目と目の間の形は変えられないそうだ」

    眉間の辺りを軽く触れられて不意打ちで目が泳ぐ。

    「実を言うと…その頃は記憶が曖昧であまり覚えていません。なのでそういう事があったとしても私でしたとは言えません」

    七海の言葉に顔が曇るのかと思ったが飄々とした表情は変わらない。

    「俺だって暫くは忘れていた、だが七海に会ってから既視感があってこの間ようやく思い出せたぐらいだ。それと高専には任務の後、報告書を作成するだろう。保存期間は設けていない。もしかしてと思って調べたらやっぱり残してあった。ちゃんと君の名前で書かれていた」
    「なるほど。よく調べましたね」
    「調べるさ、命の恩人にお礼を言いたいからな」

    呪いを祓うのは日常で、人助けは延長線上にあるもの。七海はそういう世界に身を置いていると自覚している。

    「大袈裟じゃありませんか?」
    「大袈裟か…理解者が少ない中で人の澱みに立ち向かう若者に感謝をするのは当たり前のことだろう?」

    日車の懐の深さを感じながら、お礼を言われた事に対して喜びを噛み締めている七海。助けたお礼は何度も言われたが心を動かされたのは初めてであった。七海の中でカチリとハマった音がする。言いたいことを言って満足した日車は

    「七海、そろそろ戻るか。どこかに寄るんだろう?」

    ベンチから立ち上がり七海も続いて立ち上がった。
    …もしかして日車さんはお礼を言いたい為に今まで懇意にしていたのだろうか、するとお礼を言い終わった今は自分と居る理由が無くなってしまった…
    自覚した今七海の中ではやる気持ちが溢れ思わず声を漏らしそうになってしまう。


    「…好きです」


    先を歩き始めようとした日車が振り返った

    「ん?何かいったのか?」
    「いいえ、なんでもありません」

    七海の言葉が聞こえなかったのか、それとも聞こえないフリをしているのか今の七海には分からないがそれでいい。

    「帰りにお気に入りのパン屋に寄りたいんです。日車さんにも食べて欲しくて」
    「七海のお気に入りとなるとそれだけで美味そうだな」
    「美味しいですよ。こちらです」

    今度は七海が日車の少し前を歩いていく。自分の感情をひとつ知ることが出来た七海はこの散歩にどれだけ時間を掛けるか頭の中で考えていった。日車にどうアプローチをしようか…長い散歩になりそうである。
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    DONE■レオマレ■診断
    ベッタ再録
    ■片思いレオマレにしてみた。
    ↓診断結果
    もなかのれおまれさんには「終わりが見えない」で始まって、「君の名前を呼んだ」で終わる物語を書いて欲しいです。季節を感じる話だと嬉しいです。
    #書き出しと終わり #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/828102
    終わりが見えない。
    嫌われているのに、これ以上相手に嫌われるのは・・・・。
    いつからこの思いが自分の胸を甘い痛みとなって身体を蝕んでいるのかもう忘れた。
    自覚なんてしたくなかった。こんなに苦しいなら。
    諦めようと何度もひと目がつかない場所で、静かに涙を流してしまうというのに。
    「それも青春のひとつじゃ」
    リリアに相談したが、楽しそうに微笑まれて何も解決もしなかった。

    月夜が学園に振り注ぐ。
    マレウスは日課である廃墟巡りに向かうため、寮をこっそりと抜け出した。
    静寂に包まれた目的の廃墟までの道のりで、今日も一人物思いに耽る。
    今日こそは、歪み合わずに話をしようと決めていたのに駄目だった。
    どうやったら、普通に話すことが出来るのか。ほんの少しでいいから歪み合わずに話すことはできないか。
    そんな考えが頭を駆け巡り、答えがなかなか出てこない。簡単に相談出来る内容でもない。
    ひとりで考えても答えが出ないとわかっている。気軽に相談出来る友がいないのであれば、相談することも難しいだろう。
    悩んでいるマレウスを嘲笑うかのように、月の光は闇夜を照らす。
    溜息を一つ零すと、目的の廃墟まで向かっていた足が 1215