花屋の蜂さん遠く離れた父へ花でも――と思い、入った花屋。
そこに店員として店番をしていたのは、マスターにチケットを貰ってかつてライブを見に行ったどこ指のメンバーの一人。
「父親への贈りもんならやっぱこれだな! 白いバラ! ほんとは父の日向けの花だけどよ、娘からのプレゼントならファーッと喜んで貰えるに決まってるぜ!」
「では、白バラの花束をください」
彼はレジ打ちも花束を包むのも手馴れたもので、見惚れるような手捌きだ。
ライブ中、いきなり喧嘩を始めた時は怖そうだと思ったのに――。
「親父さんに喜んで貰えるたらいーな!」
ニカッとギザギザの歯を覗かせる白バラ越しの純粋な笑顔が、輝くものとして彼女の朱色の瞳に映る。
何故かどきりと心臓が跳ねた。
(おわり)