相手の好きなところを言わないと出られない部屋 目が覚めると、見知らぬ部屋にいた。
冷静に体を起こす。柔らかな手触りのベッドに寝かされていたらしい。というより、ベッドだけは寝入ったときのままの状態だった。
横では、昨夜散々戯れた少年がすやすやと寝息をたてている。淡い桜色の髪は枕の上に流れている。あどけない顔をして眠るこはくを見、斑は静かに顔を上げた。
向かって正面の壁には、時計が一つと大きな張り紙が一枚。
「どういうことなんだあ、これ」
張り紙にはデカデカと『相手の好きなところを言わないと出られない部屋』と記されていた。
叩き起こしたこはくと二人で部屋中を探索してみたが、どこにもドアらしきものはなかった。手の届くところ、目の見えるところに窓や換気扇といった外部と繋がっている箇所もない。
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