高校生夏太郎とダブり尾形(2/3)11きぐるみを着て
夏太郎がベッドでうつ伏せになって漫画を読んでいると、母親に呼び止められていた百之助が部屋に戻ってきた。顔をそちらに向けると「リビングに」と言いながら百之助もベッドに上がってくる。
夏太郎は窓際に寄りながら言葉の続きを待った。
「飾られてる写真の、泣いてるお前」
「ああ……」
リビングの棚の上にはいくつかの写真立てが飾られている。夫婦仲睦まじい写真や、家族全員揃った記念写真などが飾られている中、とあるテーマパークのキャラクターと撮った大泣きしている夏太郎の写真がある。
夏太郎自身にその記憶はないが、幼い頃はありとあらゆる着ぐるみが苦手だったらしく、親が「ほら、写真」「握手しておいで」と背中を押しても泣いて嫌がっていたらしい。
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