タコパする夏尾「おい、夏太郎、これ……」
靴箱の上に置かれていたサンタの帽子を被った小鳥の置物を手にした尾形が部屋に入ってきた。尾形の手の上で小鳥はぴよぴよと楽しそうにクリスマスソングを歌っている。
これは何だと問おうとした尾形は、ダイニングテーブルに乗せられた見慣れないものに言葉を切る。
「おかえりなさーい。あ、それ可愛いですよね」
「急にどうした」
「うーん、目が合ったといいますか……可愛かったので」
にぱと笑う夏太郎と、くちばしと首をかちゃかちゃと動かす小鳥を見比べる。
「可愛くないですか? 他にも色あって……トナカイのツノが生えてる帽子被ってるやつもあったんですよ」
「トナカイ」
「クリスマスですからねぇ」
そう言いながら夏太郎はキッチンから大きさの異なるボールを二つ、ダイニングテーブルに運ぶ。目の前を通り過ぎるときに尾形がその中身を覗くと、何かの生地と一口サイズに切られたタコとエビが入っていた。
1992