WILDのような世界観・第2とっても不思議な大きい大きい、本当に大きい白い狼との出会いから数日。
狼と会いたいが為に、用もない休日にわざわざ外に繰り出す玄弥だったけど、毎度予期したかのように狼がいるので、なんだか気味の悪さがほんの少しあったりする。
でも、1回近寄ってきてくれてから一気に心の距離(幻覚)が縮まったようで、傍に寄るのは勿論、玄弥の他愛ないお話まで聞いてくれるようになった。
触りはしてない。ばい菌がすごいかもと思って。
玄弥はとてもハッピーだった。
そんなこんなで日課になったご挨拶を済ませて、さて帰るぞと立ち上がる。
いつもならばいばい、と手を振れば帰っていくんだけど、その日は何故か玄弥の傍から離れようとしなかった。
あれ?気付かなかったかな、ばいばい。してもやっぱり動かない
あれ〜? なんでだろ。
首傾げるけど、まぁそんな日もあるだろう。玄弥はお別れをしたつもりで踏み出す。
そしたら狼も踏み出した。
あれ〜〜?ぐいっと更に首が傾く玄弥。そんな首を見てた狼さん。なんか問題でも?なんて顔で同じように首曲げてくる。
え?ついてくんの?
すごくなんで?という気持ちだった。
まぁ、まぁまぁ、猫なんかはついてきちゃったりするし、そういうもんだろ。いつの間にかいなくなってたりするヤツ。実は玄弥、過去に何度か野良猫に懐かれてついてこられた経験が。
玄弥が足を進めれば、狼も同じく進む。止まるとなんで止まんだよ、って目で見てくる。それにしても傷痕がスゲェなこいつ。もはや現実逃避で全然関係ないことを思った玄弥だった。
5回くらい、進んで止まってを繰り返してたらいい加減狼が唸り出したので、こわくて普通にとことこ歩いた。鼻にシワ寄せた獣はこわいです。
土手から玄弥の部屋までは歩くと20分くらい時間がかかって、住宅街とかもある。何なら住宅街の中にある。
そこに入った時にいなくなったので、やっぱり〜なんて思って部屋に向かったら。
なんとビックリ。玄関前で待ち構えてるじゃありませんか。
なんで?スペキャ。
驚きすぎて固まっちゃう玄弥。そりゃもうしっかりどっしり玄関前に座り込んでる狼。カオス。
そのカオスは狼が玄弥を振り返って、早く開けろって顔で首を振って終わりを告げる。
まさか入るんじゃなかろうな。玄弥は嫌な予感がした。
とりあえず狼を頑張って避けながら鍵を開ける。ドアの仕組みがわかってるのか、腰を上げて移動してくれる。
いやスゲェ入る気じゃね?
思わず「入るんですか?」なんて敬語で聞いちゃったら、チラッと見て終わり。何なら玄弥が開けんの待ってる。いやなんで?
ラチが開かないんで、しょうがなくそっと開けたらグイッとおわっ!と、顔でドアを押し開けてくる狼サマ。デカいもんで力もすごい。玄弥より先に入ったくせに、早く入れって目で言ってくる。はい、すんません。
コレってどうなるんだ…つかアパートってペットダメじゃねえか? でも俺が連れてきたわけじゃねえし…ついてきたんだし……あのデカさ、追い出せねえな…!?
うんうん唸りながら鍵を閉めて、うんうん唸りながら靴を脱いでる間も、狼サマはお利口に座って待ってる。すごくおデカくいらっしゃるので場所は取ってるけど。
あくせくしながら部屋に上がって、さてコレからどうしよう、狼って何食うんだ?買い物行かなきゃいけねえんじゃ、なんて、またぐるぐる疲れた頭を回してたら。
「オイ、靴は揃えろォ」
反射的に振り返った。
真っ白な髪に白い着物のとにかくデカい知らん人が玄弥の靴を揃えて置いてた。
だれですか?
とりあえず携帯を取り出した。