Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    Fuyu_honda

    @Fuyu_honda

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    Fuyu_honda

    ☆quiet follow

    4月パバステ現地で発行予定の隼人と四季と春名と15ユニット+夏旬本より、Legendersと夏旬一部抜粋。
    モバエムで夏旬がお世話になりました、ベスゲ2とバレンタイン2020と、ぶった切りましたがウォーロックの時間軸になります。
    タイトル思いついてません、助けて。

    レジェと夏旬 本日はありがとうございましたと、定型句とともに頭を下げ、先に立って扉を引き開けるインタビュアーへ一礼、まずは想楽が部屋を出た。追ってきた夏来が、隣へ辿りつくまでにはわずかなラグ。何度か仕事をする内に気付いた、人よりワンテンポ遅い動作がためか、女性向け雑誌の記者に向かって、ご丁寧にもう一度頭を下げたのか。振り向いて確認するほどの時間ではない。
     帽子をかぶり、伊達メガネをかける横で、見慣れたユニットメンバーの横顔とはまた異なるベクトルで整ったルックスの少年は、しかし漠然と正面を眺めて歩いているだけだ。
    「……えぇと」
     つぶやくと、インタビュー中も褒めちぎられていた美貌が振り向く。
    「変装とかしなくて平気? 夏来くん、目立つと思うけどなぁ」
     仮にもサブメイン級の役を張った映画が封切り間近、番宣のためにゲスト出演したバラエティ番組が放映されたのは昨夜のゴールデンタイムであるし、SNSでも盛んにPRを打っている。ほら、エレベータ前で若い女性がのぞき込んでいるスマートフォン、今しもそこに、闇に潜む暗殺者というダークな役柄によっていっそう引き立てられた美しい顔立ちとやらが映っているのでは?
     想楽の視線を追ったのか、女性ファンを虜にしてやまないクールな目元とやらでエレベータ前を確認した夏来は、自身も尻ポケットからスマートフォンを取り出した。想楽から半歩遅れたのは、意図的か。うつむいて、スマホを操作している素振りだが、画面は暗いままだ。
     夏来から視線を外して、正面を向くと不思議な事に、斜め後ろにいるはずの気配が薄れる。なるほど、暗殺者役はまさしく適任だ。
     結局、四階から一階へと降り、乗客数名とすれ違い、建物の外へ出て駅へ向かう道すがら、誰に見とがめられることもなかった。
    「仮初めの我が右腕は、まぼろしか。すごい特技だねぇ、ぜひご教授願いたいなぁ」
    「そんな……すごいことは、してないと思う……」
    「そうかなぁ。夏来くんの顔で、ここまでスルーは奇跡的だと思うよぉ」
     アイドルであると気付かぬ間でも、思わず振り向き歓声を上げたくなるほどの顔立ちであろう。我がユニット自慢の美形も、道行く女性の足をたびたび止めては、黄色い悲鳴を上げさせている。いや、彼の場合は、抜きん出た長身と風になびく長髪、饒舌な上によく通る美声も原因か。比較対象にしてはいけないのかもしれない。
     とりとめのない思考にふける間、おとなしい少年は、あいかわらず希薄な気配のままに隣を歩いている。
     それにしても会話がない。習慣として、事務所へ戻るために電車に乗ったが、彼も同じ目的地ということでいいのだろうか。
     座れるほどではないが、比較的空いている電車内。他人のふりで扉の両端に分かれ、端整な顔を伺い見ると、予想外に目が合った。何を考えているのかわからない、曖昧な視線がぼんやりと、こちらを、見ている? こちらを見ているのではないのか? 気まずさを感じて視線を逸らそうとしているのは、想楽ばかりだ。
     まるで自然に、夏来は顔を窓の外へ向ける。目が合ったのは気のせいであったのか、そんなはずはない、数を数える程度の時間は、視線がぶつかっていた。
     何か言いたいことでもあるのだろうかと、想楽も窓の外を見やると、そこにはほんの少しの困惑を浮かべた自分の顔があった。地下鉄なのだから、取り立てて見るべき景色もないのだ。
     そうして事務所の最寄り駅に至り、どちらともなく電車を降りる。エスカレーターに乗り、改札を抜けて地上へ。商店街のアーケードに至ってやっと、ようやく、沈黙を破ったのは夏来であった。
    「何か、気に障ったのかな……、って、思って……」
    「……ん? うん? 夏来くんが?」
     まさしく聞こうと、舌の先まで出かかっていた言葉であったため、思わず返した問いはしかし頓珍漢であったろう。相変わらずのポーカーフェイスで、つかみどころのない少年は首を横に振る。
    「想楽さんが……。インタビューのあと……、ちょっと……嫌そうな顔、してた……」
     もどかしく紡がれていく言葉に合わせて、何かが抜け落ちていくような感覚。雑誌記者と別れてから初めて、夏来の顔に感情めいたものが浮かぶ。
    「……それだけ。ごめん……、忘れて……」
    「いやぁ……」
     この上、年下に気遣われたとあっては、さすがに居心地が悪い。
     赤信号で立ち止まったところで、肩をほぐすようにしてゆっくりと首を回す。軽く息をついて胸のつかえを吐き出してから、早くも凪いだ横顔を見やる。
    「よく見てるねぇ」
    「……ごめんなさい」
    「いやいや、難しいねぇ、ポーカーフェイスって。夏来くんみたいに、上手くできないなぁ」
     薄い唇が何か言いたげに開いたが、独特のワンテンポを待っても、返事はなかった。音もなく口を閉じて、通行可能になった横断歩道を渡る。
     事務所まではあと数分、人生相談をするほどの時間はなく、そんなつもりもない想楽は、しかし年上としての矜持を保つために続けた。
    「インタビューが嫌だった、とかではないんだよねぇ。ただ、僕のキャラと楽歌って、そんなに合ってなかったかなぁ、って」
    「……えぇと」
     残酷でな中国マフィアのボスというキャラクター設定だ、似合っているとは、例えそれが望まれている言葉だと察することができたとて、即答しづらいだろう。
    「ん~、まぁ……そういうことだよぉ」
     頷いたのか、うつむいただけなのか、思慮深い少年は頭を斜めに下げた。
     事務所に着き、弁当屋横の階段を上がり始めたところで、後ろから小さな声がかかる。聞きこぼしてしまいそうなほどささやかで、思わず足を止めると、夏来は一段飛ばしに階段を上がって、隣に並んだ。
    「俺も……、今日は、クールとか、冷めてるとか、ミステリアスって……久しぶりに聞いて、そうなんだって思った……」
    「久しぶり……、なんだ。でもそうだねぇ、夏来くんは、話してみるとちょっと印象変わるよねぇ」
    「よく、言われる……。ファンの人も……、最初の頃は、クールなところが好き、って言ってくれてたんだけど……、最近はあんまり言われないなって……」
     それが不満というわけでもなさげな顔だ。事務所の前に到着し、扉に手を伸ばしながら、想楽はささいな好奇心を夏来へ向ける。
    「それじゃあ、何て言われるの?」
     流れからして答えが返ってくるものと、当然のように思っていたのだが、夏来の口は閉じたままだった。
    「……いざ本題、思わせぶりに会話止む。それはちょっと意地が悪いなぁ」
     それこそ意地悪く、背中を丸めて顔をのぞき込んでみたが、思いのほかに頑なだ。
    「……お兄さん相手にその態度は、ちょっといただけないなぁ」
    「想楽さん……、弟だよね……?」
    「何で知ってるのかなぁ。かわいくない」
    「ふふ……、ごめんね?」
     ああ、やっぱり。君は食えない男だと思うよ。
     お綺麗だが感情の読めない笑みに返して、想楽も口の片端を持ち上げる。
    「……今のは、ボスっぽい……かも……」
    「それはどぉも」



    「榊さんのリングライトは、空の色でよろしいのでしょうか」
     果たして、少年の頭はゆっくりと傾げられ、そのまましばらく停止する。
    「……想楽さん?」
     そのつもりはなかったのだが、問われてみれば確かに、まさしくユニットメンバーの名前である。僕は緑だよぉ、と、飄々としながらもどこか拗ねたような仲間の笑顔を思い出しては、クリスも頬を緩ませながら、首を振った。
    「スカイブルー、青空の色です」
    「あぁ……、うん……水……」
     手に持っていたミネラルウォーター入りのペットボトルを掲げ、一息。蓋を閉めてから、顔を上げる。
    「そうだね……、空色……」
    「そうですよね。では、榊さんのファンの方が身に着けている海の青は、どういった意味合いがあるのでしょう」
     本日これから開催されるバレンタインライブは、衣装に合わせたオレンジのペンライトと、それ以外は事務所が出演者に割り当てた個々のイメージカラーのリングライトで照らし出される可能性が高い。出演アイドル五人のうち、志狼は赤、悠介はイエロー、あとの三人は青系統だ。夏来とクリスはライトブルーであるため、海の青に該当するのはアスランである。
     会場をモニターするカメラには、おおむね似たカラーリングのファッションに身を固めた女性たちが映し出されていた。青いリングライトを着けた女性は、多くが紫系統の服装であるため、アスランのファンと見てよいだろう。それでは、ライトブルーのリングライトに青いアクセサリーを身に着けた女性たちは、夏来とクリス、果たしてどちらのファンであるのか?
    「私のファンの方もよく海の色を身にまとってくださるので……、その、正直」
     LegendersとHigh×Jokerのファン層は、年齢や雰囲気が多少異なるため、明るいうちなら多少は見分けられる。しかしそれとて絶体ではなく、会場が暗くなってしまえば尚の事。
    「うん……俺もちょっと……、間違えそうだなって、思ってた……」
     どうやら懸念は、共有できているようだ。つまるところ、ファンサービスの相手を取り違えるのではないか、ということである。
    「赤が見えたら……、多分、High×Jokerのファンの人、でいいと思う……」
    「それは確かに。橘さんのカラーと見間違えないようにしなければいけませんね」
     志狼のファンとなると、見た目にもはっきり幼くなってくる。目印としては、悪くない。
    「私のファンの方は、海洋生物を模したマスコットを連れている方も多いですが」
    「ステージから、見えるかな……」
     それはもう、ファンサービスが欲しいという彼女らの熱意を信じるしかあるまい。
     二人そろって腕を組みうなっていると、スタッフとのうち合わせを終えたプロデューサーが顔を見せた。どうしたどうしたと、尋ねる彼にかくかくしかじか、伝えるとあっけらかんとした笑いが返される。
    「どちらのファンかなんて、気にせずどんどんファンサしていいんですよ。何なら、相手のファンを奪うつもりでいきましょう」
     なんて、ウインクまでされては敵わない。夏来と顔を見合わせていたが、優美で穏やかな少年は、存外に不敵な笑みを切れ長の目元に乗せた。
    「それじゃあ……、がんばる……」
    「そうですね。もちろん、私もせいいっぱい努めさせていただきます」
     胸に手を当て一礼し、その挑戦を受けて立つ。
    「いやぁ……、なかなか迫力があるなぁ」
     戦いの火蓋を切っておきながら、プロデューサーはのんきな調子でつぶやいている。
     メイクルームの悠介に呼ばれ、軽やかに踵を返したプロデューサーを見送りながら、クリスは先の疑問を思い出した。にわかに胸をときめかせて、隣にいた夏来を勢いよく振り向く。
    「榊さんも、海がお好きなのですか?」
     今しがたペットボトルに口をつけたらしい夏来は、驚いた風でもない、のんびりと水を飲み下す。半分ほどまで空にしたボトルをテーブルに置き、既視感のあるスピードで首を傾ける。
    「えっと……、どうして……?」
    「榊さんのファンの方も、海の色を身に着けていらっしゃるので。榊さんが海をお好き、ということでは」
     言い募る間にも、少年の人好きのする顔には、居心地悪げな苦笑いが浮かんでいく。であればクリスも、飛躍しすぎたと察するまでに時間は要さない。
    「失礼しました」
    「ううん……。えっと……、多分、だけど……、俺のファンの人が、青を身に着けてくれてるのは、ね……」
     独特のスローテンポは、次第に柔らかな笑みを帯びていく。目元を緩め、口端をほころばせ、白い頬をほんのりと染めさえする。人の感情の機微に疎い自分ですらわかる、彼の心を満たしているのは幸福だ。
    「ジュンの色、だから……」
     あまりにも大切に、その名を語るのだから、クリスは初め、意味を理解することができなかった。
    「……冬美さんの」
     ようやく、大事に紡がれたその名前と、人物が一致する。
    「それはつまり……、箱推し、というものでしょうか」
     クリスの知る限りでは、ユニット単位や事務所単位というイメージだが、ユニット内の特定の二人を指し示す場合もあるのだろうか。
    「そう……なのかな……。アイドルになったばかりのころは、そういうファンの人、あんまりいなかったんだけど……、最近、ジュンのことも好きって言ってくれる人が増えてきて……うれしい」
     かみしめるように語られる夏来の言葉に、クリスは深くうなずいた。
     始めこそ、アイドルとしてのクリス自身に興味を持つファンばかりであったが、クリスを応援するうちに、海にも関心が出て来たという声が聞かれるようになった。その感動、幸福といったら! 何度聞いても、興奮に胸が打ち震える。
     榊夏来にとっては、その対象が冬美旬であるということなのか。
    「わかります」
     共感を込めて幾度もうなずくと、夏来も大きな首肯で応じた。向かう先こそ異なるが、対象を愛するという心には、相通ずるものがある。
    「つまり、榊さんにとっては冬美さんが海であるということなのですね」



    「いやぁ……、そのまとめ方は雑すぎない?」
     呆れる最年少に、我らがビジュアル担当にしてピュア担当の美丈夫は、まさしくきょとんと首を傾げている。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💞💕🙏🌊🐳💙💙💙💙💙💙💕💙💙💙💙👍☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator