朋友へ「邪魔するぞ」
ためらいもなく入室してきた恵棟の声に、友尚は目を覚ました。
寝台の余白から身を起こすと、被せていた数枚の衣類が床に落ちる。
布団はどうした?と聞いた所で想像つく答えを聞く必要はない。
友尚が衣服を拾い上げ袖を通す間、恵棟は足元に転がっていた鞘におさめる小刀を探し始めた。
「……それは、どうした」
恵棟の片手に乗せられていた子猫に、友尚は眉根を潜めた。
「ここへ来る途中拾った。母親と逸れたようだ」
丁度良い、と恵棟は無理矢理、子猫を友尚に渡す。
友尚の手の上に乗った子猫は体全体を震わせ、不安そうに辺りを見回しながら小さくみぃ、と鳴いた。
「この猫を世話してやってくれ」
「猫の面倒なぞできるか」
返そうとしても恵棟は頑なに受け取らない。
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