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    k_94maru

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    k_94maru

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    ロナドラ
    恋人っぽくしたいロナと主導権は自分が持っていたいドちゃが、会話で事故を起こす話

    この二人は博識で、ポンポンと高レベルの会話ラリーしてるので
    たまに相手の知識を見誤って「伝わると思ったけどダメだった」みたいな気まずい思いしてるだろうなぁという妄想です

    【実際にある症状の名前が出てきますが、不謹慎な意図で用いているわけではございません】

    なんでも許せる人向け

    #ロナドラ
    Rona x Dra
    #ロド
    rhodo

    会話に失敗するロド「お暇?」

     彼はそう声をかけながら、隣へ腰を下ろす。コーヒーとミルクの香りがする。

    「そのワードやめろ、あの人がすっ飛んでくるぞ」
    「今は困るなぁ」

     笑いながら、肩がぶつかるほど近くへ寄ってくる。機嫌の良さそうな声だ。今はそういう気分なのか。
     ロナルド君の方へ顔を向ける。その手には二つのマグカップ。黒い方を私に差し出してきた。湯気の立つミルクが入っている。
     ゴリラとバナナの描いてるカップは彼のもの。

    「……ありがと」

     礼もそこそこに、すぐに前を向き直した。今ここに、マナーがなってないと口うるさくいう人間はいない。私たち二人だけ。運悪く、ジョンはお出かけ中だ。
     目を合わせられなかった。そうやって優しくされると困る。

    「なあ、何してたんだ?」
    「家事が終わって、ちょうど座ったところだったよ」
    「ふうん、おつかれ」

     突き放すような言い方をしても、善意百パーセントで返される。これはダメだ。もう恋人モードに切り替わっている。
     私達が恋人という関係に落ち着いたのは二ヶ月ほど前。ほとんど事故のようなものだったが。催眠ホイホイのロナルド君が、またもや催眠にかかって帰ってきたのだ。その際にお互いの気持ちがバレてしまい、両思いが発覚した。
     こちらの気持ちとしては「好く思っている」という程度で、まだ育ちきっていない好意だったが。
     彼の方はそれはそれは熱を上げていたようだ。死ぬほど恥ずかしい告白をされた。思い出すと顔から火が出る。割愛。
     あれから、ロナルド君は度々“このように”なる。恋人を甘やかす体勢だ。こうなってしまっては止められない。彼が満足するまでドロドロに可愛がられる。解放される頃には砂糖まみれだ。
     言動がイモなため完全なスパダリではない。だがそのダサさも一生懸命さが伝わってきてしまい、悪くはなかった。
     正直言ってこんなに大切にされるとは思っていなかった。どうせ関係の名前が変わるだけ。ずっと馬鹿でふざけた時間を過ごすと勘違いしていたのだ。誤算にも程がある。
     この時間は、嫌いではない。だが慣れない。小さな気持ちだけども、私だって彼のことが好きなのだ。緊張する。ロナルド君の温かい掌を黙って享受するには、恋人としての覚悟や時間が足りなかった。
     どちらかと言うと、今はそういうことをしてあげたい側だ。ジョンにしてあげるように可愛がってあげたい。そちらの方が羞恥心が少ないと思う。

    (君もこんな顔するんだねぇ……)

     好きで好きで仕方ありませんって顔。そんな表情ができるなら彼女の一人や二人いてもおかしくなかったろうに。私にだけなのだろうか。ちょっとだけ良い気分だ。
     黙っていると、ロナルド君は私の頬を指で触れてきた。撫でるというにはあまりに力加減がなっていない。刺さってる、とでも言おうか。指を沈み込ませるほどの肉がないので、実質骨との衝突なのだが。

    「えっ、この流れで殺す気?」
    「ごめんミスった」
    「私のスパダリ返して〜」
    「何の話だ」

     ギリギリ持ち堪えたが、耳の先は死んでしまった。今この瞬間は私の我慢でなりたってるんだぞ。睨もうにも、まだそちらを向くのは気まずい。
     ロナルド君は、今度は頬を撫でだした。指先で慎重に。短く切り揃えられた爪は肌にあたっても痛くはなかった。

    「不思議だよなぁ」
    「遅めのなぜなぜ期かね?」
    「肌の色の話だよ馬鹿」

     ちゃんとあったかくて血が通ってるのに、暗いんだよな。そう呟いて頬骨、目元、鼻筋を触れてくる。

    「まあ君たちに比べたら低体温だけどね」
    「そうだけどさ。それだけでこんな青くなるんだなぁ」
    「で? 私の肌の色に文句があるのかい?」
    「うぇーんなんで攻撃的なんだよ! 俺はこの色嫌いじゃねぇぞ!」

     触れられるのが恥ずかしくて、ついそっけなくしてしまった。自分から触れるのは問題ないのに。少し変な気持ちだ。
     乾燥した指に耳たぶをいじられる。もしょもしょとくすぐったい。

    「そこは好きって言いなさいよ」
    「言えたら苦労してねぇよ。……俺も吸血鬼になったらそんな感じになんのかな」
    「……なんだって?」

     聞き捨てならない台詞だ。吸血鬼になる、なんて考えているのだろうか。
     こちらの声色が変わったのに驚いたらしい。ロナルド君はパッと手を引き、もしもの話だと言い訳をした。退治人の君が何を物騒なことを言ってるんだい。もしもでも心臓に悪い。
     絶対に無い未来とは思わないが。付き合って二ヶ月にして転化の話は重すぎる。段階を踏め。

    「ほ、ほら。吸血鬼でも肌の色が人間に近い奴もいるだろ」

     汗をかきながら話を逸らそうとしている。
     私はいつ殺されてもいいように、マグカップをテーブルの上に置いた。

    「若い吸血鬼はそうだね。古ければ古いほどその限りでは無いだけさ」
    「でもよぉ、なんか、お揃いみたいで良いなって……」
    「初めてのペアルックってそんな重々しいものじゃなくない? まずセーターとかから始めよう?」
    「えっ、いいのか! じゃあ今度買ってくる」
    「墓穴掘っちゃったな」

     彼の熱を冷まそうと努めたが、別の問題にぶち当たってしまった。せめて笑えるようなダサいペアルックであることを祈る。
     そして甘い雰囲気も全く変わらない。どうあがいても、今は恋人として私の隣にいたいらしい。殺される気配もない。
     ロナルド君は何度も座り直したり、手を握ったり開いたりともじもじしている。「何かしたいけど何もできない」を体現していた。

    「でもよ、お前に似合ってるよな」
    「未来のクソダサペアルックが?」
    「まだ見てねぇのにダサいとか言うな。肌の色だよ」
    「そりゃそうさ、私はどんな血色でもハンサムだ」

     今日はやたらと容姿の話ばかりする。見た目の話題など、相手が相手なら失礼に値するぞ。
     吸血鬼なんて飽きるほど見ているだろうに。肌の色なんて今更気にすることだろうか。
     誰かに変な話をされたか。それとも種を意識するような話をネットで見たとか。不安で仕方ないといった風ではないが、思うところがあるのだろう。非常にわかりやすい。

    「うーん……まあ、君には似合わないと思うよ」
    「わかんねぇだろ、化粧とかで試したらわかるかも」
    「銀を食べるとか言わなくて良かったよ」

     すぐに殺されると踏んでいたのだが。拳は飛んでこない。
     どうしたのかと振り向けば、ロナルド君はポカンとしている。もしかして、この話は通じなかったのだろうか。

    「な、なんでそんな酷いこと言うの?」
    「いや死ねって意味じゃないよ。私に近い色になりたいって話でしょ?」
    「どういうことだ?」

     本当に知らなかったらしい。彼は意外と博識だし、退治人にとって銀は身近なものだ。その性質や人との関わりについては熟知してるものと思っていた。
     まあ一般的にみたらかなりマイナーな知識だ。銀を体に取り入れた、その延長にある“銀皮症”については教養の範囲である。
     というかロナルド君が知らないのなら、私が不謹慎なネタを使っただけになってしまうじゃないか。そのような意図はなかったのだと前言撤回したい。ただ手近にある物で可能、且つ彼の食欲に掛けた言葉だったのだ。本当に侮蔑の意味はない。
     内心焦っていたが、ふと気がついた。先程までデロデロに甘かった彼の目が、やや現実味を取り戻している。訳の分からないことを言われて困っているという感じか。

    (……このままでは終われないな)

     やられっぱなしは性に合わない。隙ができた今がチャンスだ。このまま雰囲気を逆転できれば私のターン。翻弄してやれる。私だって彼をドキドキさせたい。
     顔を彼の方に向ける。そして手袋を外し、素手でその鼻に触れた。鼻筋を辿るように撫でる。

    「君のままでも、美しいと思うけどな」

     ゴクリと大きな音が鳴る。ほら単純だ。頑張って恋人らしくしようと背伸びしているだけ。私がその気になればたったの数秒で思い通りだ。
     とはいえ、まだ不意打ちに驚いているだけだろう。ここからが勝負。大人の本気を見せつけてやろう。
     そう思ったのだが。

    「いや、どういうこと? 銀って食えないだろ? それとも銀色の物を食えば吸血鬼みたいになれる的な意味?」

     鼻に触れていた私の手を両手でぎゅっと握り、矢継ぎ早に尋ねられる。本物のなぜなぜ期だ。

    「は? ちょっと、今そんな雰囲気だった?」
    「テメーが変なこと言うからだろ。で、どういう意味なんだ」

     ロナルド君の知的好奇心を見誤っていた。流石作家様と言ったところだろうか。伊達に納期直前にヌーチューブで動画を漁っているわけじゃない。何ということだ。
     先程までの甘ったるさは何処かへ吹き飛び、残ったのは頭の上に疑問符を浮かべる五歳のゴリラ。

    「嘘でしょ……後で説明するんじゃだめ?」
    「気になんだろ、サクッと解説しろ」
    「いや、複雑な話になるんだが……」

     銀皮症は銀が原因で引き起こされる色素増強作用のことである。一つの特徴として、肌が全面、もしくは一部だけ暗い色に変色する症状があげられる。ちょっとばかし難しい話になるし、決して明るくない。
     改めて言うが、私はこれを軽く見ているわけでは無いし、面白がってやろうなどという意図はなかった。彼ならこの話を理解して、殴って殺してくれると思ったのだ。サラッと流れるはずだった。まあ何を言ってもこの手の話を振った私が悪いが。
     とにかく知らないのであれば複雑な知識となる。ロナルド君には正しく、偏見の無いように説明しなくてはならない。絶対に恋人を甘やかす際にする話では無いだろう。

    「なあどういう意味だ? なんで銀食うの?」
    「勘弁してくれ……」

     彼はすっかり興味を持ってしまったようだ。逃がしてもらえそうになかった。


    □□□


    「……という症状です。君が銀を携帯していること、食欲旺盛なことに掛けた発言でした。決して不謹慎な意図はございません」
    「いや、わかってるって。普通に勉強になっちまったな……」

     説明すること三十分。かなり省きながらだったが正しく理解してくれたようだ。
     立ち上がり、できるだけ体を曲げて頭を下げる。気持ちは九十度の直角、謝罪のポーズ。

    「ほら、たまにあるよな、こういう……伝わらないやつな」
    「一生懸命フォローしないで地味に傷つく」

     ロナルド君は優しい声でこちらを宥めた。やめろ、私が悪かったから。そんな可哀想な風に扱うな。
     耐えきれずに両手で顔を覆うと「知らなかった俺が悪いし」と追い討ちをかけてきた。一般教養じゃないんだから知らない方に非があるわけないだろ。もうやめろ。
     何が逆転リードだ。恋愛に不慣れな若造以上の失態を犯してしまったじゃないか。最も悪いと書いて最悪。

    「あー……ほら、落ち着けって」

     布の擦れる音がした。ロナルド君も立ち上がったようだ。そして私の背中を叩いた。
     姿勢を直し、ゆっくりと顔を上げる。
     そこには少しだけ赤くなった彼がいた。照れている。

    「えっ、この状況で?」
    「うなじがエロいって本当なんだな」
    「引くわ」
    「ごめんて」

     あまりにも情緒がジェットコースターだ。この子相手にムード演出とか、そもそも無理だったのかもしれない。スイッチが濫りにばら撒かれすぎている。今後、きちんとリードを握れるか不安になってきた。

    「勉強もすんだことだしさ、もう一回やり直そうぜ」
    「いいかいロナルド君。甘い雰囲気っていうのは宣言して作る物じゃないんだよ」
    「その諭す感じやめてもらえねぇかな」

     ロナルド君は「どうせ俺は恋愛初心者、掛け算をまだ習ってない小学生」とひねくれ始めた。イチャイチャは今日はもう無理そうだ。
    手でうなじを隠し、ロナルド君と距離をとりながら誓う。

    (いずれ必ず、主導権を握ってやる……!)
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    k_94maru

    DOODLEロナドラ
    恋人っぽくしたいロナと主導権は自分が持っていたいドちゃが、会話で事故を起こす話

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    たまに相手の知識を見誤って「伝わると思ったけどダメだった」みたいな気まずい思いしてるだろうなぁという妄想です

    【実際にある症状の名前が出てきますが、不謹慎な意図で用いているわけではございません】

    なんでも許せる人向け
    会話に失敗するロド「お暇?」

     彼はそう声をかけながら、隣へ腰を下ろす。コーヒーとミルクの香りがする。

    「そのワードやめろ、あの人がすっ飛んでくるぞ」
    「今は困るなぁ」

     笑いながら、肩がぶつかるほど近くへ寄ってくる。機嫌の良さそうな声だ。今はそういう気分なのか。
     ロナルド君の方へ顔を向ける。その手には二つのマグカップ。黒い方を私に差し出してきた。湯気の立つミルクが入っている。
     ゴリラとバナナの描いてるカップは彼のもの。

    「……ありがと」

     礼もそこそこに、すぐに前を向き直した。今ここに、マナーがなってないと口うるさくいう人間はいない。私たち二人だけ。運悪く、ジョンはお出かけ中だ。
     目を合わせられなかった。そうやって優しくされると困る。
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