セーフティー 薄皮一枚。今も昔も変わらず必ず着けられるソレに、ちょっとしたもやもやを簓は抱えている。
「ちょっとくらいええやん、なしでも」
左馬刻の手の中にある四角いパッケージを取り上げ、わざとらしく頬を膨らませる。マナーだとか安全性を考えれば左馬刻が正しい。けれど、それでもこれさえなければとつい思ってしまうのだ。
「いいわけあるか。あとから大変なのはお前だぞ」
折角取り上げたパッケージをあっけなく取り返され、封が切られる。くるくるとご立派なものに取り付けられる薄いゴムが憎たらしい。仲直りして久しぶりに身体を繋げた時でさえ忘れず着けられたソレ。
「真面目やな~、左馬刻クンは」
たまには理性ぶっとばしてくれてもええんやけどと思うけれど、左馬刻はこういったことの時ことさらに優しく振る舞うと決めているらしい。セックスは暴力じゃねェと左馬刻は言うが、たまにはゴム無しで熱を感じたいという性交相手の言葉を取り合わないのはコミュニケーション不足ではないか。
「左馬刻~~」
いっそのこと破いてやろうと簓は薄く伸びたゴムに爪を立てようとした。つまんで引っ張って穴をあけて使い物にならなくするのは簡単だ。あと少しで目的の場所へ手が届くというところで、簓の両手は左馬刻の大きな手に攫われる。
「なんだよ、拗ねてんのか」
じっと好きな男に顔を見つめられ、足の指が落ち着かなくなった簓は俯いて「そんなんちゃう」と声を絞り出す。握られた手はそのままに顔を寄せられ、唇にキスが落とされた。ごまかしでも何でもない、ただの愛情表現に簓は今日も絆される。
「舌」
べっと言われるがままに突き出せば、ちうと吸い付かれて舌を擦り付けられた。頭へ熱が昇っていく。いつか、いつか絶対にゴムをつける余裕も無いくらいめちゃくちゃにしたると心に決め、簓は深くなるキスに免じて今日のところは諦めてやることにした。