セーフティー 薄皮一枚。今も昔も変わらず必ず着けられるソレに、ちょっとしたもやもやを簓は抱えている。
「ちょっとくらいええやん、なしでも」
左馬刻の手の中にある四角いパッケージを取り上げ、わざとらしく頬を膨らませる。マナーだとか安全性を考えれば左馬刻が正しい。けれど、それでもこれさえなければとつい思ってしまうのだ。
「いいわけあるか。あとから大変なのはお前だぞ」
折角取り上げたパッケージをあっけなく取り返され、封が切られる。くるくるとご立派なものに取り付けられる薄いゴムが憎たらしい。仲直りして久しぶりに身体を繋げた時でさえ忘れず着けられたソレ。
「真面目やな~、左馬刻クンは」
たまには理性ぶっとばしてくれてもええんやけどと思うけれど、左馬刻はこういったことの時ことさらに優しく振る舞うと決めているらしい。セックスは暴力じゃねェと左馬刻は言うが、たまにはゴム無しで熱を感じたいという性交相手の言葉を取り合わないのはコミュニケーション不足ではないか。
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