小鳥はまだ眠ったまま 大胆にずり上がった寝巻きの下で、白い腹がゆっくりと上下する。傷一つない体は、ほどよく肉がついて、少し筋肉がついたようだった。
『この世界に来てから運動することが増えたので、体力がついてきたような気がします!』
夕食の席で、少し自慢げに話していた晶を思い出して、フィガロは静かに笑った。
以前までは、うっすら肋骨が見えていた部分を、ほとんど力をいれてない人差し指で、なぞりあげる。その先には、熟した水蜜桃のように、ハリのある下乳が覗いていた。
下着から開放された胸は、存分に呼吸を楽しんでいて、そのたびに動く寝巻きが、ふくらみの頂点を晒そうとする。誰かがいないと不安になるような闇で、淡く浮かび上がる肌が、フィガロを誘惑していた。時間もあいまってか、しっとりと濡れているようにも見える。
晶の柔らかさと味を、すでに知っている身としては、下腹の奥底から抗い難い欲情が湧いてくるのを感じた。フィガロは晶が三つ呼吸を繰り返す間、どうしようか考えて、
「……よし」
と、欲情に任せる事にした。快感の渦に落とされた時、この細くてやわい身体が、どんな風に動くか知っていた時点で、すでに答えは決まっていたようなものだが。そうして、ゆっくりと手を伸ばそうとした瞬間。
「んん……」
晶がフィガロの方に、ごろりと寝返りを打った。身に迫った危険になど気付かないで、健やかな眠りに落ちたまま。
頬にかかる髪がいとけなく初々しい。すぅすぅ、と健やかな寝息が繰り返され、おもむろに口が動いた。夢の中で、何か美味しいものでも食べているのだろうか。ふにゃふにゃとした笑みは、目覚めている時に見るものよりも、ずっと幼かった。
「………あ〜ぁ、俺ってなんて理性的なんだろう」
理性的な魔法使いは、皮肉げな小声で呟いて、伸ばしかけた手の行き先を変更した。胸のあたりで、くしゃくしゃになっている寝巻きに触れると、静かに下へおろしていく。完全に腹をしまってやり、幼児にするように腹をぽんぽんと叩いて、布団を肩までかぶせた。
安眠に協力してあげながら、されるがままの晶を抱きしめる。ついでに足を絡ませて、こんな夜も悪くないかと目を閉じる。
無防備な姿は心を許されている証拠のように思えたし、その姿を晒す相手が他でもない自分自身であるというのは、悪くない気分だった。