サイハテ:エンドロール がらんどうの部屋に残されたのは、壁に貼られたジェニファー・ローレンスのグラビアポスターと、小さなカレンダーだけだった。
あとは本当になにもなくて、このふたつがなかったら、彼という存在自体、そもそもはじめからなかったんじゃないかと錯覚してしまいそうなほどだ。
私はやけに広くなった部屋の真ん中に、ただただひとり、なにをするわけでもなく立っている。
ねぇ先輩。と、瞼の裏でいつだって春のひだまりのように彼が笑う。
「俺はね 大丈夫、だよ」
それはきっと本心で。彼の決心で、願いで、祈りで。
そう、ひとつだって覆すことはできなかった。
それでも。
「……馬鹿だな」
壁に掛かった、小さなカレンダー。そこに、ある日を境に書かれはじめた日付を消すバツ印。もう増えることのない、その最後のバツ印の線は、微かに震えていた。
ねぇ。君が望むなら。
私は君を攫って、どこへだって行ったのに。
全てを捨てることだって、できたのに。
世界だって、敵に、できたのに。
彼が残した、最後の痕をなぞる私の指も、少し、震えていた。