ひたりと触れる背中。ぽこぽことした背骨が当たる部分がこそばゆい気がして僅かに腹筋が動いた。
「ん?なに?」
「研磨。ちゃんと食ってる?」
「食べてるでしょ。さっきもお蕎麦食べたじゃん」
「そーね」
とぷんと沈めた湯の中で指を絡めたり親指の付け根辺をむにむにと揉んだりひとしきり黒尾の手で遊ぶ。
熱すぎずゆったり浸かって居られる湯加減がじわじわと身体の疲れを癒していく。
濡れ髪の張り付いた項に鼻先を付けると最近変えたトリートメントの香りがした。
「なんでコレに変えたんだ?」
「いやだった?」
「そうでもないけど。こういうのそんなに拘る方じゃないだろ?」
黒尾が覗き込むように身を傾けながら耳朶を齧ると湯を波だてながら研磨が身体を回し向かい合った。
ふたりで入る湯船はいささか窮屈ではあるので膝立ちで黒尾の肩に手を置くと言葉の通り一瞬だけ唇が触れた。
額をこつりと合わせて目を覗き込んでから胸に黒尾の頭を抱え込むとゆるゆると濡れてぺしゃんと垂れた髪を撫でる。
「髪が傷んでるなって少し前から思っててさ」
「そうか?」
「普段は纏めてること多いから分からないかもだけど。なんかキシキシするっていうか・・・」
「それで?」
先を促すように喉を舐められる。
持て余したように節くれた手が丸い臀を揉み始めた。
話を続けようとする研磨の意識が僅かに逸れて黒尾の頭を抱いたまま項垂れる。
「イタズラしないで」
「ごめんごめーん」
言葉と裏腹に胸の小さな飾りに吸い付く。
軽く歯を立てられて声が詰まった。
「クロっ」
「聞いてるから続けて」
「・・・っ!・・・やめてってば」
「んー」
舌先で転がしながら適当に返事をする黒尾に徐々に力が抜けて研磨が凭れる。
「もぅ・・・やめ・・・っん」
「コレ誰のお薦め?」
「っあ・・・え?・・・リスナー・・・っんぅ」
背骨を撫で上げながら片手は柔らかい臀の先へ進もうとゆるゆると動いていた。
【この前の雑談配信でコヅが良いトリートメントないか聞いてたからお薦めしてみたらさ!昨日SNSに写真あがってて使ってみるーって!コヅが同じ物使って同じ香りなんて嬉しすぎる!】
偶然だった。
会社近くの定食屋で聞こえてきた会話。
気に入らないと思ってしまったのだから仕方ない。
どこのものとも知れない女と同じ香りなんてさせてたまるか。
そこから調べに調べて少し値は張るが研磨に合いそうな物を見つけ、まずは自分で試した。
合格。研磨にぴったりなはずだ。
今日はそれを持って来ている。
「クロ?」
「俺良いの見つけたからさ。明日からそれ使ってみて。香りもこんな甘ったるくなくて良い感じだから。髪も艶々でさらっと」
ヒクつき始めたそこをくにくにと撫でられて研磨が腰を揺らし始める。
もどかしさに早く、もっと、と無意識に強請る研磨が可愛くて仕方ないと指先を僅かに沈めた。
「んぁあっ・・・クロが・・・見つけたの?」
「そう。研磨の為に」
「っん・・・んぅ!・・・髪」
「ん?」
「クロが・・・んん・・・いつも触る・・・ぁ・・・から」
「うん」
固くなった胸をじゅるりと吸い上げ舌を押し付け擦ると膝立ちが限界だった研磨がザブンと湯に沈んだ。
その勢いでするりと中指が畝る中に飲み込まれた。
「あぁぁぁ!」
「っぶね」
片腕を腰に回して抱きとめ額に口づけた。
「クロに触られるの気持ちいいからずっと触ってもらえるようにと思ってさ。ゴワゴワな髪嫌でしょ」
視線を水面に落としたまま頬を赤くした研磨がそろそろと身体を上げ指が抜ける。
「・・・っん。ぁ・・・もぅ!やめてって言ったのに。のぼせちゃうから・・・早く出て・・・続きしよ」
首に腕を絡め耳元で囁かれた黒尾は研磨を抱きかかえて勢いよく立ち上がった。