好きだと言えない一人の富K「K、好きです」
最近の富永はよく好きだと口にする。以前からもたまに言っていたが、実家から戻ってから特に頻度が増えたように思う。
ベッドの中だけでなく、就寝の挨拶の時や外出の見送りが俺たち以外にいない時など日常に溶け込むように好意を口にする。
そういう時はきっと、俺もだ、と返すのが良いのだろう。それは事実なのだから。けれど一人はいつも、あぁ、だとか、うんだとかの短い肯定の呟きを返すだけで、それすら憚られてただ頷くだけの時もあった。
付き合い初めは言い慣れない気恥ずかしさから、そして今は別の理由で一人は言葉に出来ないでいる。
態度では伝わっているはずだ。他の誰にも許さないほどの距離感で、どこへでも触れることを許しているのだから。それでもきっと富永は言葉を欲しがっている。
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