4、太陽と炎が合わさる所あれから、数日がたった。
杏寿郎様は、私と目が合ってもこちらに来る事は無かった。
ただじっと私を見つめ、しばらくすると俯きながら帰っていった。
合わせる顔が無かったのだろう。
もう二度と会う事など無い。
二度と会いたくない。
息子は遊びに出掛けた。
私もそろそろ仕事に向かわなくてはならない。
身支度を整え、家を出ようと思った所で戸の開く音がした。
この狭い長屋に開く戸は押入れか玄関しか無い。息子が帰って来たのか、それとも隣近所の人か…勝手に戸を開けられるなど日常茶飯事で今更気にもならない。
「ごめんなさい。もう出るので、用なら後に…し、て…」
玄関を見れば、そこには見覚えの有る人が居た。
差し込む陽の光のせいで逆光となって顔がよく見えないが、あのキラキラと太陽に輝く金色の髪色は、かつての夫、杏寿郎様だった。
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